木の実幼稚園のゆかいな仲間たち

愛媛県松山市にある『木の実幼稚園』の先生たちによるBlog

第41回大寒マラソン大会

2018-01-19 14:10:17 | Weblog

晴天にして無風、気温13度

ここ近年で一番であろう絶好のコンディションの中で

第41回マラソン大会が実施されました



今年は2回目の練習会が雨で流れ、

本大会に向けた力比べが1度のみになりました。

今年はどんなレースがくりひろげられたのでしょうか。



今年も この春に卒園を控える年長さんのお話です。



ピストルが鳴り レースが幕を開け

子どもたちが西門を通り 園庭から公道へと駆け出します。

上位を目標に挙げる子どもたちが

猛烈なスピードでレース序盤の位置取りを行います。


今年最高のスタートを切ったのは

秋の運動会で風のようなスピードでトラックを走っていた みうちゃんです。


西門を出て公道に出たあとの直線を終え

左に旋回したところに上り坂があります。

子どもたちのスピードが

ここで一度ガクッと落ちます。


坂を上ったあとの長い直線の入り口で

「息を整えて!」 と、

何年もマラソンを見てきたお母さんから声がかかります。

その声を聞いて ハッと我に返るように

子どもたちは安定したペースを取り戻します。


坂を駆け上がり西に進路を取った直線を走り終え

折り返しの橋を右に旋回する直前に

短いながらも角度のキツイ上り坂があります。


その折り返しの橋を右に旋回したあたりで

このレース 最初の変化が起こりました。


スタート直後に抜群のスピードで追走する子どもたちをおいてけぼりにした女の子に

ここで異変がありました。

おそらくは レース序盤のペース配分がほんのわずかうまくいかず

折り返しの橋にさしかかる前に呼吸を整えることが間に合わず

ストンと走力が落ち 徐々に順位を下げていきます。

そこに台頭したのが

同じく抜群の走力で年少時に優勝 年中でも上位入賞を果たしていた女の子でした。

今年のレースを終盤まで引っ張ったのは この女の子でした。


そして これより先に 実はもう一つの変化が起こっていました。

練習会で優勝した男の子の顔が見えません。

間違いなく何かのトラブルがあったはずですが

この時にはまだ理由がわかりませんでした。


変化は続きます。

折り返しの橋を渡り終えて再び長い直線に入ったあと

子どもたちの足音が かなり乱調しました。

1周目ながら

子どもたちは早々に駆け引きを始めていました。


私は先導する位置から

数メートルおきに振り返って子どもたちのペースを確認するのですが、

振り返るたびに 先頭集団付近の子どもたちの顔が入れ替わります。

彼らなりに 位置取りと抜きどころ を探りあてながら

お互いに駆け引きを繰り返していました。


直線を終えると再び橋を渡ります。

年少・年中はこの橋を渡り終えると園に戻る下り坂に入るのですが、

年長はこの橋を再び右に旋回し

2周目に突入します。



1周目の駆け引きを終えても

トップランナーは変わらず ひろちゃんでした。


しかし

2周目の折り返しの橋に向かう直線を進む彼女の顔が

どんどんゆがんでいきました。


1周目の長い直線で行われた駆け引きで

一歩も引かなかった反動が ここにきて彼女を苦しめていたのです。


みるみるゆがんでいく彼女の表情を見ながら 私は心の中で

「(もうすぐ足が止まるかもしれない...。)」

と思いながら、彼女の走りを見ていました。


トップランナーの直後を追走する子どもたちは

挽回できない程の決定的な差が広がらないよう

細心の注意を払うように

一定の範囲に収まって走り続けています。


2周目の折り返しの橋を回った子どもたちが

再び長い直線に入りました。


驚いたことに

ひろちゃんの顔から 先程までの表情が消えていました。

耐えきれそうにないほど苦しそうな表情で走っていたのに

どうやって呼吸を整えたのでしょうか?

よくぞそんな力がまだ残ってくれていた、と

感激しました。



レースが いよいよ終盤に差し掛かります。

ここから先は

身体をあと少しだけ動かしてくれる心のエネルギーに

点火する気力が残ってくれているかどうか、です。


最後に体をもうあとほんの少し動かしてくれるのは

培ってきた基礎体力を余すことなく引き出す 気力 です。

これは 何年も子どもたちを見続けていて

子どもたちから教わったことです。



橋を渡り 園に戻る最後の直線に入るあたりでした。

「せなーッ いけーーッ さいごーーーッ 」


応援に駆け付けて下さった大勢の保護者の方たちの声援の中で

そのお母さんの声は きっと彼の耳とハートに届いていました。


「点火、成功。」



トップランナーを追走する子どもたちの中から

1人の男の子がわずかに抜け出し始めます。

そして ひろちゃんとの差を詰めにかかります。

それは 先程名前を呼ばれた彼でした。

彼もまた ひろちゃんや他の子どもたちのように

このレース中 ここまで耐えに耐えてきたのでした。



ゴールテープまであと少しのところまできている ひろちゃん

引き離されることなく追走してきた せなくん

そして

練習会でも優勝し

2人と共に長らくマラソンを引っ張ってきた1人である こうしろうくんも

また すぐそばで先頭集団を形成していた他の子どもたちも

みんな この数年間

日頃のマラソン活動の中で

そして競い合いという刺激の中で

いつしか意識し合うライバルに成長しました。




運動においても 勉学においても 芸術においても

自分を成長させてくれる自分

だけではなく

自分を成長させてくれる友だち

という存在に 極めて大きな意味があるように思えてなりません。


自分なりの目標を見つけること、

自分なりのチャレンジを試みること、

最後の最後まで走りきること。

そして 活動を共にしてきた友だちでありライバルである存在。

日頃のマラソン活動とマラソン大会には

大会の当日だけでなく その課程において

子どもたちの内面を育む材料が散りばめられています。



(カメラを レース終盤の子どもたちに戻しましょう



最後の直線を終えて左に急旋回しながら園庭に入ったら

十数メートル先にゴールテープが待っています。



ここで

スポーツの世界で時折起こる

劇的な結末というものが

今年のレースには待っていました。


ゴールテープのわずか2メートル程前で

順位が入れ替わったのです。


本大会のゴールテープを切ったのは せなくんでした。

実はこの2人 年少時に1位と2位を分け合った2人でした。

2年前の1位がひろちゃん、2位がせなくん。

過去の記録表を見て 当時のことが思い出されました。


最後の直線で差を縮めていた せなくんが

ゴール直前 ほんの体1つ分だけ前に出て

ついに優勝を掴んだ瞬間でした。



レースを走り切った子どもたちが

続々と待機スペースに集まってきました。

1人1人

いろいろな表情を見せてくれています。


きっと自分なりの目標があったのでしょう

すがすがしい表情を見せている子がいます。


転倒してひじやひざをすりむいても

レースを止めずにゴールまで帰ってきた子もいます。


持てる力を全て出し尽くしたのでしょう

疲れ果てた表情を見せている子もいます。


練習会で優勝していながら

レース序盤に姿が見えなかった こうしろうくんが

5位に入ってきました。

彼は泣いていました。

それはもう 顔をグシャグシャにして泣いていました。

園から公道に出たあたりで転倒したと

あとで教員から耳にしました。

爆発的なスピードで走り抜ける序盤での転倒は

あとから取り返せないくらいの差になったことでしょう。

彼は立ち上がったあと

随分と先を走っているライバルたちの背中を

どんなふうに見ながら

どんなことを思いながら

あとを追いかけたのでしょうか。



ゴールのわずか数メートル前で

優勝がこぼれ落ちたひろちゃんは...?


首から下げられた「2」と書かれたメダルを見ながら

うつむいたまま 涙が次々とこぼれ落ちていました。


ちょうどその時

なぜかふと

彼や彼女の心が

何か大きなものを吸収している真っ最中のような気がしてならず

声をかけられませんでした。



しばらくするとひろちゃんが近寄ってきてくれ

メダルに書かれた番号を見せながら

「ゴールのところで抜かれたんよ」 と

説明してくれました。


彼女なりに

涙でにじんでいたであろう「2」という番号を見つめながら

すぐには受け止めきれなかった気持ちを

少しずつ整理してたんだ と、思いました。

その一言も やっと発することのできた言葉だったのでしょう。

いろんな思いが込められているような一文に

「レース中 ずっと見てたよ。

 がんばってたの見てたよ。」

と、返事にならない言葉を返してしまいました。

でも、少しニコッとした彼女の顔を見て

嬉しくなりました。



彼女の心は

ゴールテープにわずかに手が届かなかった今日という日に

確かに得たものがあったように思います。



涙を流すひろちゃんの横で

偶然私と目が合ったせなくんが 声も出さず

すっと 「1」と書かれたメダルを見せてくれました。

大変元気の良い彼にしては

なんとも控えめなアピールでした。

もしかすると 隣に座るひろちゃんの涙に

思うところがあったのでしょうか?

もしそうなら... なんだか嬉しいです(笑)。

本当に 「おめでとう」。




さて 次は何にチャレンジしようか。

大丈夫。

今のみんななら 少々のことなどへっちゃらさ。

少し休憩したら

助走を開始。


いざ 次のチャレンジへ。


  


(平成29年度マラソン大会 完)


追伸:

毎年園児の教育活動の安全確保にご協力頂いております垣生駐在所の平岡所長、

松山西警察署の警察官の方々、そして保護者の皆様

おかげさまで今年も大会を開催できました。

この場をお借りし、教職員一同よりお礼申し上げます。

ありがとうございました。