木の実幼稚園のゆかいな仲間たち

愛媛県松山市にある『木の実幼稚園』の先生たちによるBlog

第44回大寒マラソン大会

2021-01-21 14:05:07 | Weblog

2021.01.20


開学以来44年に渡り学園の伝統行事でありつづける「大寒マラソン大会」。

私が着任以降、これを不在にすることは初めてでした。


今、私は病室の白壁に向かい

固定具が装着された左足を車椅子の板の上で伸ばしながら

子どもたちや先生たち、

安全な大会運営のために沿道に立ってくださった体育部はじめ保護者の方々、

そして子どもたちの活動を記録する新聞部さんのことを思い浮かべながら

このブログを書かせてもらっています。


当園の「年間を通じたマラソン活動」と「大寒のマラソン大会」は、

単に学園の最たる伝統行事というだけでなく、

日頃のマラソン活動においては子どもたちの心身の健全な成長を願い、

また、大会においては

一人一人の子どもが自ら目標設定や願いをもつ体験教育の機会の一つとして

44年に渡り実践してきたことであり、

子どもたちがクラスの友達や先生たちとプレイコートを元気に走る姿は

「木の実幼稚園の日常の風景」となっています。



大会当日は私自身が不在となってしまい、

毎年書いている「子どもたちのレースリポート」を書けませんでした。

その代わりに、ほんの少しではございますが

大会の前後談をお話しできればと思い、

一人病室でパソコンに向かっています。



今日からさかのぼること半年ほど前の週末、

私は重信川の河川敷を海に向かって歩いていました。


向こうから

トレーニングを日頃から欠かさないことが一目でわかる程に

きれいに鍛えられた体形の男性が軽い足取りで走ってきて、

その隣を小さな男の子が髪をなびかせながら並走していました。


私は、こんな風景が大好きです。

親子が身近に寄り添いながら生活を共にする時間は、

よほど環境や状況がそろわなければ、

それは子どもの人生の最初の段階のほんのひと時しかありません。

子どもは成長するにつれ、

美智子上皇后さまのお言葉を借りるなら

「人と人の間に橋をかけながら」交友関係を増やしていき、

いつの日か立派に親から巣立っていきます。

今我々が過ごしている子どもたちとの幼少期は、

その直前かそれが始まったばかりの時期であり、

親子の絆が生まれる最中にあります。



そのひと時を、親子が並走している姿が

とてもキラキラして見えます。

朝、スクールバスを待つ親子の姿

自転車や自家用車で子どもと一緒に当園する親子の姿

職員室に図書を借りに来られた親子の姿

そういった姿と同じように

キラキラして見えます。



(・・・本題に戻りましょう。)


毎年、大会前に

「個人的に注目している子ども」という存在が

私の中にあります。 えこひいきという意味ではなく。

日々の生活の中で 時には教員から 時には保護者の方から

マラソン活動やマラソン大会に向けてのその子の成長や努力を耳にしたとき、

その子の成長と努力がどのように実を結ぶのか、

見届けたい気持ちになるのです。


今年も、そんな子が何人かいました。

1人は、年長の女の子。

1人は、年長と年少の兄弟。

1人は、ある年中の男の子。

そしてもう1人は、年長の男の子。



年長の女の子には、既に卒園した兄がいます。

その兄は 文武においてまばゆいばかりに万能な子で、

クラスでもスーパースター的存在だったことを

当時クラス担任から耳にしていました。

そんな兄を見て育つとき

兄とは違う自分と

その子はどんなふうに向き合うんだろうかと

ひそかに注目していました。


日々のマラソン活動としてプレイコートを走る姿を

時折眺めていました。

いつも一生懸命でした。

同じクラスの女の子が追い上げようとすると

踏ん張るように加速して

先頭を譲らない気持ちの強さがありました。

迎えた1月14日。

今年の1回目の練習会は、

私が入院前に見ることができた唯一の機会でした。

彼女はこの日

女児の中で誰よりも早く園に帰ってきました。

そして、

入院中に園から届いた順位表を見ると

彼女は2回の練習会と本大会を通して

一度も先頭を譲らず大会を終えていました。



ある 年長と年少の兄弟のお話を。

この兄弟には 既に卒園した姉がいます。

その姉は「風のように」早く走ることができ

運動会では

3学年のリレーマラソンでも

年長のクラス対抗リレーでも

周りが驚くような走りを披露していた子でした。

この姉と兄弟が育つ自宅は

風が吹くと茂った木々が音を立てる山手にあり、

お母さんが「野山を駆け回っています」と笑いながらお話される通り

自然が豊かな環境に在ります。

その兄弟が

今年揃って

各学年の男児の2位と3位に入賞していました。

その日の夜

お姉ちゃん、そしてお母さんやお父さんと

彼らはどんな話をしたんだろうと

そんなことを想像しました。

「お姉ちゃんの時はね」なんて

兄弟姉妹間で

共通の話題に華が咲いたのでしょうか?



ある年中の男の子のお話。

大会前になり

「見ててくださいよ、彼、頑張りますから。」

と、熱くも楽しく語ってくれるクラス担任の話を聞き及び

注目していました。

その子は 確たる目標(モチベーション)を保たないと

走る力があっても途中でスピードを落としてしまうという

彼なりの小さな課題があり、

彼が最大限に力を発揮できるように

教員数名が何度もひそかにあの手この手を検討していました(笑)。

練習会ではそれが功を奏したようで

上々の走りができたようでした。

ただ 彼にもっと力があると信じた数名の教員は

練習会の後に さらに作戦を練っていました。

彼が、本大会で今の全力を出し切れるように、と。

何故なら、教員たちは

彼がご家族と長い間努力をしてきた過去を

知っていたからです。

大会が終わり、順位表が私の手元に届いたとき

彼の名前が なんと3位に載っていました。

彼が 最後まで

そして全力を出し切れたことを想像できました。

彼とその周りにいる人たちの努力が報われたような気がして

担任宛にお祝いのショートメッセージと共に

「パーティーですね!」と添えて送ると、

「明日はパーティーします♡」と

すぐに返信が届きました。

幸せのおすそ分けをもらった気持になりました。



最後に年長のある男の子のお話を。

彼は1回目の練習会で、

歴代最高タイムにあと11秒と迫る好タイムで

1位となり

一躍 今大会の優勝候補の筆頭に躍り出ました。

担任が

「期待していてください。

 今日の練習会で後続を引き離したことで

 自信を深められたと思うんです。」

と、話してくれました。

そして、

「お母さんから聞いたのですが、

 家族で、がんばったあとのご褒美を決めたそうです。

 1位になったら お菓子3つ、アイスクリーム1つ、

 そして

 お父さんとほっぺをスリスリする。」


その約束に、涙が出そうになりました。


あの日

重信川の河川敷を

髪をなびかせながら父親のすぐ横を並走していたのが

彼だったのです。

あの日よりももっと前から

あの日の後もずっと

彼は父親と人知れず練習していたのです。


その彼にとって

特別なご褒美は

お菓子でもアイスでもなく

父親とのスリスリだったのです。

2位になると

このスリスリは 無かったそうです(笑)。

彼が 大好きなお父さんとスリスリができて

本当に良かった。

彼は、2回の練習会と本大会を

すべて1位で終えていました。


お父さんが

長い間

頑張ろうとする彼の背中を押し続けてくださったことに

胸が熱くなりました。



個人的な話で恐縮ですが、

大会当日の夜

妻が Facetime をしてくれました。

コロナ禍の最中

入院中の病院でも 家族といえども一切の面会が原則禁止で

唯一家族の顔を見ることができるのが Facetime です。

そこに映ったのは

「60(位)」と書かれた

先生たちが作ってくれたメダルと

息子の笑顔でした。

「練習も今日も1位だった」と言っていました。

5歳になった彼の目標は

「最後まであきらめずに走る」

でした。

だから、彼にとっては「1位(できた)」だったのだと思います。

「楽しく走れた?」と聞くと

「うん」と、元気な返事が返ってきました。


こんな気持ちで大会を走れたことに

先生たちに「ありがとう」と

伝えたい気持ちになりました。


日々のマラソン活動の中で

どのように子どもたちに接してくれていたのか。

きっと

一人一人を長い間見続けてくれ

目標を聞き届けてくれていたんだろうなと。




マラソン活動と本大会は

順位を競うことがその目標と願いではありません。

順位は目標設定上の重要な教育的観点ではありますが、

本当に大切なことは他にあります。


そのことを

注目していた子どもたちや

大勢の子どもたちが

我々にそっと教えてくれています。



りくと君、おめでとう。

みんな、おめでとう。

今日からまた

「木の実幼稚園の日常の風景」に

戻っているのでしょうか。



第44回大寒マラソン大会

(見ていないけど・・・)完


来年はレースに復帰するぞ!





マラソンコースのお散歩へ(年少・年中)

2021-01-16 13:08:10 | Weblog

2021.01.13


先日の大寒波により とても厳しい寒さが続きましたが、

ようやく寒さが和らぎ始めたように思います

今日は、年少・年中児で

マラソン大会のコースのお散歩に出掛けました


    



年中さんのお兄さん・お姉さんと一緒に

手をつないでもらい、とても嬉しそうな年少さん


      



園庭でスタートやゴールの場所をみんなで確認し、

マラソンコースのお散歩がスタート

  

    

    

      



コースを歩きながらどんな道を走るのか、

興味津々の子も多くいました

年中児が年少児に優しく教えてあげる姿や、

楽しそうにお話をしながら歩く姿など、

微笑ましい姿も見られ、良き時間を過ごせました


子ども達が日頃から取り組んでいるマラソン。

いよいよ大会本番に向けての練習が始まります

寒さに負けず、強い身体を作っていってほしいと思います

走ることの楽しさを感じながら取り組めるよう、

怪我のないように子ども達のサポートもしっかり行っていきます

お家に帰ってから子ども達のお話をたくさん聞いてあげて下さい

                   R・K