昨月の連載には、非常に多くの方からコメントを頂きました。
その中で、司法試験受験生の方々、あるいは合格者の方々ですら、
憲法が問題になる事案での論証の仕方に苦労されている、
と言うことが分かりました。
そうした事態は、
まず、
法令審査・処分審査とか、
違憲審査基準と比較考量といった
技術的な枠組みが分かりにくいということに起因すると思いますが、
これは、よく筋の通った説明をみてみれば、、
それほど難しいものではないわけです。
ただ、こうした技術的枠組みが理解できた、
というのは、
将棋で言うと序盤の定跡を覚え、
矢倉囲いや美濃囲いが組めるようになった
という段階であり、
必ずしもそれだけで勝てるようになるわけではないわけです。
序盤の定跡を覚えたら、次は
中盤の戦い方でありますが、この練習が難しいわけです。
*ちなみに将棋では、この段階では「次の一手」問題集で勉強をします。
そこで、私が提案します練習方法をちょっと紹介してみようかと。
あ、今からお話するのは、
防御権ないし防御権類似の論証が可能な場面の練習に限られますので、
ご注意を。
さてさて、防御権の事案で求められているのは、
要するに、制約を認定し、
その制約が次の四つの正当化要件を充足するか、を検討する、ということです。
①目的の正統性
②目的と手段の関連性
③手段としての必要性(LRA不在)
④手段としての相当性(利害均衡)
この四つの要件と違憲審査基準との関係は、
『急所』を読んでいただければと思います。
いかなる防御権のいかなる態様の制約であっても、
この四つの要件を充足しないと正当化はできません。
さて、防御権の事案の中盤戦というのは、
典型的適用例で参照できる事実や(法令審査)
その問題の事案に含まれる事実から(処分審査)、
原告の側から、①から④を否定する事情をひろってくる、
被告の側から、①から④を肯定するのに使える事情をひろってくる、
という作業になります。
ここで、
①から④のどれとの関連で述べているのか明らかにせずに
ただ、「なんとなく原告・被告に有利そうな事情」を指摘するだけ、の論証をされる方がとても多いわけです。
しかし、法的要件と結びつかない論証は、
法的論証においては、無意味です。
問題文や、あるいは実際の事件の各種事情を
憲法上の要件論にあてはめる能力を伸ばしていかないと、
なかなかしっかりした論証ができないわけですね。
さて、そこで、ちょっと一例をば。
猿払事件の事案で、被告人が「現業」の公務員だったという事情がありました。
一審は、これが憲法判断の重要な要素となる事情だと考えているようですが、
これは、①から④のどれかを否定する事情として使えるのでしょうか?
それとも、上告審が言うように、①から④を否定する事情にはならないのでしょうか?
少し考えて見て下さい。
(このような、次の一手クイズを、自分で判例集の「事案」みながら考えると、
めきめき力が付いてきます)
その中で、司法試験受験生の方々、あるいは合格者の方々ですら、
憲法が問題になる事案での論証の仕方に苦労されている、
と言うことが分かりました。
そうした事態は、
まず、
法令審査・処分審査とか、
違憲審査基準と比較考量といった
技術的な枠組みが分かりにくいということに起因すると思いますが、
これは、よく筋の通った説明をみてみれば、、
それほど難しいものではないわけです。
ただ、こうした技術的枠組みが理解できた、
というのは、
将棋で言うと序盤の定跡を覚え、
矢倉囲いや美濃囲いが組めるようになった
という段階であり、
必ずしもそれだけで勝てるようになるわけではないわけです。
序盤の定跡を覚えたら、次は
中盤の戦い方でありますが、この練習が難しいわけです。
*ちなみに将棋では、この段階では「次の一手」問題集で勉強をします。
そこで、私が提案します練習方法をちょっと紹介してみようかと。
あ、今からお話するのは、
防御権ないし防御権類似の論証が可能な場面の練習に限られますので、
ご注意を。
さてさて、防御権の事案で求められているのは、
要するに、制約を認定し、
その制約が次の四つの正当化要件を充足するか、を検討する、ということです。
①目的の正統性
②目的と手段の関連性
③手段としての必要性(LRA不在)
④手段としての相当性(利害均衡)
この四つの要件と違憲審査基準との関係は、
『急所』を読んでいただければと思います。
いかなる防御権のいかなる態様の制約であっても、
この四つの要件を充足しないと正当化はできません。
さて、防御権の事案の中盤戦というのは、
典型的適用例で参照できる事実や(法令審査)
その問題の事案に含まれる事実から(処分審査)、
原告の側から、①から④を否定する事情をひろってくる、
被告の側から、①から④を肯定するのに使える事情をひろってくる、
という作業になります。
ここで、
①から④のどれとの関連で述べているのか明らかにせずに
ただ、「なんとなく原告・被告に有利そうな事情」を指摘するだけ、の論証をされる方がとても多いわけです。
しかし、法的要件と結びつかない論証は、
法的論証においては、無意味です。
問題文や、あるいは実際の事件の各種事情を
憲法上の要件論にあてはめる能力を伸ばしていかないと、
なかなかしっかりした論証ができないわけですね。
さて、そこで、ちょっと一例をば。
猿払事件の事案で、被告人が「現業」の公務員だったという事情がありました。
一審は、これが憲法判断の重要な要素となる事情だと考えているようですが、
これは、①から④のどれかを否定する事情として使えるのでしょうか?
それとも、上告審が言うように、①から④を否定する事情にはならないのでしょうか?
少し考えて見て下さい。
(このような、次の一手クイズを、自分で判例集の「事案」みながら考えると、
めきめき力が付いてきます)
えっと、私なら②を否定する事実として使います。
たしか国交法や規則は現業か否かに関係なく政治活動を禁止していて、ここで被告になっているのは現業公務員なので、処分審査をしていることになるのですが、
①目的は行政の中立性維持とそれに対する国民の信頼で、正当ですが、
現業公務員が政治活動をしても行政の中立性に影響を及ぼさないことからすると、被告のような現業公務員を処罰しても①の目的達成に役立たないので、手段と①との②関連性を欠く、ということになると思いました。
ひっかけかも。。よく考えると難しいです。
おそらく、行政の中立性が確保されてない事態っていうのは、政治的な意見の違いによって、行政の活動のやり方を変えてしまう事態をいうのではないかなと思います。
そうすると、前提として、その公務員の職務は民間にはないような公権力の行使に携わる職務を行う者である必要があるのではないかと思います。
でも、公権力の行使には関わらない、民間業務と同じような職務を行っているならば(これも行政活動であるといえばそうなのですが)、その公務員が政治活動をしても公権力行使のような本来的な行政活動に影響を及ぼすことにはない、従って行政の中立性に影響を及ぼさないといえる、と思いました。
うーん、でも行政の中立性にいう『行政』を公権力行使のような本来的な、って勝手に限定してよいのかしら。。なんだかよくわかんなくなってきました。
猿払一審判決を見ると、「非管理者である現業公務員でその職務内容が機械的労務の提供に止まるものが勤務時間外に国の施設を利用することなく、かつ職務を利用し、若しくはその公正を害する意図なしで人事院規則一四ー七、六項一三号の行為を行う場合、その弊害は著しく小さいものと考えられるのであり、このような行為自身が規制できるかどうか、或いはその規制違反に対し懲戒処分の制裁を課し得るかどうかはともかくとして、国公法八二条の懲戒処分ができる旨の規定に加え、三年以下の懲役又は一〇万円以下の罰金という刑事罰を加えることができる旨を法定することは、行為に対する制裁としては相当性を欠き、合理的にして必要最小限の域を超えている」として、③を否定する事情として判断しているように見えます。
ただ、前のコメントをしている方もおっしゃっているように、現業公務員に関してであって、さらに職務時間外での政治活動に関してはその職務の内容から、これを規制することが必ずしも政治的中立な職務という目的達成に必ずしも関連しないのではないかという価値判断もあるように見えます。
すなわち②についても判断しているかもしれません。
ただし、②については現業であるということと、職務時間外であったということが(すなわちメタな議論としての現業性と本件で職務時間外であったという特殊性とが一体として)判断されたと見られるので、現業性のみに着目すれば③について決定的な要素となっているのではないでしょうか。
加えて、質問なのですが、1.原告の立場で主張を2.被告の反論を踏まえてあなたの意見をという論文課題に対しての解答方法について悩みを持っています。
つまり、原告の主張とは(現実の訴訟で原告代理人が実際に主張している内容を検討すれば明らかなように)、ある法律(もしくはその適用過程)についての違憲か否かの規範をたてあてはめるという主張方法をとることにとてつもなく違和感を感じるのです。
しかし、よくある模擬試験では「原告側の主張に違憲判断基準がたてられて、これにあてはめができていること」に配点がなされ、被告側の主張にも同様に基準定立とあてはめができていることに配点がなされています。
この採点基準には到底納得いかないのです。
なぜなら、原告が「違憲だ」と主張するとき、「~の権利を侵害する作用があるのだから違憲だ」と主張することで必要かつ十分だと考えるからです。
更には、被告としては何も基準など立てずとも、「そもそもそんな権利ありません」「仮にあったとしても本件では権利を侵害していません」「仮に侵害が認められるとしても、本件では正当化されるじゃないですか」というはずだと思うのですが。
その上で、もしもその場合に違憲になるかを詳論するのは私見の部分であるはずで、公法系の司法試験に設問ごとに配点割合が明記されないのはこういった配慮(ないしメッセージ)があるのではないかと思うのですが。
先生のご意見を伺いたいと思います。
すいません長くなりました。
よろしくお願いします。
K.sさんと同じ発想だと思いますが、
現業公務員の職務自体は機械的な労務の提供なので、現業公務員が政治的行動をしても、職務の忠実な遂行という意味での行政の中立性は害されないからです。
判例での「次の一手」演習、実践してみようと思います!
私自身は,国民の信頼なるものを中立性そのものとは別に目的として措定することはインチキ臭いと思っており,また,職務の裁量性はない(あったとしてもネグリジブル)と考えています.そうすると,業務に裁量性のない現業公務員の政治活動を禁じることは,公務員の職務執行上の中立性との合理的関連性を欠き,(軽微な制約をも含め)制約は許されないということになります.
では、その筋で言った場合にです。
郵便局員の方が、
「あー、こいつ、〇×党のポスター貼ってやがる。
郵便物廃棄してやろ。」とかってやっても
政治的中立性は害されないのでしょうか?
とかって、言われたら、どう反論しますか?
じぶ様は、「違憲審査基準」というものをどのように理解されているか、
もう少し言うと「違憲審査基準」という言葉の定義を教えて頂けないでしょうか。
それでは、
「裁量性のある業務において
政治的中立性が害される場合」とは、
どういうことをいうのですか?
・・・うーん,必要性っぽくなってきました.