木村草太の力戦憲法

生命と宇宙と万物と憲法に関する問題を考えます。

好きな駒における法律家(2)

2016-01-21 21:39:03 | ちょっと一言
好きな駒は何ですか?」という質問は奥が深い。


さて、話は本題に入り法律の話である。

法律の世界は、囲碁の世界と将棋の世界、どちらに近いかと言われれば
将棋に近い。

一つ一つの条文には個性があり、それぞれ違った役割がある。

例えば、憲法の9条と21条では、飛車と香車のように役割が違い
一つ一つの石に個性のない囲碁の世界とはちがう。

(もっとも、囲碁に詳しい友人によると
 達人になると、一つ一つの石の個性が見分けられるようになるそうで、
 彼は、二つの黒石を指さしながら、
 法律でいうとこちらが刑法18条、こっちが会社法121条だ
 と説明していた。
 もちろん私は話をきいていてちんぷんかんぷんだったが、
 おそらく、刑法と会社法の勉強不足だろう)

さて、となると法律家たるもの「好きな条文は何ですか?」と
しょっちゅう聞かれているはずだが、
私自身、意外とそんな質問をされた覚えはない。

確か、昨年5月、あるニュース番組の憲法特集の取材を受けた時に
「好きな憲法条文は?」と問われ、
そういえば、そんな質問があるのか、と思った次第である。

それをうけ、法科大学院で、院生たちに
「好きな条文は?」と聞いてみたりしたが
やはり、それをすらすら答える方はいらっしゃらない。

法科大学院生なのだから、それこそたくさん条文を知っているはずで

権力者のロマン、ワイマール憲法48条。

李白が見たら激怒するアメリカ合衆国憲法修正18条。
(すごい条文なのでぜひ調べてみてほしい。
 あの「山中与幽人対酌」は、
 この条文にキレた李白の作品だという)

無茶な契約条項があったときに
実にいやらしい働きをする民法415条と
考えてみればいろいろ思いつくはずであり、
どの条文をあげるかによって性格診断もできそうである。

また、われわれ憲法学者は
「好きな憲法の条文は何ですか?」と問われるわけだが、
憲法は、まあ人権保障など、格調高い条文が多く答えやすいが
刑法学者に「好きな刑法の条文は何ですか?」と問うと、
何を答えても犯罪である。難しい。

ついでに言うと刑法学者が専門をかたると冗談のようになる。

ある大学の教授会で、
新任の刑法学者が「詐欺のプロ」と紹介され、
あやうく採用を取り消されかかったという。

おまけに将棋の駒といっしょで状況というものがかかわってくる。

藤井九段の「駒台の上の金銀三枚」というのを
法律の条文でいうと、何だろうか?

というようなことを考えてみる今日この頃であった。





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1 コメント

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憲法学者はとある立憲国において万能か? ()
2016-01-30 23:48:48
囲碁の石はその位置によって意味がなされ、将棋の駒は位置によって本領を発揮するのでは?
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