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ブタの臓器をヒトへ移植する技術の実現性

2023-01-12 10:36:21 | 健康・医療
かなり前になりますが、ブタの心臓を末期の心臓病患者に移植したという話しをこのブログでも取り上げました。

こういった異種移植に関しては、倫理上の問題はほぼなくなり技術的な進展もあるようです。ブタの臓器をヒトに移植する技術はどこまで現実に近づいているのかを紹介します。

2022年1月に米国のメリーランド州の57歳の男性にブタの心臓を移植する手術が成功したというニュースが世界を駆け巡りました。ブタの心臓移植を行ったのはメリーランド大学医学部で、世界初の事例でした。

移植された豚の心臓は4つの遺伝子の機能を失わせ、ヒトの6つの遺伝子を加えた遺伝子組み換えが行われたものでした。患者は末期の心臓病をかかえていましたが、移植後は心臓が正常に機能し明らかな拒絶の兆候は見られなかったようです。

しかし残念ながらこの男性は2か月後に亡くなっています。また同大学はその後11月に、ブタの心臓の電気信号は通常人の心臓よりも速く伝わるが、移植されたブタの心臓の電気信号ははるかにゆっくりと伝わることが分かったと報告しています。

このほかにもニューヨーク大学において2022年6月と7月に、脳死を判定されたヒトに対しブタの心臓を移植することに成功しています。手術後は55時間の間、拒絶反応の兆候は観察されず心臓は標準的な移植後の薬物療法で正常に機能し、追加の機械的な処置も必要なかったとしています。

アラバマ大学においても、脳死と判断されたヒトに対して、ブタの腎臓を移植する手術に成功しています。移植された腎臓は77時間もの間、血液をろ過し尿を生成し、拒絶反応もなく正常に機能していました。

ブタの臓器をヒトへ移植した手術の事例を3つ挙げましたが、いずれも患者は亡くなっています。しかし多くの専門家は悲観的にとらえておらず、異種移植に関する技術について失敗したという意味にはならいとしています。

なぜブタの臓器が注目されているかというと、ブタの臓器の大きさと生理機能がヒトに似ているためです。米国では10万人以上が臓器移植を受けるために待機しており、毎日平均17人が移植を実現できず死亡しています。

この問題をブタの臓器を活用した移植で解決することができれば、早期の段階で多くの命が救われるという期待があります。そのために解決すべき課題として、異種移植による拒絶反応のメカニズムや、ブタの臓器がヒトの体内で正常に機能するための遺伝子改変技術などがあります。

そのほか移植する臓器を提供するブタを飼育する特定の条件の確立なども残されています。また倫理面での課題もあり、技術的に可能になっても人々に受け入れられなければ現実の医療としては難しいでしょう。

日本ではこのような議論が全く行われていませんが、そういった時代が近付いているといえるのではないでしょうか。


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