ほこりっぽい、土の道
トラックのけむりの中から 僕が、のっそり姿を現す
まぶしいまぶしい お日様 トンボが お日様を横切る
セミの鳴いてる木の下で 月の子は、草笛をふいている
雲の影が、サーッと 僕らを、通り抜く
僕は 風をさがす 月の子は立ち上がって僕を見る
月の子は長い土の道を走って行く
僕は 立っている
遠くに 遠くに 山がある 道は山に消えている
月の子も山に消えていく 遠い遠い山に消えていく
道は赤くなる
月の子が遠い遠い山から現れる
カラスが、空に黒い形を作っている
赤い空に
カラスは赤い土と僕に影を投げかける
月の子は、近くまで 歩いてくる
もうセミの鳴いてない木は 葉を一枚、落とす
葉は月の子の手に落ちる 月の子の顔は夕陽で赤い
しかし月の子は黒い服を着ている
僕は月の子を じっと見てる 月の子も僕を見る
月の子の赤い目は、かすかに ほほえむ
月の子は過ぎていく
僕は月の子が、山のない遠く遠くつづく道を歩いてゆくのを見つめる
月の子の影は、長く長くのびて 僕のところまで とどく
月の子の行くところには海がある 遠い遠い海がある
赤と金色に光る海がある
お日様が、しずんでいく海がある
僕は風を見つける 風は月の子の手の葉をさらってくる
葉が遠くから飛んでくる 僕のいる木のある所にとんでくる
僕は、その葉を持つ 風は強くなる
月の子は平気だろうか
僕は葉を口にあてる 草ぶえみたいにふく
鳴った音は、風の音だった
僕は道にしゃがみこむ 太陽は赤い 真っ赤だ
僕は、赤い涙を流す 道に倒れて涙を流す
誰もいない長い長い土の道の上で
お日様もいなくなる
あたりは青くなる そして黒くなる
僕も涙も黒くなる 黒い黒い涙を流す
月の子は平気じゃなかったみたいで
何もかも真っ黒になり
何もかも真っ黒だから、僕も涙も真っ黒に消されて無くなる
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