アルバからすぐ北側のタナロ川(ポー川の支流)を渡り、左岸側を通る幹線道(SS231号)で、17キロメートル西にある「ブラ(Bra)」にやってきた。アルバと同じ、ピエモンテ州のクーネオ県の基礎自治体で、アルバの次に人口が多い3万人弱である。ターナロ川左岸に位置することからロエロ地区となる。幹線道はブラの南側を東西に走っており、目的のリストランテ、ボッコンディヴィーノ(Osteria Boccondivino)は、400メートルほど北に行った町の中心部にある。繁忙期ではないためか町は閑散としている。
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店舗前には、店名看板とイタリア国旗がはためき、入口の柱には、スローフードと書かれた看板が掲げられている。スローフードは、拡大を続けるファストフード文化に対して、その土地の伝統的な食文化や食材を見直すことなどを目的にし、1986年にイタリアのカルロ ペトリーニにより提唱された国際的な社会運動で、現在ではイタリア国内で4万人、世界各国に8万人以上の会員を有する国際組織(協会)となっている。なお、シンボルマークのカタツムリは、思慮深い、ゆっくりの意味である。
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正面のアーチをくぐると中庭になっている。1階には、スローフード協会本部の事務所があり、ボッコンディヴィーノは正面の階段を上った2階にある。
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ワインは、グラス ワインメニューから注文することにした。メニューには、地元産の14種類があり、カナーレ産、カステッリナルド産、ディアーノ ダルバ産などのワインを注文した。ちなみに一番価格が高いワインが、バローロ ロッチェ(Rocche、05)で6ユーロ。次にバルバレスコ マルカリーニ(Marcarini 06)で5.5ユーロ。他は2.5ユーロから4ユーロ程度とかなり良心的な価格設定である。
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ランチ メニューには、アンティパスト、プリモピアットなどの標記はなかったが、アンティパスト8種、プリモ4種、セコンド6種、チーズ1種、コントローリ3種が、順番に書かれていた。料理には、お店のお勧めマークがあり、そのお勧めの一つ、ピエモンテの伝統料理の3点盛り「ラルド、サルシッチャ ディ ブラ、カルネ クルーダ」(Lardo,salsiccia di Bra e carne cruda、8.50ユーロ)を注文する。一目で鮮度が高いと感じる色合いで、実際に食べてみると上質のマグロのようである。さすがにスローフード協会のおひざ元のリストランテといったところ。
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付け合わせ(コントローリ)は、シンプルな「ミックスサラダ」(Insalata Mista、4ユーロ)にした。バルサミコ酢をたっぷりかけて頂く。こちらも収穫したてといった感じで、大変みずみずしい。
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「ズッキーニとトマトのニョッキ」(Gnocchi di patate con zucchini e pomodoro fresco、8.5ユーロ)。ジャガイモ ニョッキは思ったより柔らかく、新鮮で酸味のあるトマトとの相性が素晴らしい。
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こちらは、お馴染みのピエモンテの伝統料理「アニョロッティ デル プリン」(Agnolotti del plin al burro e rosmarino、9ユーロ)。詰め物はやや小ぶりで思ったより柔らかいので食べやすい。ローズマリーの香りの強いが、かえって食欲が増す。
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最後に「パンナコッタ」(5ユーロ)と「カフェ」(1ユーロ)をいただいて食事を終えた。
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セコンド ピアットでは、お勧めとして、仔牛肉のツナソース(8.5ユーロ)、カルマニョーラ産ウサギのトンノ、バルサミコ添え(8.5ユーロ)、仔牛肉の煮込みシチュー(12.5ユーロ)などがあったが注文しなかった。実は、今夜こそ、昨夜行けなかったリストランテに行くことにしているため、昼は軽めにしておいた。結果、お腹には余裕もあり正解だったが、どの料理も美味しかったので少し心残りとなった。
次にクーネオ県バローロに向かった。バローロの名称は、最高級のイタリアワインの一つとして世界的に知られている。タナロ川を渡り右岸沿いを走るSP7号線で、アルバ方面に戻り途中からSP3号線(アルバ通り)に乗り換え南下する。ブラから30分ほどでバローロ村の北側にあるコルベルト広場に到着する。
コルベルト広場の正面にある狭い石階段を上ると、ムニチピオ広場に到着する。広場の北側に面した建物の裏には、三角形の敷地の展望台があり、左前方(北東方向でアルバ方面)にランゲの丘陵地の稜線が望める。手前の中程には「サン ドナート教会」の鐘楼、右側に、バローロ城の胸壁のある塔が聳えている。ワインで有名なバローロだが、人口は700人足らずと少なく、集落はバローロ城を中心に丘の上に広がっている。
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再びムニチピオ広場に戻り、東方向へ延びる起伏のあるローマ通りを進むと、正面に「バローロ城」(正式にはファレッティ城という)が見えてくる。お城はもともと小さな丘にあった要塞を利用して建設したもので、下部には、石を幾層にも積み重ねて築かれた要塞の名残りがある。城には三層のアーチ窓があり、その屋上南側には胸壁が備え付けられているが、西側にはなく、小さな窓が並んでいる。屋上には胸壁のある小円塔と、大きな塔が建っている。
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バローロ城へ向かうルートには、他に、麓となる北側から直接、城の周囲に沿って延びる細い通路を利用することもできる。そちらは、近道にはなるものの、かなり急勾配の坂道となっている。
バローロ城を建設したのは、1250年に当地を引き継いだファレッティ家である。ただし、現在のバローロ城は、16世紀に戦争で大きな被害を受けた後に再建したものとされている。ファレッティ家とは、12世紀初頭にアスティ、アルバなど、ピエモンテの都市を起点に、金融及び商業の分野で富を築いた貴族の系統で、ジェノヴァ、チュニス、アヴィニョンなどに金融事業を拡大し財を成し遂げている。そして1730年には侯爵となっている。
胸壁のある南側の2階と3階の二連のアーチ窓の上部には、歴代の侯爵の浮彫があり、コーニス下の面取りには、ファレッティ家の紋章が飾られている。
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城への入口は、南側の外壁を回り込んだ北側にある。城内は「エノテカ レジョナーレ」(バローロ州立ワイン展示館)になっており、ワインの製造工程の紹介やバローロ ワインに関する展示がされている。こちらの部屋の壁面には、ブドウ畑とバローロ ワインボトルを背景に、科学者風の男性が顕微鏡を覗いたり、書類に目を通したり、ワイン醸造に関する研究場面を思わせる一場面を劇画タッチで描いたパネルが展示されている。
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パネルは大きく、視線を移すと、トーガを脱ぎ、裸でワインを飲むローマ人風の男女や、その姿を眺める骸骨などが描かれた場面もある。他にも、キリストをワイン圧搾機に乗せ、流れ出る血をワイン樽に注ぎ込むシュールな場面などもあるが、あまり相応しいと思えない展示だった。
こちらには正方形のフローリングの部屋がある。周囲の壁には伝統衣装を身に着けた人物パネルが数多く飾られ、事務机と椅子だけがポツンと、すみに置かれただけで、何のための部屋なのか分からないが、窓からの眺めは素晴らしく、時折吹き込む風が心地よい。
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こちらには、多くのバローロ ワインが展示されている。そして有料で試飲もできるコーナーもある。現在、“ バローロ ” と表示することができるワインは、DOCGに指定され、ランゲ丘陵周辺の11の地域となっている。中でも有名な生産地域は、お膝元のバローロ (Barolo)地域を始め、北側のラ モッラ(La Morra)、北東側のカスティリオーネ ファッレット(Castiglione Falletto)、東側のセッラルンガ ダルバ(Serralunga d’Alba)、南東側のモンフォルテ ダルバ(Monforte d’Alba)の5か所とされている(バローロ ワインの主な生産地域図)。
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バローロ ワインが、長期熟成の辛口赤ワインとなったのは、1807年、バローロ侯カルロ タンクレーディ ファレッティに嫁いだ、ジュリエット コルベール(太陽王ルイ14世の宰相コルベールのひ孫にあたる)が、バローロの土地と気候が、高品質のワインを生み出すことができると確信し探求を続けたことが始まりである。彼女は1864年に亡くなりファレッティ家は断絶してしまうものの、彼女の意思を受け継いだ後継者たちにより、バローロは「王のワイン」としての地位を築いていく。壁には1871年の古いバローロ ワインのラベルなどが展示されている。
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高い名声を築いたバローロ ワインは、1970年代には、消費者の嗜好の変化などにより、長期熟成の伝統的なスタイルが流行遅れとなっていく。しかし、1980年代には、バローロ ボーイズと呼ばれた若手生産者により、従来の大樽から小樽による熟成方法の変更、熟成期間の3年から1年への短縮など、果実実あふれるニュースタイルのバローロが次々と開発される。こちらにはそんな過渡期の1983年のラ モッラ産バローロ ワインが飾られている。
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4階には展望テラスに出られるアーチ門がある。テラスから南側を振り返ると、丸瓦が敷き詰められた切妻屋根の中程に2つの塔が伸びている。煙突の様にも見えるが、胸壁があることから、防衛上の櫓(側防塔)だったと思われる。
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そして、展望テラスからは、東、北、西側3方向の眺望を見渡せる。周囲には、大人の腰あたりの高さの手すりと、その先に煉瓦が積み重ねられた胸壁が設けられている。
テラス北側真下には、城への正面入口前の小さな広場があり、その向かい側(北東側)に「サン ドナート教会」が建っている。そして、その教会の鐘楼の後方には、300メートルから400メートルの高低差の丘一面に、バローロ生産地域のぶどう畑が大波のうねりのように続いているのが確認できる。見渡すばかりに、ぶどう畑は続き、北東方向となる右後方はカスティリオーネ ファッレット生産地域となり、その先がアルバになる。
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やや左側に視線を移すと、同じくバローロ生産地域のぶどう畑の斜面が広がっている。そして、その先となる北側の4キロメートルほど先の丘の上の街並みが、人口約2,700人の基礎自治体(コムーネ)「ラ モッラ」で、標高500メートルほどに位置している。ラ モッラは、バローロ生産地域では最大面積を誇っており、標高差のある畑から様々なタイプのワインが生み出されるが、ミネラルをたっぷり含んだ石灰土壌であることから、一般的には、エレガントなスタイルのバローロが産まれるとのこと。
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次に、アルバ方面に6キロメートルほど戻り、カスティリオーネ ファッレットを過ぎたグリンツァーネ カブールに向かった。ここには、ガリバルディ、マッツィーニと並ぶ「イタリア統一の三傑」と称される、カミッロ カヴール伯爵の城(Castello di Grinzane Cavour)がある。
駐車場は、なだらかな坂を上った右側にある。その駐車場には眺めの良い見晴らし台があり、起伏のあるぶどう畑の丘を見渡せる。車道から東方向に分岐し上っていく歩行者専用の直進の石畳道を進むと、左前方の丘の上に「カミッロ カヴール伯爵城」が現れる。
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カヴールとは、1852年、サルデーニャ王国の最後の国王ヴィットーリオ エマヌエーレ2世に首相に選ばれ、国王と共にイタリア統一戦争に終止符を打ち、リソルジメント(イタリア統一運動)を成し遂げた人物。その後は、オーストリアやフランスなど大国からの干渉という難題を抱えながらも、卓越した外交術を駆使してイタリア統一を完成させる。こちらはカヴールの石膏肖像で、城内の展示室に飾られている。
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カヴールは政治的評価だけでなく、ワイン醸造にも貢献し今のバローロ ワインの礎を築いた人物である。19世紀初頭、ピエモンテの農地は、ナポレオンのイタリア侵略で荒廃していたが、この時期、フランス人のワイン醸造専門家ルイ ウダール(Lois Oudart)にワイン醸造について調査・研究を依頼している。
この結果、ネッビオーロ種の潜在力が引き出され、1850年代にはネッビオーロ種100%の辛口ワイン「バローロ」の生産に成功する。そして、瞬く間に「ワインの王様」の称号を獲得している。こちらのスクリーンではそのカヴールの功績が紹介がされている。
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このカブール城は、初期のバローロ研究の中心地でもあったことから、城内には、カヴールの遺品や、ワイン研究に関する資料、写真などが多数展示されている。
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部屋の中央には、大型のワイン圧搾機が飾られている。中央には樽が置かれ、左端の大きなねじを回すことで、太い横柱に圧力を加え、樽内のブドウを搾る仕組みになっている。他にも、様々な形の絞り樽や、収穫に使用された道具類などが展示されている。
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城内には、エノテカ レジョナーレ(州立ワイン展示館)があり、ワインの試飲や販売がされている。隣にはピエモンテ料理とワインを堪能できるリストランテも併設されている。
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そのリストランテの入口を入ってすぐのテーブル席には、見晴らしの良い大きなアーチ門があるので、コーヒーを飲みながら休憩する。真下は、城が建つ土台となる広い敷地で見晴らしの良い展望台となっているが、こちらは、やや高い場所になり、より眺めが良い。左端が北東になるので、丘の向こうがアルバ方面になり、右側の丘の上の街並みが、ディアーノ ダルバになる。
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次に、やや右側に移動すると東になり、ディアーノ ダルバのサン ジョヴァンニ バッティスタ教会の鐘楼が確認できる。この場所から直線距離で概ね3キロメートルほどの距離となる。
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更に右側は、南東側でホテルのあるモンテルーポ アルベーゼ方面となるが、教会の鐘楼らしき塔は確認できない。手前の丘には、見渡すばかり、ぶどう畑が広がる風景となっている。
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時刻は午後6時半を過ぎたところ。今夜は、昨夜訪問できなかったリストランテに向かうことにしている。グリンツァーネ カブールからは、一旦、ホテルに戻り着替えて向かうことにしている。駐車場からは、三叉路からSP157号線を東に向かい、ディアーノ ダルバを経由して南に進むと20分ほどでホテルに到着する。
今夜は、トレイゾ(Treiso)にあるミシュランの一つ星「ラ チャウ デル トルナヴェント」(R La Ciau del Tornavento)を予約している。トレイゾは、ホテルからは、17キロメートルほど北東にあり、アルバからは、7キロメートルほど南東に位置している。丘の間を曲がりくねって延びる道が多く、気を抜くと、方向感覚が分からなくなるので、大変に難しい。。事前に一応ルートは調べているが、標識を見落とさないことを心掛け出発した。
交差点の標識や道路の様子を確認しながら、北に向かって進むと、丁字路のロータリーに、テレイゾ、アルバ方面の標識があり、左折した先に鐘楼のある教会が見えてくる。その教会前にある交差路から教会の右側を通り過ぎた隣の邸宅が目的のリストランテである。2階建てで中央に煉瓦を積み重ねたポーチと両側を大きな植え込みの植物が一体となり豪華なファサードを形成している。時刻は午後8時15分。ぎりぎり日の入り前に到着することができた。
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店内は長方形の大広間といった雰囲気で、4~5人掛けの丸テーブルが10数台並び、かつテーブル間の距離も十分離れて配置されている。入口の反対側となる南側には、一面窓ガラスで覆われ、ランゲ丘陵地が一望できるゴージャスな空間となっている。
コースはデギュスタツィオーネ(Degustazione)でお願いする。最初のワインは、バローロ南東側のモンフォルテ ダルバのシャルドネを十分に熟成させて造ったスプマンテで、カンティーナ(生産者)ロッケ デイ マンゾーニによる「ヴァレンティーノ ブリュット リゼルヴァ エレナ」である。ランゲ地方で初めて造られたシャンパン製法のスプマンテ(メトド クラッシコ方式(瓶内二次発酵))とのこと。
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最初にサーモンをいただく。スプマンテと良く合っている。この日は、何故かメニューを撮影しておらず、提供された料理の詳細が分からないままとなってしまった。
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テーブル席は、南東側の窓際席を案内してくれたので大変眺めが良かったのだが、前菜が運ばれる前に日が暮れてしまった。ホテルからの眺めもそうだったが、街の灯りがないため、日が沈むと真っ暗になってしまうのが、少し残念である。
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次のワインは「ジェンマ ヴィティス」。ピエモンテ州の西部に位置するカンピリオーネ産の赤ワイン。
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野菜のフラン(タルトパイ)。
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バルベーラ ダルバ ヴィニェーティ チェッレート(barbera d'alba vigneti cerreto)。カンティーナは、ロベルト ヴォエルツィオ(Roberto Voerzio)で、ラ モッラ中心部にある。バルベーラ種100%で造られ、輝きのあるルビー色をしている。フランボワーズやジャムを思わせる香り、凝縮した果実味としっかりとしたアルコール感があり、まろやかな酸味とシルキーな喉越しを持つ。
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フォンドゥータソースを使った料理だが料理名は不明。タルトゥフォ ビアンコ(白トリュフ)をたっぷりとかけてくれた。
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バルバレスコ セッラボエッラ(Barbaresco Serraboella)。伝統的な大樽と近年流行している小樽を使用したチリューティの自信作と言われる。
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こちらは、ピエモンテの家庭料理で、細麺の卵入り手打ちパスタ「タヤリン」。ハーブ風味のバターソースでいただく。
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最後のワインは、バローロ ワインになる。ロ ゾコライオ バローロ ラヴェラ(Lo Zoccolaio Barolo Ravera)で、ロ ゾコライオはバローロ生産地域のカンティーナで、村の中心地からやや南の標高350メートルに位置する。ゾコライオは大きな白い木(ギンドロ)で命の木とも呼ばれており、ラベルにもデザインされている。ミネラル香とスパイスをほのかに感じ、コクがあり溢れるような豊かさと広がりのある香りが特徴。
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メイン料理の前にウエイターが希望する肉のサイズを聞きに来たので少なめでお願いした。他のテーブル席に運ばれる大きさを見て驚いていたのを察知されたのかもしれない。こちらは豚肉で、旨味が凝縮された肉と皮のカリッとした焼き上げとのバランスが抜群である。
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こちらは、何の肉だったか覚えていない。サイズもちょうど良く、美味しかったことは間違いない。。
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本日のコースには、チーズが付いており、女性スタッフが大きなガラスケースのチーズワゴンを運んできた。
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チーズの種類が多く、選べないで悩んでいると、笑顔で、全種類を盛りつけてくれた。
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今夜もピエモンテ伝統料理だったのだが、洗練された料理や多くの種類のチーズ、お店の雰囲気やサービスも良く、フランス料理を味わった様な気持ちになった。ワインも大変美味しく、グラスの量が少なくなると、愛想良く、どんどん注いでくれた(計175ユーロ(レート114.092))。日本人シェフも働いており、少し会話することができたのも良かった。デザートが提供された頃は、午後11時を過ぎ、多くの客は帰宅して、ほとんど最後の客となっていた。
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翌朝は、ホテルからミラノ マルペンサ空港に向かい、午前12時20分発のアエロフロート ロシア航空に乗り、モスクワを経由して、成田国際空港に翌朝、午前10時20分に到着・帰国した。今回の旅は、かなりの距離の移動となり、計画通り進まなかったことも多かったが、大きなトラブルなく無事終えたのは良かった。
(2011.8.6~7)
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店舗前には、店名看板とイタリア国旗がはためき、入口の柱には、スローフードと書かれた看板が掲げられている。スローフードは、拡大を続けるファストフード文化に対して、その土地の伝統的な食文化や食材を見直すことなどを目的にし、1986年にイタリアのカルロ ペトリーニにより提唱された国際的な社会運動で、現在ではイタリア国内で4万人、世界各国に8万人以上の会員を有する国際組織(協会)となっている。なお、シンボルマークのカタツムリは、思慮深い、ゆっくりの意味である。
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正面のアーチをくぐると中庭になっている。1階には、スローフード協会本部の事務所があり、ボッコンディヴィーノは正面の階段を上った2階にある。
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ワインは、グラス ワインメニューから注文することにした。メニューには、地元産の14種類があり、カナーレ産、カステッリナルド産、ディアーノ ダルバ産などのワインを注文した。ちなみに一番価格が高いワインが、バローロ ロッチェ(Rocche、05)で6ユーロ。次にバルバレスコ マルカリーニ(Marcarini 06)で5.5ユーロ。他は2.5ユーロから4ユーロ程度とかなり良心的な価格設定である。
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ランチ メニューには、アンティパスト、プリモピアットなどの標記はなかったが、アンティパスト8種、プリモ4種、セコンド6種、チーズ1種、コントローリ3種が、順番に書かれていた。料理には、お店のお勧めマークがあり、そのお勧めの一つ、ピエモンテの伝統料理の3点盛り「ラルド、サルシッチャ ディ ブラ、カルネ クルーダ」(Lardo,salsiccia di Bra e carne cruda、8.50ユーロ)を注文する。一目で鮮度が高いと感じる色合いで、実際に食べてみると上質のマグロのようである。さすがにスローフード協会のおひざ元のリストランテといったところ。
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付け合わせ(コントローリ)は、シンプルな「ミックスサラダ」(Insalata Mista、4ユーロ)にした。バルサミコ酢をたっぷりかけて頂く。こちらも収穫したてといった感じで、大変みずみずしい。
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「ズッキーニとトマトのニョッキ」(Gnocchi di patate con zucchini e pomodoro fresco、8.5ユーロ)。ジャガイモ ニョッキは思ったより柔らかく、新鮮で酸味のあるトマトとの相性が素晴らしい。
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こちらは、お馴染みのピエモンテの伝統料理「アニョロッティ デル プリン」(Agnolotti del plin al burro e rosmarino、9ユーロ)。詰め物はやや小ぶりで思ったより柔らかいので食べやすい。ローズマリーの香りの強いが、かえって食欲が増す。
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最後に「パンナコッタ」(5ユーロ)と「カフェ」(1ユーロ)をいただいて食事を終えた。
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セコンド ピアットでは、お勧めとして、仔牛肉のツナソース(8.5ユーロ)、カルマニョーラ産ウサギのトンノ、バルサミコ添え(8.5ユーロ)、仔牛肉の煮込みシチュー(12.5ユーロ)などがあったが注文しなかった。実は、今夜こそ、昨夜行けなかったリストランテに行くことにしているため、昼は軽めにしておいた。結果、お腹には余裕もあり正解だったが、どの料理も美味しかったので少し心残りとなった。
次にクーネオ県バローロに向かった。バローロの名称は、最高級のイタリアワインの一つとして世界的に知られている。タナロ川を渡り右岸沿いを走るSP7号線で、アルバ方面に戻り途中からSP3号線(アルバ通り)に乗り換え南下する。ブラから30分ほどでバローロ村の北側にあるコルベルト広場に到着する。
コルベルト広場の正面にある狭い石階段を上ると、ムニチピオ広場に到着する。広場の北側に面した建物の裏には、三角形の敷地の展望台があり、左前方(北東方向でアルバ方面)にランゲの丘陵地の稜線が望める。手前の中程には「サン ドナート教会」の鐘楼、右側に、バローロ城の胸壁のある塔が聳えている。ワインで有名なバローロだが、人口は700人足らずと少なく、集落はバローロ城を中心に丘の上に広がっている。
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再びムニチピオ広場に戻り、東方向へ延びる起伏のあるローマ通りを進むと、正面に「バローロ城」(正式にはファレッティ城という)が見えてくる。お城はもともと小さな丘にあった要塞を利用して建設したもので、下部には、石を幾層にも積み重ねて築かれた要塞の名残りがある。城には三層のアーチ窓があり、その屋上南側には胸壁が備え付けられているが、西側にはなく、小さな窓が並んでいる。屋上には胸壁のある小円塔と、大きな塔が建っている。
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バローロ城へ向かうルートには、他に、麓となる北側から直接、城の周囲に沿って延びる細い通路を利用することもできる。そちらは、近道にはなるものの、かなり急勾配の坂道となっている。
バローロ城を建設したのは、1250年に当地を引き継いだファレッティ家である。ただし、現在のバローロ城は、16世紀に戦争で大きな被害を受けた後に再建したものとされている。ファレッティ家とは、12世紀初頭にアスティ、アルバなど、ピエモンテの都市を起点に、金融及び商業の分野で富を築いた貴族の系統で、ジェノヴァ、チュニス、アヴィニョンなどに金融事業を拡大し財を成し遂げている。そして1730年には侯爵となっている。
胸壁のある南側の2階と3階の二連のアーチ窓の上部には、歴代の侯爵の浮彫があり、コーニス下の面取りには、ファレッティ家の紋章が飾られている。
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城への入口は、南側の外壁を回り込んだ北側にある。城内は「エノテカ レジョナーレ」(バローロ州立ワイン展示館)になっており、ワインの製造工程の紹介やバローロ ワインに関する展示がされている。こちらの部屋の壁面には、ブドウ畑とバローロ ワインボトルを背景に、科学者風の男性が顕微鏡を覗いたり、書類に目を通したり、ワイン醸造に関する研究場面を思わせる一場面を劇画タッチで描いたパネルが展示されている。
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パネルは大きく、視線を移すと、トーガを脱ぎ、裸でワインを飲むローマ人風の男女や、その姿を眺める骸骨などが描かれた場面もある。他にも、キリストをワイン圧搾機に乗せ、流れ出る血をワイン樽に注ぎ込むシュールな場面などもあるが、あまり相応しいと思えない展示だった。
こちらには正方形のフローリングの部屋がある。周囲の壁には伝統衣装を身に着けた人物パネルが数多く飾られ、事務机と椅子だけがポツンと、すみに置かれただけで、何のための部屋なのか分からないが、窓からの眺めは素晴らしく、時折吹き込む風が心地よい。
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こちらには、多くのバローロ ワインが展示されている。そして有料で試飲もできるコーナーもある。現在、“ バローロ ” と表示することができるワインは、DOCGに指定され、ランゲ丘陵周辺の11の地域となっている。中でも有名な生産地域は、お膝元のバローロ (Barolo)地域を始め、北側のラ モッラ(La Morra)、北東側のカスティリオーネ ファッレット(Castiglione Falletto)、東側のセッラルンガ ダルバ(Serralunga d’Alba)、南東側のモンフォルテ ダルバ(Monforte d’Alba)の5か所とされている(バローロ ワインの主な生産地域図)。
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バローロ ワインが、長期熟成の辛口赤ワインとなったのは、1807年、バローロ侯カルロ タンクレーディ ファレッティに嫁いだ、ジュリエット コルベール(太陽王ルイ14世の宰相コルベールのひ孫にあたる)が、バローロの土地と気候が、高品質のワインを生み出すことができると確信し探求を続けたことが始まりである。彼女は1864年に亡くなりファレッティ家は断絶してしまうものの、彼女の意思を受け継いだ後継者たちにより、バローロは「王のワイン」としての地位を築いていく。壁には1871年の古いバローロ ワインのラベルなどが展示されている。
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高い名声を築いたバローロ ワインは、1970年代には、消費者の嗜好の変化などにより、長期熟成の伝統的なスタイルが流行遅れとなっていく。しかし、1980年代には、バローロ ボーイズと呼ばれた若手生産者により、従来の大樽から小樽による熟成方法の変更、熟成期間の3年から1年への短縮など、果実実あふれるニュースタイルのバローロが次々と開発される。こちらにはそんな過渡期の1983年のラ モッラ産バローロ ワインが飾られている。
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4階には展望テラスに出られるアーチ門がある。テラスから南側を振り返ると、丸瓦が敷き詰められた切妻屋根の中程に2つの塔が伸びている。煙突の様にも見えるが、胸壁があることから、防衛上の櫓(側防塔)だったと思われる。
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そして、展望テラスからは、東、北、西側3方向の眺望を見渡せる。周囲には、大人の腰あたりの高さの手すりと、その先に煉瓦が積み重ねられた胸壁が設けられている。
テラス北側真下には、城への正面入口前の小さな広場があり、その向かい側(北東側)に「サン ドナート教会」が建っている。そして、その教会の鐘楼の後方には、300メートルから400メートルの高低差の丘一面に、バローロ生産地域のぶどう畑が大波のうねりのように続いているのが確認できる。見渡すばかりに、ぶどう畑は続き、北東方向となる右後方はカスティリオーネ ファッレット生産地域となり、その先がアルバになる。
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やや左側に視線を移すと、同じくバローロ生産地域のぶどう畑の斜面が広がっている。そして、その先となる北側の4キロメートルほど先の丘の上の街並みが、人口約2,700人の基礎自治体(コムーネ)「ラ モッラ」で、標高500メートルほどに位置している。ラ モッラは、バローロ生産地域では最大面積を誇っており、標高差のある畑から様々なタイプのワインが生み出されるが、ミネラルをたっぷり含んだ石灰土壌であることから、一般的には、エレガントなスタイルのバローロが産まれるとのこと。
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次に、アルバ方面に6キロメートルほど戻り、カスティリオーネ ファッレットを過ぎたグリンツァーネ カブールに向かった。ここには、ガリバルディ、マッツィーニと並ぶ「イタリア統一の三傑」と称される、カミッロ カヴール伯爵の城(Castello di Grinzane Cavour)がある。
駐車場は、なだらかな坂を上った右側にある。その駐車場には眺めの良い見晴らし台があり、起伏のあるぶどう畑の丘を見渡せる。車道から東方向に分岐し上っていく歩行者専用の直進の石畳道を進むと、左前方の丘の上に「カミッロ カヴール伯爵城」が現れる。
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カヴールとは、1852年、サルデーニャ王国の最後の国王ヴィットーリオ エマヌエーレ2世に首相に選ばれ、国王と共にイタリア統一戦争に終止符を打ち、リソルジメント(イタリア統一運動)を成し遂げた人物。その後は、オーストリアやフランスなど大国からの干渉という難題を抱えながらも、卓越した外交術を駆使してイタリア統一を完成させる。こちらはカヴールの石膏肖像で、城内の展示室に飾られている。
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カヴールは政治的評価だけでなく、ワイン醸造にも貢献し今のバローロ ワインの礎を築いた人物である。19世紀初頭、ピエモンテの農地は、ナポレオンのイタリア侵略で荒廃していたが、この時期、フランス人のワイン醸造専門家ルイ ウダール(Lois Oudart)にワイン醸造について調査・研究を依頼している。
この結果、ネッビオーロ種の潜在力が引き出され、1850年代にはネッビオーロ種100%の辛口ワイン「バローロ」の生産に成功する。そして、瞬く間に「ワインの王様」の称号を獲得している。こちらのスクリーンではそのカヴールの功績が紹介がされている。
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このカブール城は、初期のバローロ研究の中心地でもあったことから、城内には、カヴールの遺品や、ワイン研究に関する資料、写真などが多数展示されている。
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部屋の中央には、大型のワイン圧搾機が飾られている。中央には樽が置かれ、左端の大きなねじを回すことで、太い横柱に圧力を加え、樽内のブドウを搾る仕組みになっている。他にも、様々な形の絞り樽や、収穫に使用された道具類などが展示されている。
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城内には、エノテカ レジョナーレ(州立ワイン展示館)があり、ワインの試飲や販売がされている。隣にはピエモンテ料理とワインを堪能できるリストランテも併設されている。
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そのリストランテの入口を入ってすぐのテーブル席には、見晴らしの良い大きなアーチ門があるので、コーヒーを飲みながら休憩する。真下は、城が建つ土台となる広い敷地で見晴らしの良い展望台となっているが、こちらは、やや高い場所になり、より眺めが良い。左端が北東になるので、丘の向こうがアルバ方面になり、右側の丘の上の街並みが、ディアーノ ダルバになる。
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次に、やや右側に移動すると東になり、ディアーノ ダルバのサン ジョヴァンニ バッティスタ教会の鐘楼が確認できる。この場所から直線距離で概ね3キロメートルほどの距離となる。
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更に右側は、南東側でホテルのあるモンテルーポ アルベーゼ方面となるが、教会の鐘楼らしき塔は確認できない。手前の丘には、見渡すばかり、ぶどう畑が広がる風景となっている。
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時刻は午後6時半を過ぎたところ。今夜は、昨夜訪問できなかったリストランテに向かうことにしている。グリンツァーネ カブールからは、一旦、ホテルに戻り着替えて向かうことにしている。駐車場からは、三叉路からSP157号線を東に向かい、ディアーノ ダルバを経由して南に進むと20分ほどでホテルに到着する。
今夜は、トレイゾ(Treiso)にあるミシュランの一つ星「ラ チャウ デル トルナヴェント」(R La Ciau del Tornavento)を予約している。トレイゾは、ホテルからは、17キロメートルほど北東にあり、アルバからは、7キロメートルほど南東に位置している。丘の間を曲がりくねって延びる道が多く、気を抜くと、方向感覚が分からなくなるので、大変に難しい。。事前に一応ルートは調べているが、標識を見落とさないことを心掛け出発した。
交差点の標識や道路の様子を確認しながら、北に向かって進むと、丁字路のロータリーに、テレイゾ、アルバ方面の標識があり、左折した先に鐘楼のある教会が見えてくる。その教会前にある交差路から教会の右側を通り過ぎた隣の邸宅が目的のリストランテである。2階建てで中央に煉瓦を積み重ねたポーチと両側を大きな植え込みの植物が一体となり豪華なファサードを形成している。時刻は午後8時15分。ぎりぎり日の入り前に到着することができた。
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店内は長方形の大広間といった雰囲気で、4~5人掛けの丸テーブルが10数台並び、かつテーブル間の距離も十分離れて配置されている。入口の反対側となる南側には、一面窓ガラスで覆われ、ランゲ丘陵地が一望できるゴージャスな空間となっている。
コースはデギュスタツィオーネ(Degustazione)でお願いする。最初のワインは、バローロ南東側のモンフォルテ ダルバのシャルドネを十分に熟成させて造ったスプマンテで、カンティーナ(生産者)ロッケ デイ マンゾーニによる「ヴァレンティーノ ブリュット リゼルヴァ エレナ」である。ランゲ地方で初めて造られたシャンパン製法のスプマンテ(メトド クラッシコ方式(瓶内二次発酵))とのこと。
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最初にサーモンをいただく。スプマンテと良く合っている。この日は、何故かメニューを撮影しておらず、提供された料理の詳細が分からないままとなってしまった。
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テーブル席は、南東側の窓際席を案内してくれたので大変眺めが良かったのだが、前菜が運ばれる前に日が暮れてしまった。ホテルからの眺めもそうだったが、街の灯りがないため、日が沈むと真っ暗になってしまうのが、少し残念である。
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次のワインは「ジェンマ ヴィティス」。ピエモンテ州の西部に位置するカンピリオーネ産の赤ワイン。
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野菜のフラン(タルトパイ)。
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バルベーラ ダルバ ヴィニェーティ チェッレート(barbera d'alba vigneti cerreto)。カンティーナは、ロベルト ヴォエルツィオ(Roberto Voerzio)で、ラ モッラ中心部にある。バルベーラ種100%で造られ、輝きのあるルビー色をしている。フランボワーズやジャムを思わせる香り、凝縮した果実味としっかりとしたアルコール感があり、まろやかな酸味とシルキーな喉越しを持つ。
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フォンドゥータソースを使った料理だが料理名は不明。タルトゥフォ ビアンコ(白トリュフ)をたっぷりとかけてくれた。
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バルバレスコ セッラボエッラ(Barbaresco Serraboella)。伝統的な大樽と近年流行している小樽を使用したチリューティの自信作と言われる。
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こちらは、ピエモンテの家庭料理で、細麺の卵入り手打ちパスタ「タヤリン」。ハーブ風味のバターソースでいただく。
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最後のワインは、バローロ ワインになる。ロ ゾコライオ バローロ ラヴェラ(Lo Zoccolaio Barolo Ravera)で、ロ ゾコライオはバローロ生産地域のカンティーナで、村の中心地からやや南の標高350メートルに位置する。ゾコライオは大きな白い木(ギンドロ)で命の木とも呼ばれており、ラベルにもデザインされている。ミネラル香とスパイスをほのかに感じ、コクがあり溢れるような豊かさと広がりのある香りが特徴。
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メイン料理の前にウエイターが希望する肉のサイズを聞きに来たので少なめでお願いした。他のテーブル席に運ばれる大きさを見て驚いていたのを察知されたのかもしれない。こちらは豚肉で、旨味が凝縮された肉と皮のカリッとした焼き上げとのバランスが抜群である。
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こちらは、何の肉だったか覚えていない。サイズもちょうど良く、美味しかったことは間違いない。。
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本日のコースには、チーズが付いており、女性スタッフが大きなガラスケースのチーズワゴンを運んできた。
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チーズの種類が多く、選べないで悩んでいると、笑顔で、全種類を盛りつけてくれた。
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今夜もピエモンテ伝統料理だったのだが、洗練された料理や多くの種類のチーズ、お店の雰囲気やサービスも良く、フランス料理を味わった様な気持ちになった。ワインも大変美味しく、グラスの量が少なくなると、愛想良く、どんどん注いでくれた(計175ユーロ(レート114.092))。日本人シェフも働いており、少し会話することができたのも良かった。デザートが提供された頃は、午後11時を過ぎ、多くの客は帰宅して、ほとんど最後の客となっていた。
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翌朝は、ホテルからミラノ マルペンサ空港に向かい、午前12時20分発のアエロフロート ロシア航空に乗り、モスクワを経由して、成田国際空港に翌朝、午前10時20分に到着・帰国した。今回の旅は、かなりの距離の移動となり、計画通り進まなかったことも多かったが、大きなトラブルなく無事終えたのは良かった。
(2011.8.6~7)