ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

HIVの遺伝子壊す技術開発

2018-06-06 10:45:28 | 健康・医療
神戸大学の研究グループが、人間の遺伝子の中に入り込んだエイズウイルス(HIV)の遺伝子を、ゲノム編集と呼ばれる技術を使って壊すことに成功したと発表しました。

細胞レベルの実験で、すぐにHIV感染者に使うには難しいようですが、今は不可能なHIV感染の完治への応用が期待されています。

一時かなり大きな問題として取り上げられていたエイズ感染ですが、このところとあまり聞いたことがありませんでした。エイズの難しさは、感染しても症状が出る患者はごく僅かで、感染したことに気付かないという点もあるようです。

このウイルスは人間の免疫細胞に感染するため、患者の免疫機構が正常に働かなくなり色々な症状が出たり、本来ウイルスを排除するシステムが壊れますので自力で直すことができないという欠点を持っています。

その為エイズの症状を発症した人は、ほんの氷山の一角であり、隠れた感染者が膨大な数になるであろうと問題になっていたわけです。しかしその後良い治療薬が開発され、複数の強力な治療薬を飲むことでHIVの増殖を抑えることができ、感染者は糖尿病のような慢性病の患者のように普通の生活を送れるようになりました。

それでもHIVが感染した細胞では、遺伝子の中にHIVの遺伝子が入り込んでいて、ウイルス本体そのものが消えてもこの感染細胞は残ってしまうわけです。その為薬を止めるとこの細胞がHIVを再びつくり始めるので、薬を一生飲み続ける必要があります。

研究グループは、「クリスパー/キャス9」というゲノム編集技術で、HIVが増えるのに必須な2種類の遺伝子を壊す道具を作りました。培養皿の中で感染細胞にこの道具を働かせると、HIVの産生をほぼ止めることができました。

ゲノム編集は、狙った遺伝子を壊したり、差し替えたりする技術ですが、たまたま配列の似た無関係な遺伝子に働くまちがいが起きると、細胞がガン化する恐れなどがあります。

今回の研究では、HIVの遺伝子に似た細胞の遺伝子が傷ついたり、細胞自体の生存率が下がったりといった悪影響は見られませんでした。研究グループは、感染者の体内でクリスパー/キャス9のシステムをどうやって感染細胞に送り込むかが今後の課題と話しています。

ゲノム編集という技術は、ターゲットの遺伝子を認識するための短い遺伝子と、これを切断したりするハサミの役割をする酵素から出いていますが、酵素もある程度大きなタンパク質でありこれを生体内で標的の細胞に届ける技術はまだ確立していないようです。

このように生体外で機能するものを如何に生体内で働かせるのかは、まだまだ問題が多いような気がします。