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iPS細胞への変化でガン治療薬発見の方法

2022-05-20 10:25:35 | 健康・医療
iPS細胞については私も大いに興味を持っており、いわゆる再生医療として新しい医療分野が開拓されるのではないかと期待しています。

しかしどうもこの研究には莫大はコストがかかるようで、思ったより進展していないのが現状のようです。このiPS細胞を色々な組織細胞に変換し、再生医療として使用するよりは、創薬研究に応用する方が現実的ではないかと思っていました。

色々な疾患になった細胞を患者から取り出すのは、大きな負担になりますが、それをiPS細胞で作り出しその治療薬の探索に使う方が現実的のような気がしていました。

この方法論とは少し違うのですが、iPS細胞がらみでガンの治療薬を探すという方法が東京大学の研究チームから発表されました。

これはガン細胞にiPS細胞への変化を促す遺伝子を加えてもガン細胞のままですが、ガンに効く薬を一緒に加えるとiPS細胞への変化が進むという現象を利用したものです。この方法により、皮膚や四肢に腫瘍ができる希少難治ガンである「明細胞肉腫」の分子標的薬になり得る薬剤を特定しました。

この手法は他のさまざまなガンにも適用できる可能性があり、新たな薬の発見が期待されます。研究チームは今回明細胞肉腫のマウスに、ガンを引き起こす遺伝子の機能を止める操作をしたうえで、細胞に初期化因子を入れたところiPS細胞に変化することを突き止めました。

これによりヒトのガン細胞に初期化因子と一緒に分子標的薬の候補を入れて、iPS細胞への変化の過程を調べれば、ガン遺伝子の働きを止める薬を見つけられることになります。

一般にシャーレ上のガン細胞に薬の候補物質を加えて増殖を抑えられるかを調べても、生体内では効果が出ないことがほとんどでした。一方今回の方法は遺伝子レベルでガンの増殖を抑える効果を確認できるので、さまざまな候補薬の中から効率的に薬を特定できることとなります。

ガン遺伝子を抑えられる薬が分かれば、発ガンのメカニズムの解明にもつながります。今回はこの明細胞肉腫が発生する仕組みがある程度明らかになりました。今回の研究成果はあくまで方法論の開発であり、まだ具体的なほかのガンに対する探索研究は行われていません。

研究チームは、分子標的薬が特定できれば発ガンのメカニズムが分かり、ガンそのものの理解にも直結し、全く新たな薬の開発にもつながるとしています。

今回の研究はiPS細胞の応用ではなく、いわばiPS細胞の作製法を用いたガン細胞の変質というべきものですが、遺伝子レベルで分子標的薬の探索ができるというのは非常に興味ある方法といえます。

こういった手法で新しい分標的薬が見つかれば、ガンの個別治療の選択肢が増えることになりそうです。


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