NTTドコモに続いてKDDI(au)でも頻発する通信障害。一連の障害の原因はバラバラだが、いまや携帯電話は社会の重要インフラとなっただけに深刻な状況。
15日には監督官庁の総務省もたまらず、KDDIに行政指導した。このままでは通信に対する信頼性が失墜しかねず、業界を挙げた対策が急務となっている。
●3月末までに再発防止策
総務省は15日午前、KDDIの両角寛文副社長を呼び、3月30日までに再発防止策などを提出するよう同社に行政指導した。
KDDIは、昨年4月から今年の2月にかけて計5回、スマートフォンのデータ通信が利用しにくいといった通信障害を起こした。うち3件は1月以降、相次いで起きた。
KDDIの一連の通信障害の原因は、多くが設備故障。1月25日に携帯電話と固定回線で生じた障害では、中継装置の基盤に障害が発生。予備設備は用意してあったが、自動切り替えが正常に機能しなかった。
今月11日のメール障害では、設備点検で1系統で運用している際に障害が起きた。不運な面もあるが、結果的には予備設備があっても障害が起きてしまったわけでお粗末な印象が拭えない。
KDDIは14日、一連の通信障害を受け、田中孝司社長を委員長とする調査委員会を設置した。
嶋谷吉治専務を副委員長に据え、技術部門が総力を挙げて設備の再点検と開発・設計・運用保守の体制の見直しなどに取り組む。その結果を3月末までに総務省に報告する予定。
●通信料増大も課題
通信業界では、スマートフォンによる通信量増大という課題も抱えている。従来型携帯電話の10-20倍とデータ通信量が多いスマートフォンの普及率はまだ2割程度。
3年後には5割を超えるのが確実とされ、爆発する通信量をどう収容していくかで各社が頭を悩ます。
ドコモで多発した通信障害も、主にスマートフォン急増に伴う設備能力不足が原因だった。最近は大規模な通信障害が少ないソフトバンクモバイルの孫正義社長も「人ごとではなく業界共通の悩み」と危機感を示す。
通信各社は通信混雑時に総量を規制する仕組みがあるため、スマートフォン急増ですぐに設備が停止するわけではない。ただ、通信がなかなかつながらない状態が続き、やはり顧客の信用を失うことになりかねない。
川端達夫総務相は14日の定例会見で「メールを含む携帯電話、スマートフォンは社会の重要インフラ。電力に例えれば停電と同じだから極めて深刻な状態」と苦言を呈した。
設備の増強や人材の育成はもちろん、ノウハウを各社で融通し合うなど信頼回復に向けて業界を挙げた対策が待ったなしの状況。
【記事引用】 「日本経済新聞/2012年2月16日(木)/9面」