ごっとさんのブログ

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「1型糖尿病」を寄生虫の糖で発症抑制

2020-06-09 10:30:35 | 健康・医療
免疫機能の異常でホルモンの一種のインスリンができず、高血糖になる「1型糖尿病」は、患者が子供や若者を中心に、幅広い年代に及んでいます。

理化学研究所などのグループが、発症を抑える免疫細胞を特定し、腸内の寄生虫が分泌する「糖」がカギを握ることをマウスを使った実験で突き止めました。

この研究を進め1型糖尿病の新たな予防、治療法の開発につながると期待されています。1型糖尿病は、本来なら異物から身体を守るべき免疫の仕組みが、誤って自分の細胞や組織を攻撃する自己免疫疾患の一種です。

インスリンを分泌する膵臓の「ベータ細胞」が、自分の免疫細胞に破壊されてしまい、食べ物から得られた血中のブドウ糖が細胞に取り込まれずエネルギーに変われないまま、濃度(血糖値)が上がって尿に出てしまいます。

口の渇きや多尿、体重減、意識障害などが症状で、生命の危険が生じます。完治は難しとされ、患者はインスリン注射を打ち続けて血糖値を制御する必要があります。

原因となっているベータ細胞の破壊を抑えるには、どうすればよいのかが大きな研究課題となっています。厚生労働省の研究班が2018年にまとめた資料によると、1型糖尿病患者は全国で推計約10万〜14万人とされています。

マウスを使った実験で、ベータ細胞を破壊する薬剤を投与すると、インスリンが作られず1型糖尿病となります。一方腸管寄生虫の一種に感染させたマウスでは、薬剤を与えてもベータ細胞が破壊されず発症しませんでした。

この寄生虫に感染したマウスでは、免疫を抑制する細胞の一種「CD8陽性制御性T細胞(CD8Tレグ)」が増加していました。ここからCD8Tレグを除去すると1型糖尿病が発症しました。

また寄生虫に感染していないマウスにCD8Tレグを入れると発症が抑えられました。寄生虫に感染したマウスの小腸を調べると、寄生虫が糖の「トレハロース」を分泌しており、これをエサにして腸内細菌の一種が増加していました。

野生の普通のマウスにこの細菌の仲間を与えるとCD8Tレグが増え、ベータ細胞を破壊する薬剤を与えても1型糖尿病になりませんでした。

こうした結果から、寄生虫が分泌するトレハロースをエサとする細菌の働きでCD8Tレグが増え、ベータ細胞の破壊を食い止め、発症を抑制していることが分かりました。またヒトの1型糖尿病患者でもCD8Tレグやこの細菌の仲間が少ないことも明らかにしました。

有害なイメージばかり持たれがちな寄生虫ですが、中には身体を守っているものがあることには驚かされます。

今後寄生虫の出す物質や細菌を構成する物質を突き止めて飲み薬にすることで、1型糖尿病の治療の可能性が出てくると期待されています。