4月24日(水)ランチ ホッケ焼き。
17時46分 渋谷駅にいた。
地下鉄を上り109に来た。
雨は止んでいた。
道玄坂を歩いて山手通りへ向かう。
時間も早いので食事でもするかと
店を覗くがオジサンが食べるような店がない。
元祖長崎チャンポンの看板の店に入った。
カウンターだけで客はいない。
チャンポンに瓶ビール注文。
時折見かける元祖○○の店は旨いとは書いていない。
やはり旨くない。
付近にあったラーメン屋は混んでいた。
混んだ店に入れば味は平均以上だろう。
18時半 お袋の病室に入った。
約一ヶ月ぶり。
私をぼんやり見つめた。
弟に聞くと周囲のベッドの方々が次々と亡くなり
どうもそれが分かるらしい。
混沌とした意識の中で私にしゃべるが分からない。
手を握ると暖かい。
いつもは冷たい手なので、私が両手で握り暖める。
お袋は指の爪で私の顔を掻く。
19時20分 弟夫婦がやってきた。
妹が鼻を吸引すると呼吸が楽になるのか
顔が和らぐ。
義妹が母親に呼びかける。
「ほら、次男が来たのよ」
「名前分かる」?
おふくろは、くぐもった声で私の名前を呟いた。
母親はベッドで右手を上げて壁に向けて指す。
何のことか分からなかったが
自宅に戻り、寝床に入って気づいた。
横浜の自宅に帰りたいとのだ。
亡くなった親父の処に行きたいのだ。
私は暗闇の中で泪目になった。
4月1日に旅立った義母の最後の言葉は
「家に帰りたい」
20時、病院を出ると雨だった。
渋谷駅に向かう。
雨中のストリートは享楽のビルライトで路面を輝かせ
傘で上半身が見えない女性は祭りの宵に
見せる妖艶な踊りのようだ。
端境には死がまもなく訪れる人達の館があることに
若者は知らない。