昨晩早く就寝したこともあり、今朝は四時前に目覚め、すぐに起床した。メールとネットのニュースをまずチェックする。毎日と朝日の有料会員限定記事をいくつか読む。今朝は、その一つにとても他人事とは思えない痛ましい内容の記事が朝日の方にあった。正直、早朝から読みたいような内容ではなかった。
タイトルは「『家族と安定がほしい』心を病み、女性研究者は力尽きた」(Facebook の方でシェアできるようにアップしておいた)。昨今、日本では、人文系のポスドクの研究職への就職難は深刻の度を増すばかりであることはかねてより聞き及んではいた。しかし、ここまでひどいのかとこの記事を読んで言葉を失った。こんなにも将来を嘱望されていたとても優秀な研究者がなぜ自ら命を絶つところまで追い詰められてしまったのか。
東北大学で日本思想史を学び、江戸中期の普寂という僧侶に注目した仏教研究で2004年博士号(文学)取得。翌05年、日本学術振興会の「SPD」と呼ばれる特別研究員に選ばれた。月額45万円の研究奨励金が支給される。「もらったお金の分は、研究成果で返さないといけない」と研究に打ち込む。08年、成果をまとめた初の著書を出版。高く評価され、若手研究者が対象となる「日本学術振興会 賞」と「日本学士院 学術奨励賞」を、09年度に相次いで受賞。学術奨励賞受賞者は6名、文科系は2名、宗教研究としては初の受賞。
だが、特別研究員の任期は3年間。その後は経済的に苦しい日が続く。衣食住は両親が頼り、研究費は私立大の非常勤講師や、専門学校やカルチャーセンターでのアルバイトでまかなう。しかし、大学に所属していなければ、その図書館の資料も借りられない。そのために授業料を払って聴講生になったこともあったという。
当然、研究職に就くことを望み、20以上の大学のポストに応募した。資料として、数千円する自著6部の提出を求められ、仕方なくコピーを送ったこともあった。だが、「貴意に添えず」との不採用通知とともに送り返されてきた書類には、クリップを動かした形跡すらなかったという。不採用の理由説明は当然ない。
安定した職が得られず、両親には老いが迫る。親子三人の暮らしがいつまでも続くわけもない。
14年春、「私、結婚する」と突然両親に告げる。相手は、ネットで知り合った一回り以上年上の男性だという。その男性が抱えていた健康面の問題も知らずに入籍。15年4月に同居を始めたが、半年もたたずに結婚生活は破綻。
自らを責め、心を病んだ。
この後、記事には本人の日記からの引用があるが、引き写すに忍びない。
16年2月2日、やっとのことで離婚届を提出。その日の夜、自ら命を絶った。両親の遺書には、「これから先がないと思う」などと記されていたという。
たった一つの新聞記事を読んだだけで、とやかくは言えない。しかし、これではあんまりではないか。本人の無念、ご両親の痛恨なる思いは察するに余りある。
優秀な研究者が所を得られないばかりか、自死に追い込まれてしまうのは、その家族や身近な人たちにとって耐え難い悲しみであるのは言うまでもないことだが(しかも、それは人文系ではごく一部の特殊な例外とは言えないまでになっている)、それは同時に国家にとっての損失ではないのか。