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ALS新薬の臨床試験実施

2016-05-23 10:24:49 | 健康・医療
東北大学と大阪大学の研究グループが、ALSの新薬の臨床試験(第二相)を実施すると発表しました。

ALSは筋萎縮性側索硬化症という難病で、筋肉が徐々に障害を受け動かなくなるという恐ろしい病気です。

実は私がまだ薬の開発をしていたころ、このALSの治療薬の探索の検討をしたことがありました。こういった難しい病気で患者数が少ないということは、薬のメーカーにとっては利益にならない仕事になります。それでもこういった特定疾病については、ある程度推奨されていました。

当時はこの病気は名前の通り、筋肉が萎縮して起きると考えられており、筋肉を活性化する薬という方向で検討しました。こういった研究では薬の効果を調べる評価グループとの連携が重要で、いろいろミーティングを行いましたが、結局この病気に対応した評価系の構築ができませんでした。ということで具体的には何もできず終わってしまいましたが、その後ALSの研究が進み、この病気は筋肉の萎縮ではなく、脳から筋肉への指令が届かなくなる、つまり神経系の病気であることが分かりました。

この病気はMRIやCT、血液検査といった項目はすべて異常が出ませんが、筋電図検査で運動ニューロンの障害を証明することで、やっと診断ができるようです。この運動ニューロン障害以外脳の働きには全く異常がなく、その原因はわかっていません。現在でもアミノ酸の代謝障害や自己免疫疾患といったことが言われていますが、はっきりした原因を特定するに至っていません。

今回研究グループが試験する新薬は、HGFという幹細胞増殖因子と呼ばれるタンパク質です。このHGFは運動神経を保護する作用があり、今回の臨床試験で効果が確認されれば、初の治療薬となる可能性が高いと期待されているようです。これまでラットの実験で、筋力低下が抑制され、生存期間が1.6倍伸びることが確認されているようです。

今回の臨床試験は、比較的症状の軽い48人を対象として、2週間に1回このHGFを投与し、最長1年間続けるというものです。ALSについては、いくつかの既存薬があるのですが症状の進行を抑える効果は十分出ていないのが実態です。HGFは日本で発見された生理活性物質で、その後の研究で細胞死を防いだり血管新生を促す働きがあり、疾病により障害された組織の再生や保護に関わっているとされる物質です。

どういうきっかけでこのHGFをALS治療に用いるようになったかわかりませんが、いわゆる低分子薬よりもこういった天然の生理活性物質のほうが、何となく効果が期待できるような気もしています。

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