北九州市取材の初日である28日はまず午前中、同市における公害克服の歴史、そして環境保護教育の現況について学ぶため環境ミュージアムを訪れた。現地の環境行政に長く携わってきた中薗哲館長から直々に案内をしていただいた(同館サイトhttp://eco-museum.com/)。
日常的に子どもたちと接しているせいか、話がストーリーを中心に組み立てられ、実にわかりやすい。母親たちが家族の健康を守るために立ち上がった公害運動の歴史を振り返る際、「力による決着ではなく、市民と企業、政府が話し合いによる解決を図った」との言葉が印象的だった。「市民があっての環境保護」というメッセージは、中国人の学生たちに強い印象を残した。それぞれができる範囲で役割を果たす。これが今回の取材を通しての一貫したテーマとなった。中薗館長の言葉は、その水先案内の役割を果たしたことになる。
実は2人の学生が翌日、児童の社会科見学風景を取材するため、改めて環境ミュージアムを飛び込みで訪れた際も、中囿館長には進んで学生たちの舌足らずな質問に答えていただいた。あとでそのやり取りをビデオで見て、感謝に堪えなかった。
たっぷり館長の解説を聞き、そのまま市庁舎に向かった。上階のレストランで昼食をとり、5階のプレゼンルームで北橋健治市長との会見に臨んだ。友好姉妹都市でもない中国の一大学の学生が、日本の市長にインタビューできるのは、出発前から学院内でも驚きだった。日中相互理解のために尽くす心ある人たちの尽力によるものだ。事前に座席表まで渡されていたので、学生たちはかなり緊張していた。だが、まったく予想外な経験をした。
部屋に入ってきた北橋市長はまず、お辞儀をしながら学生1人1人に名刺を配り始めた。中国高官の近寄りがたい態度を予想していた学生たちが、戸惑いながら名刺を受け取っているのがわかった。中国ではあり得ない光景である。質疑の最中も、淡々と、静かに語る市長の様子に好感を持ったようだ。
--北九州市が今直面している課題は?
「国境を超えて大気汚染物質が日本、北九州に飛んでくるPM2・5の問題があります。これは大陸の市民も、私たち日本の国民も、健康という面からみれば共通のテーマです。一緒に力を合わせて解決したい。環境問題は国際的なテーマです。私たちは同じ空の下に住んで、海もつながっています」
--今後の取り組みは?
「環境の国際貢献に一生懸命取り組みたい。北九州には富士山もないし、京都のような寺もない。ただ、公害の経験と環境の技術を海外に伝えることが大切だと共感している市民が非常に多い。それが北九州の最大の誇りだと思います」
--地球温暖化についてどう対処すべきか?
「どの国の国民も豊かになりたい。エネルギーをいっぱい使っても、CO2を出しても、とにかく豊かになりたいという気持ちはよくわかる。環境がよくなっても工場がつぶれては何にもならない。北九州市のモデルは、環境と経済の両立モデルです。環境もよくするし、経済も同時に発展するモデルを求めてきました」
--大切な理念、思想は?
「国も自治体も企業も大学も、環境をよくしないといけないという決意、経済と両立させながら前に進むという共通の認識、同じ目標を確認することが大事です」
北橋市長からはこのほか、海上の風力発電計画や、石炭を液化、ガス化によって有効利用する必要性についての言及があった。議会開会中の超多忙期で、時間厳守だとは学生に告げていた。だが市長がタイムオーバーを告げる職員の声を遮って、質問を受け続けてくださったことに対し、学生があとで「感動した」と話した。素直な感想である。
ツアー終了後、何人かの学生が書いた感想の中に、市長インタビューなど破格の待遇は、「私たちを将来の日中関係の懸け橋、希望だとみなしてくれているからだと感じた」と書いたものや、「環境問題は一か国の力だけで解決できるものではなく、全世界の力を集めて解決しなければならない」という市長の発言に感銘を受けた、と書いたものもあった。(続)
日常的に子どもたちと接しているせいか、話がストーリーを中心に組み立てられ、実にわかりやすい。母親たちが家族の健康を守るために立ち上がった公害運動の歴史を振り返る際、「力による決着ではなく、市民と企業、政府が話し合いによる解決を図った」との言葉が印象的だった。「市民があっての環境保護」というメッセージは、中国人の学生たちに強い印象を残した。それぞれができる範囲で役割を果たす。これが今回の取材を通しての一貫したテーマとなった。中薗館長の言葉は、その水先案内の役割を果たしたことになる。
実は2人の学生が翌日、児童の社会科見学風景を取材するため、改めて環境ミュージアムを飛び込みで訪れた際も、中囿館長には進んで学生たちの舌足らずな質問に答えていただいた。あとでそのやり取りをビデオで見て、感謝に堪えなかった。
たっぷり館長の解説を聞き、そのまま市庁舎に向かった。上階のレストランで昼食をとり、5階のプレゼンルームで北橋健治市長との会見に臨んだ。友好姉妹都市でもない中国の一大学の学生が、日本の市長にインタビューできるのは、出発前から学院内でも驚きだった。日中相互理解のために尽くす心ある人たちの尽力によるものだ。事前に座席表まで渡されていたので、学生たちはかなり緊張していた。だが、まったく予想外な経験をした。
部屋に入ってきた北橋市長はまず、お辞儀をしながら学生1人1人に名刺を配り始めた。中国高官の近寄りがたい態度を予想していた学生たちが、戸惑いながら名刺を受け取っているのがわかった。中国ではあり得ない光景である。質疑の最中も、淡々と、静かに語る市長の様子に好感を持ったようだ。
--北九州市が今直面している課題は?
「国境を超えて大気汚染物質が日本、北九州に飛んでくるPM2・5の問題があります。これは大陸の市民も、私たち日本の国民も、健康という面からみれば共通のテーマです。一緒に力を合わせて解決したい。環境問題は国際的なテーマです。私たちは同じ空の下に住んで、海もつながっています」
--今後の取り組みは?
「環境の国際貢献に一生懸命取り組みたい。北九州には富士山もないし、京都のような寺もない。ただ、公害の経験と環境の技術を海外に伝えることが大切だと共感している市民が非常に多い。それが北九州の最大の誇りだと思います」
--地球温暖化についてどう対処すべきか?
「どの国の国民も豊かになりたい。エネルギーをいっぱい使っても、CO2を出しても、とにかく豊かになりたいという気持ちはよくわかる。環境がよくなっても工場がつぶれては何にもならない。北九州市のモデルは、環境と経済の両立モデルです。環境もよくするし、経済も同時に発展するモデルを求めてきました」
--大切な理念、思想は?
「国も自治体も企業も大学も、環境をよくしないといけないという決意、経済と両立させながら前に進むという共通の認識、同じ目標を確認することが大事です」
北橋市長からはこのほか、海上の風力発電計画や、石炭を液化、ガス化によって有効利用する必要性についての言及があった。議会開会中の超多忙期で、時間厳守だとは学生に告げていた。だが市長がタイムオーバーを告げる職員の声を遮って、質問を受け続けてくださったことに対し、学生があとで「感動した」と話した。素直な感想である。
ツアー終了後、何人かの学生が書いた感想の中に、市長インタビューなど破格の待遇は、「私たちを将来の日中関係の懸け橋、希望だとみなしてくれているからだと感じた」と書いたものや、「環境問題は一か国の力だけで解決できるものではなく、全世界の力を集めて解決しなければならない」という市長の発言に感銘を受けた、と書いたものもあった。(続)
アメリカ軍と連合軍は、「日本人の人生感」を、最もおそれたのですね。しかし、原子爆弾で物理的な勝利を得ても、「日本の道義的な世界平和の精神」は、破戒できませんでした。