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自家培養軟骨で不治のケガを克服

2018-04-28 10:43:36 | 健康・医療
富士フィルムグループのジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)が、再生医療という先駆的な手法を使い、欠損した軟骨を再生する新たな製品を開発したと発表しました。

スポーツなどで大きな衝撃を膝に受けて関節の軟骨部分に欠損などが生じると自然治癒が難しいことは、長らく整形外科の世界では常識とされてきました。軟骨組織には血管がなく、傷を治す働きをする細胞・栄養を含んだ血液を運べないためでした。「不治のケガ」ゆえに引退を余儀なくされるスポーツ選手も少なくなかったようです。

この再生医療製品は増殖能力を持つ自分自身の細胞を用いた「ジャック」と呼ばれる自家培養軟骨の利用です。五百円硬貨くらいの大きさの白い円形の塊が、軟骨の機能を正常にする切り札となります。

ジャックは、患者の軟骨組織の正常部位から細胞の一部(0.4グラム程度)を採取し、J-TECの施設で培養、増殖させて作られます。4週間ほどして膝の軟骨が失われていた部分にジャックを移植すれば欠損部分が修復され、リハビリなどの後、半年〜1年で通常通りの歩行が可能になる流れです。

同社は「膝の荷重部の軟骨が傷むと自然治癒しないのが常識です。それを自分の細胞を使えば拒絶反応もなく再生できるのがジャックの利点です。」と力説しています。ひざの痛みなどに悩むアスリートや体を使う現場で働く人たちが患者となります。

例えば、膝のケガを負いプレーをあきらめかけていた30代のサッカー選手はジャックによる治療を受けて、再び運動を楽しめるようになりました。若いころにバレーボールで膝を痛めた30代の介護士も、現在は看護の現場で不自由なく力仕事をこなしているといいます。

治療で改善が見込まれる潜在患者は多く、2000人を上回るとみられています。「自家培養軟骨移植術」と呼ばれるこの手法は、膝関節外科を専門とする広島大学が確立したもので、この指導のもとJ-TECが製品開発を行い日本初の治験を実施しました。

2012年に国から再生医療等製品として承認され、翌年には保険適用となっています。ただ軌道に乗るまでは様々な試行錯誤が繰り返され、特にスケジュール管理が難しいようです。

採取した細胞は4週間程度で規定量の培養を行いますが、細胞の増殖の速さは個体差のため異なり工程管理が難しくなっています。また移植に際しては、細胞を低温管理下で仮死状態で運搬し、患者側もあらかじめ移植の手術日を決めて待つ必要がある等、スケジュールの調整が大変としています。

このように未来の医療とされてきた再生医療は、一歩ずつ現代の医療に近づきつつあるようです。


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