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貼りつけるだけで臓器を再生させる「細胞シート」

2022-05-22 10:27:01 | 健康・医療
先日テニススクールに行き、1時間半のレッスンを受けたところ、帰ってから右ひざに痛みが出てしまいました。

幸いなことに一晩寝たら痛みも取れ普通に歩けるようになりましたが、やはりサポータなどが必要な歳になったようです。

今の自分に当たり前にできること、例えば目が見える、歩くことができる、食べることができる、などがいつまで当たり前が続くか考える歳になったといえそうです。

こういった当たり前を続けることができるような医療の技術が進歩しており、そのひとつに「細胞シート工学」があります。機能が低下した臓器を復活させることは、現在の医薬品がどんなに進歩しても難しい課題といえます。

こういった臓器を再生させる「再生医療」が、iPS細胞の発明などによって一気に注目を集めていますが、期待の大きさの割には進展が遅いような気がしています。こういった再生医療のなかで日本発の「細胞シート工学」があります。

体内の「胎生幹細胞」や「iPS細胞」を培養して細胞シートを作り、それを患部に貼るだけで縫合も必要ない負担の少ない治療法が開発されつつあります。

例えばすでに実用化に近づいている細胞シートに、心不全治療用の「ハートシート」があります。これは太ももの筋肉の細胞を培養させて作った細胞シートで、患者の心臓に貼りつけるとシートと心臓が一体化し、血液を送り出す力が回復するというものです。

大阪大学ではiPS細胞を使った心筋細胞シートの治験を2020年2月の時点で3例目の被験者まで移植が完了し、経過は順調のようです。細胞シートを使った治療は心臓だけではなく、眼の角膜も実施されています。

組織が似ている口腔粘膜から幹細胞を採取し、それを培養して細胞シートを作ります。ダメージを負って濁った角膜表面の組織を除去し、細胞シートを貼り付けると術後1か月で角膜が透明になり視力が回復します。

その他歯根膜、膝の軟骨、十二指腸の再生など細胞シートはさまざまな治療に利用され、実績を積み重ねています。この細胞シートが貼り付けるだけで組織と一体化する理由は、細胞の間を埋めているタンパク質にそのカギがあります。

このタンパク質がいわば接着剤のような役割を果たし、細胞シートの細胞と組織の細胞を自然に一体化しているようです。

これは細胞シートを作成するときにシャーレとシートが結合してしまうという問題がありましたが、機能性高分子を利用するなどの工夫で何とか解決しており、この辺りが細胞シート工学と呼ばれる所以でもあります。

この細胞シートによる治療は、患者本人の幹細胞を使えば拒絶反応などの問題もなく理想的な再生医療といえそうです。

その割には細胞シート治療はまだ実用化に至っていないようですが、どこに問題があるのか一刻も早い進展を期待する分野といえそうです。


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