米マイクロソフトがスマートフォン市場への取り組みを加速している。
2月に携帯電話機最大手のノキアと提携する一方、今月はインターネット通話大手スカイプ・テクノロジーズ(ルクセンブルク)の買収を決めた。
アップルやグーグルに対する劣勢をいかに巻き返すのか。スティーブ・バルマー最高経営責任者(CEO)に聞いた。
--ウィンドウズ基本ソフト(OS)はスマートフォン市場で劣勢だ。
「(携帯端末用新OSの)『ウィンドウズウォン7』の市場投入が昨秋にズレ込んだ痛手が大きい。1年半前には出しておきたかった。だが技術の潮流は高速で変わる。技術革新によって主流の地位を奪うチャンスはまだいくらでもある」
「アップルがiPhoneで成功した大きな要因の1つは、彼らがソフトとハードの技術を両方持っていて、それらをうまく組み合わせたことだ。ノキアと組んだのは我々のソフト技術とノキアのハード技術を連携させれば競争力の高い最終製品を作ると考えたからだ」
――グーグルのアンドロイドやiPhoneに対しウィンドウズフォンは何を武器に戦うのか。
「類似性の高い両陣営とは全く別の利便性を提供する。人々の仕事や生活を直接助ける道具にする。たとえば、端末に『どこどこの日本食レストランを予約できないかな』と言えば、電話をかけ始める。『ANA2便の搭乗券を印刷』と言えば、部屋のプリンターに印刷させるという具合だ」
「カギはグーグル的な検索とは全く違う角度から言葉の意味をとらえ、反応する新種の検索エンジンになる。グーグルは、名詞中心主義で検索結果はウェブページヘのリンクだ。我々は自然言語、中でも動詞に着目し、それに対する回答も単なるリンクの羅列でなく端末の動作にまで踏み込む。もちろんスカイプの技術もウィンドウズフォンに組み込んでいく」
――ノキアは業務提携なのにスカイプは85億ドルもつぎ込む企業買収だ。
「我々にないノウハウや技術を持っている企業に我々の経営資源をつぎ込むことでその企業の事業や我々自身の競争力の向上につながる場合、買収の方が効果的だ。」
「スカイプのサービスは素晴らしく、1億7000万人の利用者基盤もすでに巨大だが、より利便性の高いサービスに変革して事業収益を拡大するには我々の経営資源の投入が有効だ。否定的な声も耳にするが買収を決めた後、日を追うごとに良い決断をしたとの確信を深めている」
【記事引用】 「日本経済新聞/2011年5月29日(日)/7面」