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NTTドコモ、通信障害再発回避へ通信網増強 来月応急処置、抜本策は14年度

2012-01-28 | 市場動向/世界



 NTTドコモは27日、携帯電話の通信障害の再発防止策を発表した。

 同社では、この半年で5度の障害が起きており、設備投資を約500億円上積みして対応する。しかしスマートフォンの普及で爆発的に増えるデータ通信量を、今回の応急処置でさばき切れる保証はない。

 トラブルが続くようだと業界の勢力図にも影響し、スマートフォン普及に水を差す恐れもある。


●再発防止に努める

 ドコモの山田隆持社長は都内で記者会見を開き、「再発防止に向けて信頼回復に努める」と謝罪した。

 26日に総務省から行政指導を受けた同社は、山田社長を本部長とする通信障害の対策本部で詳細な再発防止策をまとめ、3月末までに総務省に提出する。山田社長など役員6人は役員報酬を3カ月間10-20%返上する。

 ドコモは今回の積み増しで、2014年度までの3年間で総額約1640億円を投資することになる。対策は短期と中長期に分かれる。

 2月下旬までに実施きる短期の対策は、①メール情報を扱うサーバーを薪型に切り替える ②設備容量の不足を事前に予想してシステムのダウンを防ぐため、データ量の変化を検知する機能を設備に付加する ③パケット交換機から端末への接続手続きを変更する。

 これらの対策は応急処置と言え、データ量の増大に対応する通信インフラの増強が完了するのは14年度。

 スマートフォンの利用者が5000万人となることを想定し、交換機やサーバーを増設する。スマートフォンのメール送受信サービス「spモード」のシステムも増強する。


●古い設計思想

 ドコモで通信障害が頻発しているのは、同社の通信設備の設計思想が古いからという指摘もある。

 ドコモは在来型携帯電話でソフトバンクなどライバルより格段に優れた通信インフラを持っていた。それ故に、スマートフォンヘの対応に手間取っている部分がある。

 例えば、顧客情報管理システムはiモード向けとスマートフォン向けが併存している。スマートフォンのメール送受信システム「spモード」と独自規格のiモードを併存させるなど、システムが複雑化している。

 また、iモードではアプリを通信事業者側が通信量をコントロールできたが、スマートフォンのアプリは第三者が自由に開発でき、通信を無制限に使うため、想定外のトラブルが至るところに出ている。

 頻発する通信障害は強固なインフラを背景とする通信品質を売り物にしてきたドコモのスマートフォン販売競争にも影響する。ドコモは11年度に前期比約3倍となる850万台を販売する販売目標を掲げている。

 山田社長は販売計画を変更する考えがないことを明らかにしたが、KDDIやソフトバンクモバイルが米アップルのiPhoneでシェアを拡大していることもあり、通信品質の信頼が傷ついたことで利用者獲得競争では苦戦を強いられるのは必至。

 NTTドコモで生じた携帯電話の通信障害を受け、販売店の店頭には消費者からの問い合わせが増えている。都内のある家電量販店では、障害のあった25日から、端末の故障と思った人の来店・相談が相次いだという。

 ドコモ製品の売れ行きには今のところ「影響は感じられない」(ビックカメラ)が、27日に店頭を訪れたドコモの携帯電話利用者は「今後も障害が続くようなら、(他の携帯電話会社との契約を)考えざるを得ない」と話した。

 ある大手携帯販売代理店は「顧客からのクレームはまだ店頭に現れていないが、今後増えるだろう。加入者が多いドコモでいち早く表面化したが、同様の通信障害は他社でも起こりうる」と指摘する。

 スマートフォンの取扱拡大で販売店の接客負担は増しており、「通信障害の対応に追われるのはたまらない」と改善を望む声も上がる。


●深刻な課題

 スマートフォンの普及で通信インフラの負荷が高まる中、米国ではAT&Tやベライゾン・ワイヤレスなど携帯電話大手が、パケット通信の定額制を廃止して従量制に切り替えた。負荷増大の主因であるヘビーユーザーの利用を抑制する戦略だ。

 大手3社が激しいシェア争いを展開する日本は、利用者減につなる従量制に踏み切る動きは今のところ出ていない。

 しかし、日本でも昨年から欧米に遅れてスマートフォンの普及が本格化。世界最高水準とされるドコモの携帯電話網でさえ、いよいよスマートフォンに耐えられなくなったとの見方が一般的。

 今後ますます拍車がかかる通信量増大を抑制しながら、障害をどう回避していくか。携帯各社は深刻な課題を突きつけられている。




【記事引用】 「日本経済新聞/2012年1月28日(土)/3面」


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