元祖・東京きっぷる堂 (gooブログ版)

あっしは、kippleってぇケチな野郎っす! 基本、自作小説と、Twitterまとめ投稿っす!

さすらい少女2004夏 9

2021-08-05 06:31:03 | 夢洪水(散文・詩・等)
さすらい少女 2004

-9-


 私は別に身体がどうって事も無いので、って言うより身体はバリバリ元気で、あれからすぐに弟を引っ叩いて正気にさせて、病院の医師や公民館から来てる人に色々聞いてみると、お父さんと、お母さんは、やっぱり、火事で死んじゃったらしい。何故か、弟は無傷で、火事になった時、コンビニか、どっかに行っていて助かったらしい。でも、何だか変な気がするんで、って、だいたい何で私の名前が遺体のリストに堂々殿堂入りしてるのよ!で、弟に、

「何?これ、お姉ちゃんの名前が何で載ってるの?」

 って聞いても弟は何だかブルブル震えておかしくなっちゃってるんで、おそらく、あれだ、例のPTSDとかいうやつだな、で、埒があかないので、公民館の職員の一番親切そうな男の人に聞いてみた。

「あのー、これなんですけど、遺体ってどこにあるんですか?私、遺族なもので一応確認したいんです」って。

 ペコリって可愛くお辞儀なんかすると、プンって自分の臭いがして、あ、あ、やべぇ、かなり臭いぞ、汗だくばっかなのに、洗濯してないもんなぁ、なんて呑気なこと自分は考えてたんだけど、その男の人は、外見と違ってけっこう無愛想で、あーとか、うーとか、言って要領を得ないんだよ。あー助けてよ、キャプテン!

 それでも懸命に私は3日前の大火事で焼け死んだ家族の生き残りで、お父さんとお母さんの遺体は、どこにあるのか?いったい誰がどうやって処理をしたのか、それと、何故、私の名前が入ってるのか、などなど、しつこくしつこく尋ね続けてると、その男の人の後ろにいた、例の市役所の事務的にニコニコ笑う感じの悪い女の人が、割って入ってきたよ。

「あっ!あなた、この間は、私も動転していたものだから、ごめんね。私が代わりに説明するわ。あの夜はね、午後7時頃に、あなたの隣りのアパートから突然、爆発音がして出火して、あっという間に付近一帯に火が燃え広がったのよ。物凄い勢いだったから、おそらく何かの特殊な爆薬が原因じゃないかって警視庁のテロ特捜班までやってきて、今も念入りに調べてるみたいだけど、どうもテロ関連らしいの。アパートが自称アルカイダ系を名乗る日本人のアジトだったらしいの、インターネットに彼らのホームページがあって、そこに犯行声明みたいなのが書いてあって、調べたら、そのホームページが置いてあったプロバイダにそのアパートの住人が加入していて、間抜けな事に本人がそのアパートからNETに接続して・・・通信記録に・・・IDもパスワードも・・・判明して・・・爆発は事故だったみたいで・・・犯行声明によるとアメリカ大使館を・・・」

 って、この人、意外と良い人?へぇ~人は見掛けによらないってね。いやいや、なんだ、それ。ピンと来ないけど、何でウチの隣りのアパートにテロリストがいて、爆弾を爆発させるのよ!わけわかんないっーーーつぅの!げげげげぇだ!うが!うが!それで、巻き添えクラってウチが焼けてお父さんもお母さんも焼け死んじゃったってーーーーのぉ~!あー納得いかないよっ!焼け跡には警視庁のテロ特捜班どころか近所のオバさんくらいしかいなかったじゃんー!って弟がブルブル震えてるんで、ギュッとだきしめたよ。何て不憫なんだー!ああ、あったしも、どーしよー!ねー!どーしよーーーー!危機一髪、越えちゃってるよ!

 で?え?ちょちょいまって!この人、ペラペラまだ喋っているけど、その懸命さは、よしよし良い子だ、でも最初に午後7時って言ったよね!ね!ががががーーーん!!午後7時だってぇーーーー!?うっそー!うっそー!だってぇ、あったしぃ~、その時間なら、、まだ家にいたよー!待ったー!ちょっと待ったぁーー!そんな時間に、さすがに早寝のお父さんとお母さんだって起きてたし、私が1度、ケータイ持って弟がTVゲームやってて、お父さんとお母さんが寝たのを確認して抜け出したのが、確か・・・午後11時頃だよ。アホアホで、もう1度戻ってケータイ置いてきたのが、せいぜい11時15分か20分頃だよ。どーいうことだ?隣りが爆発したのが午後7時なら気づかないはずが無い!ましてや、そんな凶悪な火災が、あっという間に広がったんなら、絶対に、私も燃えてるね。・・・って、燃えてる・・・。う、嫌な気がして来たよ。ちょっと、しがみ付いて震えてる弟にニカッて笑顔でグッと顔を寄せて、聞いてみたよ。

「午後7時に、あなた、どこに行ってたの?ゲームしてたんじゃない?それと!その時、あたしは、いた?」

 ニカッの効力のせいか、弟は震える声で、けっこうハッキリと答えたよ。

「僕、コンビニにジュース買いに行ってたんだ。おねえちゃん、自分の部屋で何かゴソゴソやってたじゃん!」

 だってさ。

 そうよ、午後7時頃なら、私は自分の部屋で「プチ・イージーライダー作戦」の主に心の準備ってやつをしてたんだよ。お金の心配とね、で、緊張してバックにそれ以外入れるの忘れて飛び出たアホだったんだけど、そうか弟にはちゃんとアリバイがあるんだ、爆発時間に外出していればねぇ。あーあー、ついに私は齢、15で美人薄命の法則に従って死んじゃったのかー!思えば短い人生だったな、何一つ充実したことなんかありゃしなかったっていうか、これからだろ!って時に、死んでやんの、ドジ。どーりで家出てから名古屋まで夢の中にいたみたいで、記憶がハッキリしないわけだー!あーそうか、そうか、私は死んでたのか!

 んな!バカな!私はシックスセンスか!ほら見ろ、このお肉で満ち満ちた張り裂けんばかりの黄金のピッカピカの活力に溢れかえったこの身体を、ほら見ろ、この太もも、このお尻、この胸はちょっとちっちゃいけど、ピッチピチだぞ、ほら見ろ、この腕、真っ黒に日焼けしてエネルギー充填完了のチョー健康娘じゃん!ここにいる私は肉体派の幽霊かい!全身に自然の黄金エナジーを蓄えて歩くウルトラ生命力になって帰ってきた、この私が実は死んでた?きゃははは!そんなバナナーー!って思ったけど、今度は縦線が顔いっぱいに入ったよ。実に納得がいかないので、やっと一気に喋り終わってぜいぜい言ってる市役所の事務的にニコニコ笑う女の人に、グワッと向かい合って、じっと見つめて大声で言ったよ。

「じゃあ、遺体は、どこにあるんですか?私に見せてください!自分で確認してって言ってたじゃないですか!遺族にちゃんと確認させてください!」





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