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KDDI、コンテンツ会社と矢継ぎ早の提携 コンテンツ・サービスで差異化進める

2011-08-22 |  KDDI



 「『ウィンドウズフォン7.5』を標準搭載した端末を発売するのは、世界で初めて」。KDDI(au)幹部はスマートフォン分野での奇襲作戦の成果にこう胸を張る。

 米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」を前面に打ち出し、米人気アーティストのレディー・ガガや、人気グループの「嵐」を起用した派手なCMを展開していたKDDI。

 その裏で、ウィンドウズフォンの提供に向けた仕込みを進めていた。


●成功体験があだ

 米マイクロソフトが巻き返しを狙って開発していたOS最新版が今年登場することを踏まえ、ウィンドウズ端末の開発に実績がある富士通東芝モバイルコミュニケーションズに打診。

 有望端末をライバルに先行して市場投入することで、新規顧客の獲得手段を確保した。様子見を決め込んでいたNTTドコモは不意を突かれ、7月27日のKDDIの発表会翌日にマイクロソフト幹部を呼びつけたという。

 2003-06年度には契約者の純増数で1位を記録するなど、携帯電話文化をリードしたKDDI。パケット定額制を他社に先駆けて導入。音楽配信サービスとの組み合わせで若者を中心に人気を集めた。

 だが、この成功体験があだとなり、米アップルのiPhoneの登場などで海外でスマートフォン人気に火がつき始めた時に「日本人向けに使い勝手を高めたものでなければ売れない」と判断。

 スマートフォン革命の到来を読み誤ったことで、純増数は3位以下が指定席になってしまった。

 ソフトバンクがiPhoneで攻勢。ドコモもソニー・エリクソン製の「エクスペリア」や韓国サムスン電子製の「ギャラクシーS」などの海外有力メーカーの人気端末を次々と投入したのに対し、KDDIが「おサイフケータイ」など日本仕様に合わせたスマートフォンを本格販売したのは昨秋。

 品ぞろえで明らかに劣っていたKDDIが打ち出した苦肉の策が「アンドロイドと言えばau」というイメージ作戦だった。「何でもいいから、とにかくたくさん発表しろ」。社内ではこんな号令も飛び交う。


●話題作りに必死

 象徴するのが5月開催の夏商戦向け端末発表会。

 米交流サイト(SNS)大手フェイスブックとの提携をはじめ、毎月定額で洋楽が聞き放題の音楽配信、公衆無線LANの開始など報道発表は1日で計13件に及んだ。

 重要な発表が埋もれてしまった感もあるが、巻き返しに向けた話題作りに必死。

 4月に高速無線「WiMAX(ワイマックス)」に対応した端末を発売、6月にはかつてどん底だったauを救った伝説を持つ戦略端末「INFOBAR」のスマホ版も投入。

 ソニー・エリクソンなどの有力メーカーの端末も販売できるようになるなど、ようやく品ぞろえでは他社に対抗できる体制が整ってきた。

 品ぞろえに続く反攻策がコンテンツ分野。スマホ端末自体は見た目や機能、使い勝手がどれも似たり寄ったり。

 端末メーカーも量産効果を高めるために通信各社に似た端末を供給する動きが広がっており、コンテンツやサービスが顧客獲得のための差異化のカギになると判断した。

 まずはSNS事業者などとの提携戦略を加速。SNSが使いやすい専用ソフトを他社に先駆けて提供するなど、端末の利便性を向上させた。

 4月には米ベンチャー投資ファンドに約20億円を出資、8月からはベンチャー支援プログラム「KDDIムゲンラボ」を始めるなど、将来の有望サービスの早期取り込みにも力を入れている。

 携帯各社の夏商戦向け端末が出そろった7月。KDDIは純増数でソフトバンクモバイルとドコモに次ぐ3位にとどまったが、田中孝司社長は「スマホ販売は想定より上振れしており手応えを感じている」と自信を見せる。

 「auのモメンタム回復」を11年度目標に掲げる同社だが、どこまで勢いを回復できるか真の実力を問われる1年となりそうだ。




【記事引用】 「日経産業新聞/2011年8月22日(月)/1面」


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