元祖・東京きっぷる堂 (gooブログ版)

あっしは、kippleってぇケチな野郎っす! 基本、自作小説と、Twitterまとめ投稿っす!

さすらい少女2004夏 7

2021-08-03 06:55:07 | 夢洪水(散文・詩・等)
さすらい少女 2004

-7-

「元気ですかぁーーー!だぁーーーー!」

 はっ、ってな事やってたら、誰か来るよ。旅行者だろうか?変な感じ、、嫌な予感がするよ。え?って気づくと、無いじゃん、金色の光もなにもない、ただの空間。私は、夢でも見てたの?何て考えてる場合じゃないよ、やっぱ変な人だ。180cmくらいあるかな、でっかい身体した中年のオッサンだ、しかも両手にラジオを持って短パンはいて野球帽をかぶって、変な音をビビビビビイイイイイイイイイイって響かせてるよ。ラジオわざと雑音にしてるんだ。あっ、来た来た、やば、どーしよ、どーしよ。あれ、そうは思うけど全然平気な私を感じるよ。えっへん。なんだろー?実は全然、怖く無いじゃん。どすんと地に足を生やしてる感じだよ、私ってば。

「ぶぉぉぉぉおおおおおおっ!ぞごぉの、お前ェェェェ!オレの名はキップルってんだぁぁっぁぁっ!オレの名前をオマエの身体に刻んでおけェェェ!ぶごぉぉぉぉぉっ!」

 って、やだ、やっぱ変な人じゃん。たち悪そー。ぶん殴っちゃおうか?なんて考えてる、このハイパー・パワーの私。今の私は無敵なのよ!

「ぶひぃぃいぃいぃぃ、ぶぅぅぅううぉおぉおおおおおおお!電波がぁあああああ!ほらぁぁっぁぁ聞こえるかぁぁああああ!お前ェェェェェラジオからぁ電波がぁぁあああああああっ!オレの名はキップルだぁぁぁぁああっ!宇宙に刻まれた無秩序化の法則だぁあぁぁっぁぁっ!エントロピーは拡散し続けてるんだぁぁぁぁっ!お前は、お前は、そぉれぇをぉぉぉ妨害しぃぃぃてぇぇるぅぅぞぉぉぉぉって電波が言ってるぅぅぅぅ、オレはお前を、喰っちまうぅぅうぅぅうううううううううう!ぎゃはぎゃはぎゃはぁ!ぶぇぇぅえぇええええっ!」

 私は、その時、キューティーハニーになったね、さっと、サトエリ・ハニーみたいなポーズを決めて、そのオッサンをビッ!と指差して、考える間もなく、こう言ったよ。

「お黙り!おっさん、ちゃんと生きろよ!ね、ちゃんと真面目に生きな!まっとうに人生を生きるんだよ!お母さんが泣いてるぞ!」

 そしたら、ちょっと参ったのよねー。そのオッサンたら、

「おかぁさーん、ごめんなさーい」

 ってビービー泣き出しちゃってさ、でっかい図体をゴロゴロころがして、鼻水垂らして涎垂らして、

「おかあさーーーーん、オイラ、悪かったぁぁー、ごめんなさーい」

 って、もーう汚いったらありゃしないんで、何だかちょっと可哀想になったんで、そのオッサンの頭をペンペン叩いて、

「ほら、行くよ、あたしは。真面目に生きるんだよ、ね。そしたらお母さんも喜ぶってもんだよ。」

 って言って、あーもう付き合ってらんないから、そのまま亀石の建物を降りて行って、さっきの休憩所を通り抜けて、気づくと横にお婆さんがベンチに座って、ニカッて笑ってバイバイしてるんで、あらま、私、また、うれしくなっちゃって、ニカッて笑って私も、バイバイ。

「バイバ―イ!お婆さん、アリガトウねー!いつか、またねー!」

 なんて言いながら、私は「山の辺の道」に着地、本当に、着地って感じで、戻ったわけ。それから何だかウルトラ少女になったんだか、そんな気がするだけで、たんにストレスが綺麗に抜けたのか、自然のエネルギーを充填し終わってしまったのか、何だか分からないが、さすらいの一人旅、完了って思って、っつうか実に完了しちゃったの。

 本当に。本当よ。たったのこれだけの、さすらい一人旅で、ね。言えるの。もう、私には、キッパリとケータイなんか、いらないし、インターネットなんか関係ない。あんなものは本当に必要に迫られた時に利用すればいいだけ、他に私にとってなんの意味も無いわ。だって私は自然だし、自然である私が産まれたのは、自然に生きるためだよ、ちゃんと生きるためだもん。ちゃんと生きるには、ちゃんと、この手で触って掴めるものを信じて付き合って楽しんで自然の生物の役目を果たせば良いの。さっきの変なオッサンに言った通りだわ。ただ、自然にちゃんと生きればいいのよ。おかあさんに恥じないように、ね。

 歩く。歩く。私は、何だか身も心もシャキっとした気分で歩いたよ。しばらく行って振りかえると、さっきの変なオッサンが私と同じ様に亀石の上で、相変らず両手にラジオを持って(たぶん、また雑音電波を響かせてるんだわ)、黄金じゃなくて、暗黒の光の帯に包まれていたわよ!しかも絶叫してるのが分かるのよー!げ!見ない、見ない、私は、もう、あーいうの気にしない気にしない。

 さらにしばらく歩いて、私は何となく神社でやすんだの、そしたら、また、「ぶぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」とか言って、あのオッサンが通りすぎて行った。なんなの?あれ。あー気にしない。気にしない。もーう絶対に、あのオッサンが見えなくなるまで気配がなくなるまで私は、じっと再び空気と光の音に包まれていたわ。知ってる?光には音があるのよ。さっきの金色の光は音がした。そして今、包まれてる光も音がする。きゃーオカルト。えへへ、もう、いいの、オカルトだろうが何でも、女が1度、心に決めたら強いんだぞー!決心はついたんだ!そーなると、あーなんて幸福な気分。この瞬間がずっと続けば、いや、続かせてみせましょう!

 私はカンカン照りのピカピカ「山の辺の道」を胸を張って大股で再び歩いたよ、えっへん。やっぱ、古墳やら村落のあとが多いね。さっきのだけじゃないんだよ。2~3度、道に迷い、途中、何人かの人と擦れ違い、あっと言う間に喉はカラカラ、汗みずく。と思う間もなく、視界に異様な景色が出現したよ。それはね、立ち並ぶ墓石の群れよ、一面を白い煙がおおっているわ。墓、墓、墓。しかもゴージャスなのが!こんな野っ原みたいなとこにスンゲーゴージャスな墓が無数に集まってるよ。衾田陵ってーのかな?そんで、そーいう墓の群れの中を「山の辺の道」は横切って行って出口のところに来ると、今度は無数の石仏が立ち並んでいたよ。

 まー、その時は、私は、もう何もかも済んだ感じでね、もう帰ろーって思ってたんだけど、せっかくだから、この道を全部、歩いてやろってさ、たったか元気に闊歩ってんだね、闊歩して出口から出るとさ、パン屋さんが、あったの。そーいえば、モーニング食べていらい、あったしさーイチゴジュースしか飲んでないじゃん!げげげげ、このパワーはちきれんばかりの完全体美少女に、そりゃーないじゃないですかぁ!

 ってな訳で、玉子パン5個とアンパン7個を買って、ベンチで、むしゃむしゃ大口開けて牛乳で流し込んで、ふぅ、少しは腹のたしになりましたかしら。そんなことしてたら店のオバさんが、暑いやろ、疲れたやろ、と店の中で休みなさいと、ううっ親切に涙ちょちょぎれっ!じゃー牛乳もう1本!もう1本!さらにーアンパンあと3個って、まあ、そんなもんで許したろって、

「オバさん、ここらヘンに駅ないですか?」

 って聞くと、オバさん、犬と遊んでて、またまたニカッね。またまた私は、うれしくなっちゃって、さらにド元気が出てきて、近くに柳本という駅があるってのを確認すると、御礼を言って猛ダッシュ!





KIPPLE



最新の画像もっと見る

コメントを投稿