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高血圧の新治療 腎デナベーション

2018-03-08 11:03:15 | 健康・医療
高血圧が改善しない患者への新治療法として、自治医科大学などが臨床試験を行っている「腎デナベーション」が注目されています。

このブログでは新薬など薬剤での治療を主に書いていますが、こういった外科的手法も面白いのかもしれません。

高血圧には、適切な薬を正しく飲んでも数値が十分に下がらない薬剤治療抵抗性の人がいますし、何らかの理由で定期的に薬を服用できない人もいます。そこで開発されたのが、腎デナベーション(除神経)という手法で、血圧上昇に関係する腎動脈周囲の交感神経を焼灼します。

焼灼という言葉はあまり聞かないのですが、焼いて除去するという方法のようです。高血圧の原因はさまざまですが、そのひとつが交感神経の活性化といわれています。ストレスなどの何らかの理油で脳から腎臓に伝わる交感神経が活発になると、腎臓からレニンという酵素が過剰に分泌され、アンジオテンシンという物質が増加し、血管収縮や塩分排出量減少によって血圧を上昇させます。

一方血管収縮で心臓から腎臓への血流が減少し、交感神経が活発化してやはり血圧が上昇します。

腎デナベーションでは、大腿部あるいは手首からカテーテルを入れ、高周波や超音波で腎動脈周囲の交感神経を焼灼するものです。これまでの研究では、薬剤を3剤服用しても収縮期血圧(上の血圧)が160以上の人、いわゆる薬剤治療抵抗性高血圧を対象にした臨床試験があります。

シャム手術(見せかけの手術、プラセボのようなものです)を施行したグループと厳密に比較した場合、腎デナベーション群と血圧の低下度に有意な差は見られませんでした。しかし薬物治療が効きにくい早朝や夜間の血圧が有意に低下し、早朝、夜間ともにピーク時で約5低くなりました。

さらに睡眠時無呼吸症候群(SAS)による高血圧でも有意に低くなりました。これは早朝・夜間高血圧やSASは交感神経の活発化と関係が強いため、腎デナベーションが効くと考えられるようです。

また世界的には未治療の患者を対象にした臨床試験も実施されています。血圧が150以上で24時間血圧が140以上の人を対象に、日本、ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアで行われています。

この研究では3か月後の24時間血圧の変化は、収縮期血圧が対照群より5有意に低下しました。血圧が5下がってもあまり意味がないような気がしますが、この低下度は臨床的には脳卒中や心不全の20~25%の低下に相当するようです。

こういった未治療の高血圧患者にも腎デナベーションの効果が確認できたことから、今後はどの段階でこの治療を取り入れればよいかを検討するようです。現時点での課題は、どの患者に効きどの患者に効かないかの見極めとしています。


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