携帯電話業界ブログ

── ケータイ業界関連の記事集.

【覇権争奪 新ケータイ戦争①】 スマートフォン主権争い、海外進出の好機

2010-03-28 | 市場動向/世界



 「モバイル・ファースト(携帯電話が第一)でいく」。

 2月15日から4日間、スペイン・バルセロナで開かれた世界最大の携帯電話見本市「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」。

 米検索大手グーグルのエリック・シュミット最高経営責任者(CEO)は16日の講演で、これからの事業方針を端的に語った。


●IT2強を駆り立てるスマートフォン

 MWCの会場は、1992年のバルセロナ五輪でメーン会場となったモンジュイックの丘の麓。

 そのバルセロナ五輪の6年後、パソコン向け検索サービスで事業を始めたグーグルは2007年、携帯電話向けOS「Android(アンドロイド)」を投入し、携帯電話事業に乗り出した。

 さらに、シュミットCEOは「モバイルを最優先に」と明言し、集まった通信企業幹部らの注目を集めた。

 こうしたグーグルを牽制するかのように、パソコン向けOSで圧倒的なシェアを持つ米マイクロソフトも15日、MWCで携帯電話向けの新OSを公表した。

 ITの“2強”企業を携帯電話事業に駆り立てる背景には、世界中で販売台数を伸ばす「スマートフォン」の存在がある。

 米アップルの「iPhone」に代表されるように音声通話だけでなく、インターネット接続や電子メールなどパソコンに近い機能を持つ携帯電話。

 米調査会社アイサプライの予測によると、世界のスマートフォンの出荷台数は昨年の1億8100万台から13年に4億3900万台まで伸びるといわれる。

 携帯電話メーカーにとってMWCは新製品発表の格好の場。

 しかし、最も目立ったのは韓国のサムスン電子だった。バルセロナの空港からMWCの会場まで、サムスン電子はそこかしこに自社の新型スマートフォンの広告を出した。

 観光名所で120年以上前から建設の進む教会「サグラダ・ファミリア」前も例外ではなく、携帯電話メーカー世界第2位の存在感を見せつけた。

 「ライバルを上回る成長を遂げたい」。サムスン電子幹部は、自信満々に言い放った。


●ガラパゴス化で国際化遅れ

 日本でもブームのスマートフォンだが、欧米とは事情が異なる。スマートフォンの発売前、欧米の携帯電話は、ネット閲覧や電子メールに対応できない製品が大半を占めていた。

 NTTドコモが電子メールのできる「iモード」サービスを始めた10年前の日本のような状況。

 従来の携帯電話でもネット利用が当たり前の日本の場合、スマートフォン人気は画面を直接さわって操作する「タッチパネル機能」といった、見た目の新しさに支えられている。

 生物が独自の進化を遂げたガラパゴス諸島になぞらえ、日本の携帯電話が「ガラパゴス化」と揶揄されて久しい。欧米よりもネット対応が段違いに進んだゆえの「ガラパゴス化」だ。

 たとえば「第3世代(3G)」と呼ばれる高速データ通信規格の導入時期を比べると、日本の平成13年に対し、米国は4年も遅れている。

 皮肉なことに「速すぎる通信速度」は、日本の携帯電話メーカーの国際化の遅れを招いた。国内では主流の携帯端末も、通信環境が対応できないことを理由に、輸出の道を阻まれたのだ。


●日本企業に追い風

 しかし、高速通信の環境整備で火のついたスマートフォンの世界的な人気は、日本国内で培った高付加価値製品が、欧州の通信会社から注目されるようになった。

 MWCの会場で、東芝の山田康博モバイル海外営業統括部長は笑顔で話した。昨年、初のスマートフォン「TG01」を開発した東芝は欧州市場での販売をスタート。

 英、仏、独など7カ国への展開に手応えを感じ始めている。

 NECと日立製作所、カシオ計算機の3社も5月、携帯電話事業を統合し、スマートフォンを柱とする新製品で海外市場に打って出る方針。

 今年の年末以降に実現する「3.9G」という新規格は、これまで世界で複数に分かれた方式を一本化したもの。通信環境に恵まれた日本企業にとって、追い風となる公算は大きい。

 ただ、世界経済の不透明感が払拭しきれない中、「少ない成長分野」である携帯電話市場でトップクラスに躍り出ることは容易ではない。

 野村総合研究所の石綿昌平・上級コンサルタントは、「(サムスン電子のように)広告戦略など日本企業が苦手なことをうまくやる必要がある」と指摘する。

 メード・イン・ジャパンの携帯電話が世界に通用するか、製造業の真価を問う試金石ともなる。携帯電話の誕生から四半世紀。携帯電話市場をめぐる企業間競争は、さらに激しさを増している。





【記事引用】 「フジサンケイビジネスアイ/2010年3月26日(金)」


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