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乳がん治療で「乳房を広い範囲で切除」が減少

2024-03-16 10:35:59 | 健康・医療
ガンに罹る人は増加しているものの、死亡率は下がり続けています。これは「ガン治療」の進化が著しいことが要因のひとつです。

日本乳ガン学会の「乳ガン診療ガイドライン」に示すように、現在でも手術は乳ガン治療の重要な手段です。しかしその位置付けや方法は、臨床試験のエビデンスや技術の進歩、社会状況によって大きく変化してきました。

20世紀後半まで広く行われていたのは、ハルステッド手術と呼ばれる根治的な乳房切除術でした。ガン病巣のある乳房はもちろん、大胸筋、小胸筋から鎖骨下のリンパ節を切除し、ガンに侵された部位周辺の広い領域を徹底的に取り除く大手術です。

加えて鎖骨上リンパ節や胸骨傍リンパ節、時には鎖骨そのものまで切除する拡大乳房切除術も行われました。こうした手術が普及した結果、乳ガンの局所再発率は低下したことは確かです。ところが大手術を受けた後の患者には、多くの場合様々な身体的不都合が残りました。

外見が損なわれるだけでなく、リンパ浮腫が出るなど術後後遺症に苦しむことが多かったのです。こうした根治的乳房切除術は患者の生存期間を延ばしたのかという点を、科学的に検証する大規模なランダム化比較試験が米国とカナダで実施されました。

乳がん手術に関するこの比較試験では、リンパ節転移のない乳がんの患者1000人あまりを、「根治的乳房切除術」、「リンパ節郭清なしの単純乳房切除術」、「単純乳房切除術+放射線照射」の3群に分けて長期間経過観察した後、生存率を比較しました。

その結果、転移がない症例の25年無病生存率はどの治療法でもほぼ50%で、有意差は認められませんでした。ランダム化比較試験の結果を踏まえて、乳ガンの外科手術の様相は大きく変わりました。

ハルステッド手術の件数は年々減少し、日本では1990年代以降ほとんど行われていません。増えているのが乳房温存手術で、乳房全体を切除せずに病巣を切除する手術で、2011年には乳房温存手術の割合が58.6%に達しました。

乳房温存手術は現在、乳ガンの標準治療のひとつになっています。また乳ガンではかなり初期の段階からガン細胞の一部が全身に広がることが分かってきました。

そのため広い領域を切除する手術は行わず、患者の状態に応じた温存的な手術に加えて、薬物療法や放射線療法で適切にガン細胞を死滅させる集学的治療が行われるようになっています。

この様に乳ガンだけではなく、他の部位のガンも大きく切除する方法からガン細胞だけを切除する方向に変わってきたようです。これは患者の負担などを考えれば、良い方向と言えるのかもしれません。


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