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液体のりでガンの治療効果向上

2020-03-25 10:34:33 | 健康・医療
東京工業大学の研究グループは、ガンの放射線治療に用いるホウ素の薬物に液体のりの主成分を混ぜてスライム状にすると、治療効果が大幅に向上することを発見したと発表しました。

マウスを使った実験では、大腸ガンがほぼ消失したようです。この放射線治療はホウ素中性子補足療法(BNCT)と呼ばれ、ガン細胞に取り込まれやすいボロノフェニルアラニン(BPA)というホウ素化合物を投与し、加速器や原子炉から出る熱中性子を照射します。

熱中性子とホウ素が核反応を起こし細胞を破壊します。正常な細胞には影響がないため、患者の負担が軽くなる次世代のガン治療法として期待されています。

しかし細胞に取り込まれたBPAは流出しやすく、短時間で出てしまうという問題点がありました。研究グループは液体のりの主成分であるポリビニルアルコール(PVA)とホウ素の水和物を混ぜるとスライム状になり、独特な粘り気が出ることに着目しました。

実際にPVAとBPAを水中で混ぜて結合させると、細胞に取り込まれるBPAの量が約3倍に増加しました。BPA単独ではゾル状の細胞質に蓄積されるだけですが、結合体はエンドソーム・リソソームと呼ばれる細胞内小器官に留まることを突き止めました。

このホウ素中性子補足療法はホウ素がガン細胞に取り込まれやすい性質と、これに中性子や熱中性子を照射するとホウ素から活性なアルファ線が放出されることを利用したものです。

アルファ線はおよそ10ミクロンしか飛ばないため、ホウ素を取り込んだ細胞のみを破壊し、正常細胞を傷つけることなく腫瘍細胞のみが選択的に治療できるというものです。

このガン細胞に特異的に取り込まれるホウ素化合物として、ボロノフェニルアラニンが開発されています。液体のりの成分と結合したBPAを大腸ガンのマウスに投与したところ、従来のBPAと同等以上に集まり、高いホウ素濃度を長期的に維持することが分かりました。

中性子を照射すると高い抗腫瘍効果を示し、ほぼ完治に近い治療効果を得られたとしています。研究グループのメンバーである中堅化学メーカーは、2,012年から専用の加速器を使い、世界初となるBNCTの臨床試験(治験)に取り組んでいます。

研究グループは今後、この会社の協力を得て、安全性に配慮しながら結合体の臨床応用を検討する予定としています。

この治療法は、中性子を発生させる加速器が大型で高価になることが問題とされていましたが、小型化に成功したようで、新しいガン治療法として期待が持てるかもしれません。


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