今日はカササギのはなし。
藤原歌劇団がロッシーニの 『どろぼうかささぎ』 日本初演をおこなうというので、昨日の初日公演を観に行ってきました。
ドラムロールの出だしが印象的な序曲だけだったら何度も聴いたことがありますが、 正直言ってどんな内容のオペラなのかさえ知りませんでした。
タイトルからしてカササギが何かを盗んじゃうんでしょ…、
そのとおり。
何か冗談みたい、 ロッシーニお得意の喜劇かしら…、
いえいえ、 オペラ・ブッファではなく、 セミ・セリア(半ばシリアス)。
セミ・セリアについての解説が公演プログラムに詳しく書かれていましたが、要約すると、
時代背景は封建時代、貴族や代官などによって一般市民である農民やその娘などが迫害を受けるとか、権力者が娘を誘惑するもうまくいかず、口実をつけて投獄してしまう。『どろぼうかささぎ』 はまさにこの典型。 本当はカササギの仕業なのに、可哀想にも盗みの濡れ衣を着せられたヒロインは、死刑宣告され銃殺寸前…。
悪者役はバッソ・ブッフォの歌手が受持ちコミカルな面も出す。
冤罪がはれ、フィナーレは必ずハッピー・エンド。
こんな一大事をドタバタ芝居に陥らず、 かといって暗く陰気な芝居にもさせないのがロッシーニのすごいところ。
多分意識的にだと思うのですが、 アリアよりも二重唱、三重唱・・・六重唱とアンサンブルの妙に重きを置いた作りになっていて、 音楽に深みを感じさせてくれます。
楽曲の多用、借用で知られるロッシーニのこと、 他のオペラで聴き覚えがあるようなパッセージがいくつも出てくるのですが、 アンサンブルの中にうまく溶け込ませているところなど、 まさに天才技です。
それぞれの歌い手さんについては特に書きませんが、よく新国立劇場のオペラで渋い役を聴かせてくれる妻屋さん(Bs)の悪代官、これまでとは違ったキャラを見たようようで個人的に新発見。
写真は
カササギが音符や休符を盗むわ…、
五線は切るわ…、
序曲の譜面を引っ掻き回しているアート作品