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木村草太の力戦憲法

生命と宇宙と万物と憲法に関する問題を考えます。

二段階審査の第一段階と第二段階で審査基準は常に共通か?

2012-05-02 09:31:49 | Q&A 憲法判断の方法
このようなご質問をいただきましたので、
記事にしてお答えいたします。

Unknown (ririrara)
2012-05-01 22:42:46
木村先生、はじめまして。

佐渡先生対策講座等の処分審査の記事を拝読させていただきました。
私は今まで条文の趣旨から文言の解釈を行って本件は要件にあたらないから違法、ひいては違憲などの<処分審査2>の方法を行っていたのでとても衝撃的でした。
(が、とても勉強になりました☆)

なので、まだ頭が混乱していて稚拙な質問をさせていただくことをお許しください。


①処分審査を書く際の目的手段審査の基準は論理必然的に法令審査の基準と一致するか。

原告の立場では原告の立てた法令審査の基準を使って(多くの場合)手段審査を判断することとなり、私見では、(場合によっては)修正した法令審査の基準を使って手段審査をするのか。



どもです。
よくご質問を受ける点なのですが、必然ではないですね。

例えば、
「住宅街の平穏を維持するため
 この公園で、騒音をたてる行為を禁じる」
という規程があったとしますね。

で、この規程は、普通のアマチュアバンドの路上ライブ
には適用されていなかったのですが、
反原発を訴えるバンドにだけ、特別に適用されるようになった、
というようなケースを考えましょう。


この場合、この規程の法文違憲審査
(典型的適用例の審査、司法試験の出題趣旨などでは法令審査と呼ばれることもある)
をする場合、表現内容中立規制の審査基準になります。

一般に、このような場合に、適用審査(処分審査)をすると、
表現内容規制の審査基準になり、要求される目的の重要度は高くなるでしょう。


ところで、最近、私は表現内容規制というのは、
表現の自由の観点から審査基準が厳しくなるのではなく、
表現に示された思想にもとづく差別が疑われるから審査基準が厳しくなっているのでは?
と思うようになっています。

こう考える場合、法文違憲審査と適用審査で、
そもそも制約されている権利が違う、ので、審査基準も当然変わる、ことになるでしょう。

も少し身近な(?)を挙げると、
立川ビラ判決の事案では、法文違憲審査段階では、
「表現行為ではない住居侵入行為の規制」が問題になるので、
制約された権利は、住居侵入の自由。
適用審査では、表現の自由の制約が問題になります。

やはり審査基準が変わりますね。

あと、同種の権利で審査基準が変わりものとしては、
「ある町では、学習塾営業の許可制がとられていたが、
 例外的に、いくつかのターミナル駅前での開業については
 実質届出制として運用されていた」という状況があったとして、
無許可で駅前開業した、みたいな事案です。

この場合、法文違憲審査段階では、許可制の基準がとられ、
適用審査では、届出制の基準がとられる、可能性があります。


多くの場合、法文違憲審査(典型的適用例審査)と適用審査の審査基準は共通しますが、
それぞれ制約された権利が違う場合、
あるいは、制約態様が異質な場合、審査基準が変わります。



②H22本試験の生存権における処分審査についても目的手段審査を使うのか。

採点実感では「『居住地』『現在地』の文言お解釈適用(運用)が問題となっていることを意識し、……その解釈を検討することが求められる」

上記記述を前提とすると目的手段審査を予定していないように思えるのですが、それは社会権であるため自由権とは異なるということでしょうか?
司法試験で求められている処分審査においては必ず目的手段審査を用いるのでしょうか?

どうぞよろしくお願いします。


あの問題は、請求権事案なので、
そもそも防御権制約の目的手段審査や、いわゆる三段階審査(保護範囲、制約、正当化)は適用できません。

急所第八問をご参照ください。

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8 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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ご回答ありがとうございます (ririrara)
2012-05-02 19:52:33
急所も読ませていただきました。
おかげですっきりしました。

ありがとうございます(*^^*)
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>ririiraraさま (kimkimlr)
2012-05-03 06:31:28
はい!がんばってください。
返信する
内容規制と内容中立規制 (黒猫)
2013-01-22 00:32:27
こんばんは。法令の審査方法(9)続編楽しみです。
わからない所があったので2つ質問させて下さい。よろしくお願いします。

先生の
「ところで、最近、私は表現内容規制というのは、表現の自由の観点から審査基準が厳しくなるのではなく、表現に示された思想にもとづく差別が疑われるから審査基準が厳しくなっているのでは?と思うようになっています。こう考える場合、法文違憲審査と適用審査で、そもそも制約されている権利が違う、ので、審査基準も当然変わる、ことになるでしょう。」というのは、芦部憲法学Ⅲp400で「内容規制は表現内容を差別して、民主主義社会の存立に不可欠な公的討論」「思想の市場」「の正常な作動を歪曲してしまう」という記述について、(その箇所ではおそらく【表現の自由】の保障根拠を大きく傷つける、という文脈で書かれているところを)、【平等権】を侵害する、という視点で捉え直した、と理解していいのでしょうか。


「内容規制ならば厳格審査に服する」と言われます。それは規制態様が厳しければ権利に与えるダメージが大きくなり、従って失われる利益がより大きくなることから、基準もより厳格になるのだ、と理解しています。 問題は、「規制態様が厳しい」とはどういう意味か、ということです。①(先の通り)思想の自由市場を歪曲してしまう、②政府が特定の思想を抑圧したり助長しようとしたりするという不当な動機に基づいて規制が行われる危険が高い、ということが言われます(Interactive憲法p135)。しかし①は内容中立規制と量的違いに止まると思います。②は大分深刻で、(1)「危険が高い」ではなく、そういう不当な動機だったと認定できて初めて規制態様が厳しいと言えるのではないでしょうか。(2)仮に不当な動機だったとしても、その主観的な「動機」と客観的な「規制態様」がどう繋がるのかいまいち理解できません。私が刑法で結果無価値をとっているからかわかりませんが、大事なのは、表現の自由の「侵害の程度」(例えば、情報の流通が大きく妨げられた)であり、だからこそ、「失われる利益が大きい」といえるのではないでしょうか(動機の内容次第で、そこで問題になっている権利や自由の価値が損なわれる程度が変化するなんてことはありえないと思います)。
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>黒猫さま (kimkimlr)
2013-01-22 07:41:17
その辺は、ジュリスト1400号の論文よんでみてください。
返信する
差別されない権利 (黒猫)
2013-01-25 00:50:21
こんばんは。今日図書館で先生の論文を読みました。疑問点がモロに書いてありました(笑)相当解消できました☆
少し教えていただきたいことがあります。よろしくお願いします。

①【法令の審査方法】では「憲法14条」について直接の解説はなかったと思います。「差別されない権利」含め、憲法14条違反を主張する場合、表現の自由といった防御権を主張する場合と同じような「法文審査」や「法令審査」「処分審査」は可能なのでしょうか。不可能だという場合、それは防御権の場合とは何が違うから不可能だ、ということになるのでしょうか。

②「急所」にも記載されていたのですが、ジュリp99のピアノ伴奏判決以下の部分で「適法な職務命令に対し‥自由権を理由に対抗できると解するのは‥妥当ではない」とあります。ただ、今は職務命令(を基礎づけている部分)が違憲かどうかを問題にしているわけで、職務命令が適法かどうかというのは、その憲法判断の結果次第なのではないでしょうか。結論先取りのように思えるのですが(もちろん、先生はそんなことはご承知だと思いますので、きっと違う観点からお書きになられていると思うのですが)…

③ジュリp101で、Karst教授は「一般的な見解‥危険がある」、長谷部教授は「特定の思想‥危険の大きさを理由に‥」との記述があります。木村先生はこの「危険」ということについてどうお考えでしょうか。厳格審査にする根拠は、「規制態様が厳しいこと」も理由の一つに上げられると思いますが、「危険」があるというだけでは、そもそもまだ、その規制態様が厳しいものかどうか判明していないはずでは?と思うのですが。。一般的でない見解を抑圧した、特定の宗教を抑圧した、といいきらないかぎり(認定しない限り)、「厳しい規制態様」とはいえないのではないでしょうか。それとも、厳しい規制態様とは、「既遂」だけでなく、「未遂」(危険)まで含めて考えられているのでしょうか。(かなり細かいかもしれません。っていうか、細かいかどうかを理解していないのですけど。。)

返信する
>黒猫様 (kimkimlr)
2013-01-27 09:28:51
質問第一ですが、平等権については、
「法令が設ける区別」が基本的な違憲審査の対象になります。

(処分上の区別が問題となる場合、
 法律がその区別を許容する趣旨なら結局法律の問題、
 法律がその区別を許容しない趣旨なら、法律違反の区別
 =法適用平等の事案、
 になります)

ある法律が、その区別を規定するだけの内容なら法文審査、
様々な内容を持っていて、その区別を要求している部分を審査するなら
部分審査(処分審査)的な処理になりますね。

詳細は、急所の第7問で整理されています。

質問第二ですが、
公務員は、「組織法・作用法上違法でない命令」については
自らの自由権が行使できないことに同意して、あるいは
行使できないのが憲法の想定であることを認識して、就任します。

よって、「組織法・作用法上違法でない=適法な命令」については、
自由権を使えません。

簡単に言うと、受命者の自由権制約は、
命令を違法にする根拠にならないのです。
君が代関係の組織法・作用法的分析については、
私の判例評釈(自治研究84巻12号)を参照してください。

質問第三点ですが、
いわゆる危険犯と一緒で、内容規制は、
内容自体が悪質であるとの差別を助長する危険があり、
危険発生自体で法益侵害があります。

(名誉棄損罪が、侵害犯か危険犯か、
 という問題を調べてみてください)

こんな感じです。
返信する
なるほどです☆ (黒猫)
2013-01-27 11:51:42
おはようございます。かなり明快ですね。質問2・3はバッチリです。

質問1に関してなのですが
ジュリ1400 p102 で、校長の職務命令、管理者の管理行為が、各々「差別されない権利」を侵害するかを検討する場合、

【処分上の区別が問題となる場合、
 法律がその区別を許容する趣旨なら結局法律の問題、
 法律がその区別を許容しない趣旨なら、法律違反の区別
 =法適用平等の事案】

ということから考えると、おそらく、職務命令、管理行為の根拠法令はそれ自体を見る限りは、区別を許容していない、とまではいえない(法令が裁量を与えている)といえるかもしれません(Ex.管理行為の場、そうでないとピザのチラシを投函するような人についてまで含めて、すべて被害届をださなければならないことになります。ある人については被害届を出して、ある人については出さない、ということは認められているはずですから。)。そうだとすると、「法律の問題」、といえそうです。

【ある法律が、その区別を規定するだけの内容なら法文審査、様々な内容を持っていて、その区別を要求している部分を審査するなら部分審査(処分審査)的な処理になりますね。】


法文審査ではないです。両事件とも「処分審査」、といえそうです。

こういう理解で大丈夫でしょうか?


☆木村先生の「平等なき平等条項論」購入しました。ブログで表紙を見て、その絵柄から分厚そうな圧迫感を受けたので、現時点での購入は控えていたのですが、図書館で見かけて、思ったよりかなり薄めで驚き、購入を決断しました。しかしネットで注文しようとした際、さらに値段に驚きました!笑
内容でももっと驚きたいと思います(笑)
平等権は実務に入ればでもかなり使えそうなのに、実はあまり理解できていないことにかなり不安を覚えていたのです。この本で少しずつ勉強を進めていきたいと思います。
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>黒猫様 (kimkimlr)
2013-01-29 11:40:18
こんにちは。

仰る通りで大丈夫だと思います。

まあ、平等権については、あまり法令審査・処分(適用)審査の区別をする必要がある場面はないのですが、
そう思っておくと、整理がつくと思います。

平等権、差別されない権利と憲法訴訟論
については、まだ本格的な研究のないところで、
いつか、まとまった論文を書こうと思っています。

助手論文、ありがとうございます。
一生懸命書いたので、楽しんで頂けるとうれしいです。
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