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野口和彦(県女)のブログへようこそ

研究や教育等の記事を書いています。掲載内容は個人的見解であり、群馬県立女子大学の立場や意見を代表するものではありません。

2013年度ゼミ生紹介

2013年04月24日 | ゼミナール
東海大学教養学部国際学科では、3年次に「専門ゼミナール」を開講しています。本年度、私の専門ゼミは、9名の新しい学生を迎えました。では、それぞれの学生にゼミの抱負を語ってもらいましょう。

大野彩華さん:本を読む習慣が今までなかったので、月に1冊、シッカリ読もうと思います。
小此木颯くん:本を読んで知識を増やしたいです。
山越栞里さん:多くの本を読んで、自分の知識や考えの幅を広げたいです。
宮本涼平くん:自分の意見・考えをまとめ、ハッキリと相手に伝えられるようにしたい。
西野哲平くん:海外からの視点でも国際問題を考え、理解を広げていきたい。
久慈星子さん:本を読む習慣をつける。物事に疑ってかかって真実を見つける力をつけたい。
船水浩伊くん:たくさん本を読んで考える力と知識を身につけたい。
荻沼有紗さん:このゼミを終える頃には、読解と速読に力がついたことを実感できるように頑張りたい。
谷之口咲紀さん:自分の意見をキチンと言えるようにする。本を読んでたくさんの知識をつける。

私は、ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』には、著者の豊富な知識と綿密な調査に圧倒され、知的興奮を抑えることはできませんでした。マックス・ヴェーバー『職業としての政治』は、古典的名著にふさわしく、読めば読むほど「味」がでる奥深い内容のものであり(同書を何度繰り返して読んだことでしょう!)、著者の圧倒的な迫力が、初版から100年近くたった今でも、生々しく伝わってきます。



ゼミ生たちには、質の高い学術書あるいはノンフィクションを読んで、次のページを読まずにはいられなくような経験をしてほしいと思います。同時に、生涯に残るような知的刺激、知的好奇心を満たすような満足感を読書から得てほしいというのが、私のゼミ生への願いです。


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2011年度の野口ゼミ卒業論文

2012年01月19日 | ゼミナール
本年度の4年次ゼミ生たちの卒業論文がようやく出そろいましたので、それらを紹介したいと思います。執筆者とタイトルは以下の通りです。

高林貴将「地雷問題とNGO―カンボジアを事例にして―」
大瀧惇子「万人に共通する正義とは何か―キリスト教とイスラム教の対立を事例にして―」
尾崎未希「環境破壊防止からなる平和への道」
曽根春寿「自衛隊の海外派遣に関する恒久法制定についての考察」
平野翔子「スポーツの経済効果と発展途上国の援助」
長谷川順也「自動車産業の転換と環境保全―環境意識によって転換を迫られた自動車産業の今後―」
日佑亮「日韓文化交流と政府政策」
金澤俊介「竹島問題と日韓の教育、領土政策」
渡邉もえみ「ジェンダー問題緩和に向けて―雇用の視点から―」
中村沙南「子ども兵増加の複合原因―地域からのアプローチ―」
松野沙貴「平和な社会構築の為の文化交流の役割」
永易実紗「人道的介入は真の紛争解決方法なのか」

学生たちは、自らの関心に基づき、さまざまなテーマで卒業論文を執筆しました。ゼミ生たちは、不慣れな論文を執筆するのに四苦八苦したことでしょうが、それなりの達成感も味わったはずです。他方、指導する私はといえば、学生との知的格闘でヘトヘトになりました(苦笑)。12人のゼミ生に対して、提出された草稿を読んで朱を入れて(あるいは、ワードの校閲機能をつかってコメントして)返却することを何度も繰り返えすと、さすがに疲れます。とはいえ、私も学部・大学院時代に、恩師の先生に同じように添削を通じて鍛えてもらったのですから、今度は、それを大学教師として学生に行うのは、当然のことでしょう。

ここでは12本の卒業論文の中から、高林論文と大瀧論文を簡単に紹介することにします。

高林論文は、「悪魔の兵器」地雷が引き起こす問題を解決する上で、いかにNGOが重要な役割を果たしているかを論証した力作です。同論文は、「地雷の博物館」と呼ばわるカンボジアを事例にして、NGOが地雷被害者に対する包括的ケアを実行していることを豊富なデータを使って明らかにしています。

大瀧論文は、国際社会における正義とは何か、という難解な哲学的問題に正面から取り組んだものです。同論文は、日本でブレイクしたマイケル・サンデルの正義論を批判的に検討した上で、人権こそが人類の共有の正義であると主張しています。そして、国際社会に共通する正義としての人権概念の構築は、ユルゲン・ハーバーマスのコミュニケーション行為を通じて実現可能であるという結論を、キリスト教徒とイスラム教徒の対話の事例から導き出しています。

両論文は、それぞれ異なるテーマに取り組んでいますが、共通して優れたところがあります。それは、先行研究を吟味した上で、新しいアイディアをだそうとしていることです。もちろん、学部生の書いた論文ですので、先行研究の調査は「あまい」です。しかしながら、先行研究にきちんとあたり、その問題点を明らかにして、それを克服しようとした姿勢は評価できると思います。学部の卒論で、こうした社会科学の基礎的な手続きを行うことは、意外とできないものです。

そのほかの卒業論文も、キチンとリサーチクエスチョンを立て、各種資料を調べて、それに対する答えを実証的に導いています。ゼミナールの指導教員としては、卒業論文の執筆による「批判的思考」のトレーニングが、ゼミ生の将来に活きてくれることを願うばかりです。

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インカレ国際セミナー

2011年12月10日 | ゼミナール
「インカレ国際セミナー」(主催:かながわ国際交流財団)をご存知でしょうか?http://www.k-i-a.or.jp/shonan/?p=1357 これは、主に首都圏の大学生が集まって、合宿形式でアジアの諸問題を話し合う、大学横断的セミナーです。今年の全体テーマは「東アジア共通の家―市民社会と連帯―」で、私は分科会「アジアの平和と安全」の講師として参加しています。もちろん、セミナー講師は私だけではなく、首都圏の主要大学の先生方も参加しています。

このセミナーでは、さまざまな大学の学生たちが、分科会テーマについて、自由闊達に意見を交換して、最終的な政策提言をまとめます。同時に、各界の専門家をお招きしての講演も実施しています。今年は、王敏氏(法政大学国際日本学研究所教授)の「東アジアにおける若者の意識変化と不変」、片山信彦氏(ワールド・ビジョン・ジャパン)の「東日本大震災とNGO」、下平拓也氏(海上自衛隊幹部学校第2教官室長)の「東日本大震災における日米共同作戦」を行いました(この時の様子は、海上自衛隊幹部学校のウェッブサイトに掲載されています http://www.mod.go.jp/msdf/navcol/SSG/news/2011/1210.html )。

聴講した参加者たちは、熱心に講演に聞き入るとともに、講師を質問攻めにしていました。大学の授業でよくありがちな、「何か質問はありますか」との教員の質問に「しーん」としてしまうといことは、全くありません。こうした学生たちの積極性は頼もしい限りです。

私は、このセミナーの意義は、主に2つあると思います。1つは、学生たちが、他大学の学生との知的交流を通して、刺激を受けることです。さまざまな大学に所属する学生との2泊3日の密度の濃い討論は、きっと学生たちの財産になるでしょう。これと部分的に関連しますが、第2に、他大学の先生の指導を受けられることも、このセミナーのメリットです。たとえば、分科会「アジアの平和と安全」は、私と黒川修二先生(東京女子大学現代教養学部教授)の2名で運営していますので、これに参加した学生たちは、少なくとも分科会で私と黒川先生と意見交換できますし、もちろん、他の分科会の先生方と話すこともできます。

ご参考までに、分科会「アジアの平和と安全」の参加者は17名で、参加大学の内訳は、東海大学2名、一橋大学2名、青山学院大学2名、東京女子大学3名、中央大学2名、法政大学5名、昭和女子大学1名です。寂しいことに、東海大学からの参加者2人は法学科(4年)と北欧学科の学生(2年)で、私の所属学科である国際学科からの参加はありませんでした(他の分科会には、1名のゼミ生が参加しました。Uさん、ありがとう!)。もっとも、私の専門ゼミ生(3年)の名誉のために一言申し上げれば、実は、何名かは参加予定だったのですが、12月1日から就職活動が実質的にスタートし、企業説明会がセミナーの日程と重なってしまったため、それに参加するためにキャンセルせざるを得なかったということです。

インカレ国際セミナー参加者は、アジアの諸問題に対する知見を深め、セミナーの仲間たちとのネットワークを築いてほしいと思います。


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学生の就職活動と大学の役割

2011年12月09日 | ゼミナール
グローバル化や社会情勢の激変は、大学教員の役割に大きな変化をもたらしました。とりわけ21世紀に入り、大学教員の仕事としては、学生に対する「就職指導」や「キャリア支援」が強調されるようになりました。確かに、大半の大学生は、卒業後、就職しますので、いわゆる「出口」対策を大学および教員が行うことは、当然と言えば当然なのでしょう。ということで、私も「就活」関連の本を少しずつ読みながら、現状分析と指導方法を勉強しています。

同時に、われわれはプロのキャリア・カウンセラーではないことも自覚しなければなりません。ここに大学の現場における教員の葛藤があるように思います。すなわち、就活の「素人」である学者が、就職指導を行わなければならないというジレンマです。このことについて、法政大学キャリアデザイン学部の児美川孝一郎氏は、素直な心情をこう吐露しています。

「彼ら(大学生)の進路の問題に関して、『指導者』や『アドバイザー』としての立ち位置をとることは、現在の僕にはもはら無理そうなのです。…結局、僕にできることは、学生たちより長い人生経験を積んできた大人として、彼らが想定している選択肢のひとつひとつについて、それぞれのメリットとデメリットを一緒に考えてみるとか、『やりたいこと』の追求方法についてだけではなく、そのリスクについても目配りを促すといったことになります」(児美川孝一郎『若者はなぜ「就職」できなくなったのか』日本図書センター、2011年、9ページ)。

思えば、私が大学3年生の時に研究者になることを決意して大学院進学を志した時、その旨をゼミの先生に話したところ、先生は切々とこの進路のリスクを説いてくれました。幸い、私は諸先生方の温かなご指導のおかげで、運よく、現在の大学に就職することができましたが、それまでは短くない「高学歴ワーキングプアー」時期を過ごしました。「これが一生続くかもしれない」と思ったことも度々でした。こうした逆境に対する心構えは、リスクに対する覚悟の「ある」・「なし」で大きく変わることでしょう。

学生は、だれもが自分の希望する企業に入りたいと思うでしょう(もちろん、企業への就職が大卒後の進路のすべてではありませんが)。では、これを実現するには、どうしたらよいでしょうか?企業人セミナー等を幅広く手掛ける平野稔氏は、その答えとして「基礎人間力」を挙げています。そして、この「基礎人間力」の大切さを次のように説明しています。

「人は相手の風貌や印象、所作を立ち居振舞いを見ただけで、その人間の気質・性格・能力やパワー、ポテンシャルを大枠でつかみとる。就職試験の面接も例外ではない。…人は自分の直観をかなりの部分、判断の基準や条件にしているのだ。その直観に作用する力が『基礎人間力』である。試験の一夜漬け勉強があまり効果がないのと同様、就活マニュアル本でテクニックだけを学んでも、成功への道は遠い」(『あなたが就職試験に受からない理由』祥伝社、2011年、49ページ)。

手厳しい指摘ですが、ここには、長年にわたり、社会の第一線で活躍してきた著者の本音がストレートに表現されており、一面の真理が示されているように思います。では、この「基礎人間力」は、どのようにして養ったらよいでしょうか?この力を培う上で、大学が果たすべき役割は何でしょうか?前者について、平野氏は、その1つの方法として、小説を読むことを挙げています。古典などの読書の大切さは、以前でもブログで指摘しましたが、やはり読書は大切だということでしょう。だからこそ、私は大学では、学生に読書を授業などの機会を通して課すべきだと考え、ゼミ生には「(良質の)本を読むこと」を強く勧めています。堅苦しく大胆に言えば、大学にできることは、「読書(できれば古典)を通じた教養教育」による学生の「基礎人間力」の部分的な育成なのかもしれません。皆さんは、どう思いますか?

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卒業論文の指南書

2011年11月29日 | ゼミナール
私のゼミ生だけでなく、多くの大学4年生は、今、卒業論文の作成に四苦八苦しているのではないでしょうか?そうした学生のために、今日は、卒業論文執筆に役立つ、良質の指南書を紹介したいと思います。

・小笠原喜康『新版 大学生のためのレポート・論文術』講談社(新書)、2009年。¥720
 これは、大学生向け、レポート・論文執筆「マニュアル」の定番といってよいでしょう。「よい論文かどうかは、題名と最初の三~五行を読めばわかる」(171ページ)。全くその通りです。ゼミ生の皆さん、最初が肝心です。



・伊藤修一郎『政策リサーチ入門』東京大学出版会、2011年。¥2800
 本書は、以前にブログでも紹介しました。私は現在、3年生のゼミ指導に使っており、手ごたえを感じています。「何を知りたいのかを決めてはじめて、その答えを探求する作業が始まるのです」(13ページ)。私の印象では、学部生の卒論の多くは、事実の寄せ集めになってしまい、筆者が何を主張したいのか、明らかにしていません。こうした卒論の執筆者は、おそらく最初からつまずいているということでしょう。



・川剛『社会科学系のための「優秀論文」作成術』勁草書房、2010年。¥1900
 学部生にとっては、やや高度な内容ですが、良い論文を書きたいと思ったら、ぜひ、本書を読むべきです。「査読論文も学術論文も、さらには卒業論文もみな学術論文であることには変わりはない。違いはプロの作品か習作かの差だけである」(159ページ)この意識を学部生にも持ってもらいたいと思います。なぜなら、卒業論文は学士論文なのですから。



・スティーヴン・ヴァン・エヴェラ(野口和彦・渡辺紫乃訳)『政治学のリサーチ・メソッド』勁草書房、2009年。\1900
 この本は、社会科学の方法論を扱っていますので、学部生にとっては、さらに高度な内容ですが、卒論の参考になる部分が多くあります。「ミスのない整った論文を提出するように気をつけること。誤字脱字がないようにしなさい。いいかげんに見える論文はいいかげんな気持ちの表れである」(130ページ)。この一文を読んで、ドキッとする学生も多いことでしょう。このことは卒論に限らず、書類作成のマナーですね。



せっかく時間と労力を使って卒業論文を書くのであれば、よいものを書きましょう。そのためには、効果的かつ効率的な方法で執筆を進めることです。そのノウハウが、これらの指南書には詰まっています。学生が、これらの中から1冊でもキチンと読んだ上で卒業論文に取り組んでくれたら、どんなに卒業論文研究の指導がやりやすく実りあるものになるか…。指導する立場の者としての正直な気持ちです。

みなさん、これらの良書を卒論執筆にぜひ積極的に活用して下さい。


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