10日間の上海、北京も最終日を迎えた。少し時間ができたので29日の日中、天安門と王府井を歩いた。地方からの観光客でにぎわう場所である。習近平総書記が語るいわゆる「群衆」の中に身を置き、「群衆」の視点に立つ貴重な体験をしようと思い立ったのだ。
地下鉄一号線の天安門東駅で降り、毛沢東の肖像画が掲げられた城楼に向かう。にわか雨が上がり、太陽が照り付ける。観光客はみな汗でシャツがびっしょりだ。9月3日の抗日戦争勝利記念日にはこの城楼に習近平以下、国の指導者がずらりと顔をそろえる。長安街の反対側には軍事パレードの舞台となる天安門広場が広がる。反テロ対策強化の工事が行われているとのことで、広場は立ち入りが禁止されていた。がらんとした空間の中、国旗を掲揚したポールの左右で毛沢東記念堂に向かって起立する二人の武装警官が際立って見えた。
厳格な手荷物検査をくぐり抜け、まず目にしたのは小さな段ボールを手にした女性が、2人の男に取り押さえられている光景だった。男たちが笑っていたので、最初はじゃれて遊んでいるように見えたがそうではない。小柄で日焼けした女性は、2人の男性が奪おうとする段ボールを必死に守ろうと抵抗している。箱が破れ中からアイスキャンデーがこぼれ落ちる。拾おうとする女性を捕まえて、地面のアイスキャンデーを踏みつける年配の男性。「城管執法」と書かれた電気自転車が横にある。もう一人の若い男性はアイスキャンデーをいくつか拾い上げ、へらへら笑いながら持ち去っていった。騒ぎが収まると、清掃担当の別の男性が来て、女性に「ごみは拾っていけ!」と命じる。
天安門前の歩道は営業禁止だが、本来、営業のできる広場は閉鎖されている。彼女は少しでも金を稼ぐため唯一の生活の糧であるアイスキャンデーを持ち込んだのだろう。ルールを守らないのは悪いが、そこまで粗暴な扱いをする必要はない。明らかに過剰で不当な取り締まりだ。街頭での違法な営業行為を取り締まる「城管」は、粗暴な振る舞いで悪名が高い。人を暴力を振るって社会問題になることもしばしばある。
観光客の集団は見て見ぬふりをして通り過ぎていく。同情はしても、事件にかかわりたくないのが人情だ。城菅も社会的地位は低く、群衆の一部である。彼らの振る舞いを見てわかる通り、教育水準も高くない。社会の底辺にいる群衆同士がもみ合う光景を、肖像画の毛沢東はどう見ているのであろうか。
地下鉄で一駅戻り王府井を歩いた。全国各地の食べ物がそろうグルメ街の一角に、北京の土産品を売る露店が並んでいた。今年の1月来た際は、毛沢東の大きな絵皿と一緒に習近平の絵皿まで置かれているのを見つけ驚いた。その後どうなっているのかと興味が湧いた。現場を見てびっくりした。大きな習近平絵皿のほか、中型のものや彭麗媛夫人とのツーショットもある。同じ絵皿を置いてある店も以前より増えているが、数の上でも明らかに毛沢東を凌駕している。わずか半年で、習近平人気がここまで高まっているとは。
複数の売店で聞いてみると、地方からの観光客を相手に売れ行きは上々だという。値段は大きな絵皿が言い値で150から180元、中型のものが80から120元。同じ大きさでも毛沢東より習近平に高い値段をつけている店もあった。こんな現象はかつてなかったことだ。
習近平人気は容赦のない腐敗摘発と群衆を重視するパフォーマンス、ネットで習近平をキャラクター化させたアニメを流すなどの親民工作によるが、ここのところにきて少し陰りが出てきたようにも思える。反腐敗運動の長期化で役人の意欲が削がれ、人権派弁護士の相次ぐ摘発で知識人からの不評を買い、上海株の暴落で大損した都市部の若者たちの不満も政権に向かっている。その結果はやはり毛沢東と同様、群衆頼みということになるのだろうか。軍事パレードの意図が透けて見えたような気がした北京散歩だった。
※本日、北京から上海経由で東京に戻ろうと思っていたところ、北京発便が昨晩の雷雨により大幅に遅れ、上海で一泊することに。中国はそう簡単には帰してくれないのかな。明日朝の便に切り替えたので、夜の宴会には間に合います・・・上海浦東空港にて
地下鉄一号線の天安門東駅で降り、毛沢東の肖像画が掲げられた城楼に向かう。にわか雨が上がり、太陽が照り付ける。観光客はみな汗でシャツがびっしょりだ。9月3日の抗日戦争勝利記念日にはこの城楼に習近平以下、国の指導者がずらりと顔をそろえる。長安街の反対側には軍事パレードの舞台となる天安門広場が広がる。反テロ対策強化の工事が行われているとのことで、広場は立ち入りが禁止されていた。がらんとした空間の中、国旗を掲揚したポールの左右で毛沢東記念堂に向かって起立する二人の武装警官が際立って見えた。
厳格な手荷物検査をくぐり抜け、まず目にしたのは小さな段ボールを手にした女性が、2人の男に取り押さえられている光景だった。男たちが笑っていたので、最初はじゃれて遊んでいるように見えたがそうではない。小柄で日焼けした女性は、2人の男性が奪おうとする段ボールを必死に守ろうと抵抗している。箱が破れ中からアイスキャンデーがこぼれ落ちる。拾おうとする女性を捕まえて、地面のアイスキャンデーを踏みつける年配の男性。「城管執法」と書かれた電気自転車が横にある。もう一人の若い男性はアイスキャンデーをいくつか拾い上げ、へらへら笑いながら持ち去っていった。騒ぎが収まると、清掃担当の別の男性が来て、女性に「ごみは拾っていけ!」と命じる。
天安門前の歩道は営業禁止だが、本来、営業のできる広場は閉鎖されている。彼女は少しでも金を稼ぐため唯一の生活の糧であるアイスキャンデーを持ち込んだのだろう。ルールを守らないのは悪いが、そこまで粗暴な扱いをする必要はない。明らかに過剰で不当な取り締まりだ。街頭での違法な営業行為を取り締まる「城管」は、粗暴な振る舞いで悪名が高い。人を暴力を振るって社会問題になることもしばしばある。
観光客の集団は見て見ぬふりをして通り過ぎていく。同情はしても、事件にかかわりたくないのが人情だ。城菅も社会的地位は低く、群衆の一部である。彼らの振る舞いを見てわかる通り、教育水準も高くない。社会の底辺にいる群衆同士がもみ合う光景を、肖像画の毛沢東はどう見ているのであろうか。
地下鉄で一駅戻り王府井を歩いた。全国各地の食べ物がそろうグルメ街の一角に、北京の土産品を売る露店が並んでいた。今年の1月来た際は、毛沢東の大きな絵皿と一緒に習近平の絵皿まで置かれているのを見つけ驚いた。その後どうなっているのかと興味が湧いた。現場を見てびっくりした。大きな習近平絵皿のほか、中型のものや彭麗媛夫人とのツーショットもある。同じ絵皿を置いてある店も以前より増えているが、数の上でも明らかに毛沢東を凌駕している。わずか半年で、習近平人気がここまで高まっているとは。
複数の売店で聞いてみると、地方からの観光客を相手に売れ行きは上々だという。値段は大きな絵皿が言い値で150から180元、中型のものが80から120元。同じ大きさでも毛沢東より習近平に高い値段をつけている店もあった。こんな現象はかつてなかったことだ。
習近平人気は容赦のない腐敗摘発と群衆を重視するパフォーマンス、ネットで習近平をキャラクター化させたアニメを流すなどの親民工作によるが、ここのところにきて少し陰りが出てきたようにも思える。反腐敗運動の長期化で役人の意欲が削がれ、人権派弁護士の相次ぐ摘発で知識人からの不評を買い、上海株の暴落で大損した都市部の若者たちの不満も政権に向かっている。その結果はやはり毛沢東と同様、群衆頼みということになるのだろうか。軍事パレードの意図が透けて見えたような気がした北京散歩だった。
※本日、北京から上海経由で東京に戻ろうと思っていたところ、北京発便が昨晩の雷雨により大幅に遅れ、上海で一泊することに。中国はそう簡単には帰してくれないのかな。明日朝の便に切り替えたので、夜の宴会には間に合います・・・上海浦東空港にて
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