東京都千代田区の日本大学経済学部で29日、日中の未来を考える会(保思兆代表)と日中独創メディア(加藤隆則代表)の共催する「胡耀邦生誕100周年記念講演会」が開かれ、学生や中国研究者ら約100人が参加した。中国では胡耀邦の誕生日にあたる20日、北京の人民大会堂で公式の胡耀邦生誕100周年記念座談会が開かれ習近平総書記がスピーチをしたが、日本での関連行事は初めて。同会には胡耀邦時代、初の私営企業家となった姜維・中国光彩事業日本促進会会長も参加し、胡耀邦が経済の改革開放に果たした功績を強調する一方、「胡耀邦が築いた日中蜜月時代は必ずやってくる!」と力強く語った。
講演は、中国の現代知識人研究で知られる日大非常勤講師の及川淳子さんが「胡耀邦生誕100周年の今日的意義」、独立記者の加藤隆則さんが「胡耀邦と習近平の父・習仲勲」のテーマで行った。多くの若者にはなじみの薄くなった胡耀邦の足跡をたとりながら、現代中国の正しい認識や新たな日中関係の構築に向けた問題提起を行う場となった。中国と縁の深いベテランにも参加を呼びかけており、若者に知識と経験を引き継ぐ橋渡しの意味合いも持たせた。
及川さんは、中国共産党の胡耀邦に対する公式評価が、没後から「忠実な共産主義戦士」などとするものから全く変わっていないものの、様々な形で再評価の試みが行われている一方、それも「党の輝かしい歴史」と矛盾しない限定的な内容にとどまっていることを指摘した。胡耀邦失脚の経緯、趙紫陽、天安門事件についての言及はなく、「胡耀邦の再評価が政治体制改革に繋がるわけではない」点を強調した。そのうえで、今回の記念行事が「胡耀邦の清廉なイメージを取り込み、反腐敗運動推進の求心力に援用している」ことに力点を置き、党の基準に基づく「語ってもよい胡耀邦」と「語ってはならない胡耀邦」が分離されたとの見方を示した。
また日中関係については、胡耀邦が1983年11月29日、来日中に長崎平和祈念公園訪問して献花し、1985年には中日友好協会を通じて同公園に「乙女の像を」寄贈したことや、失脚する2か月前の1986年11月8日、北京の中日青年交流センター定礎式で、「愛国主義は、外国の人々と親しく交際し、友好的に協力する、こうした長い見通しを持った国際主義の精神と結び付けなければならない」と演説したことを紹介。胡耀邦の平和主義と国際主義を、今日でも学ぶべき精神的遺産だと訴えた。
一方、加藤さんはまず、20日、湖南省瀏陽の胡耀邦故居を視察した報告を行い、習近平氏の反腐敗運動に呼応し、故居が「廉政教育基地」として再整備されている実態を伝えた。すでに故居敷地内には、習氏を含む歴代指導者が反腐敗の決意を述べた言葉を刻んだ巨石が並べられているという。「実践は真理を検証する唯一の基準」と彫られた、小平筆と思われる石碑に名前がないことから、依然、胡耀邦の完全復権には至っていないことを指摘した。
また、胡耀邦と習仲勲がともに農民の子として生まれ育ち、理不尽な政治的迫害を受ける中で自らは政敵を打ち倒す政治闘争から距離を置き、むしろ、冤罪者を救う事業に力を注いだこと。異なる意見を尊重し、民主的な気風を持っていたこと。これらを二人の共通点として指摘し、「中国共産党が持っている良き伝統」とした。だが、現政権にそれが引き継がれているかどうかという参加者からの質問については、「習近平は父親を非常に尊敬しており、父親が受けた迫害や個人崇拝の弊害は熟知しているはずだ」としながらも、「現在行われている言論統制などはむしろ後退している印象を持つ」と否定的な見方を示した。そのうえで、「現在は集権化を進めている過程であり、これからその権力をどのように使おうとしているのか。二期目の政策を観察する必要がある」と述べた。
日中の未来を考える会と日中独創メディアでは今回の会を有意義だったと総括し、今後も協力して同種イベントを開いていく方針だ。(完)
※日中独創メディアではホームページを作成し、各種情報を発信していく予定だが、まだ準備中につき、本ブログにて代用させて頂く。
講演は、中国の現代知識人研究で知られる日大非常勤講師の及川淳子さんが「胡耀邦生誕100周年の今日的意義」、独立記者の加藤隆則さんが「胡耀邦と習近平の父・習仲勲」のテーマで行った。多くの若者にはなじみの薄くなった胡耀邦の足跡をたとりながら、現代中国の正しい認識や新たな日中関係の構築に向けた問題提起を行う場となった。中国と縁の深いベテランにも参加を呼びかけており、若者に知識と経験を引き継ぐ橋渡しの意味合いも持たせた。
及川さんは、中国共産党の胡耀邦に対する公式評価が、没後から「忠実な共産主義戦士」などとするものから全く変わっていないものの、様々な形で再評価の試みが行われている一方、それも「党の輝かしい歴史」と矛盾しない限定的な内容にとどまっていることを指摘した。胡耀邦失脚の経緯、趙紫陽、天安門事件についての言及はなく、「胡耀邦の再評価が政治体制改革に繋がるわけではない」点を強調した。そのうえで、今回の記念行事が「胡耀邦の清廉なイメージを取り込み、反腐敗運動推進の求心力に援用している」ことに力点を置き、党の基準に基づく「語ってもよい胡耀邦」と「語ってはならない胡耀邦」が分離されたとの見方を示した。
また日中関係については、胡耀邦が1983年11月29日、来日中に長崎平和祈念公園訪問して献花し、1985年には中日友好協会を通じて同公園に「乙女の像を」寄贈したことや、失脚する2か月前の1986年11月8日、北京の中日青年交流センター定礎式で、「愛国主義は、外国の人々と親しく交際し、友好的に協力する、こうした長い見通しを持った国際主義の精神と結び付けなければならない」と演説したことを紹介。胡耀邦の平和主義と国際主義を、今日でも学ぶべき精神的遺産だと訴えた。
一方、加藤さんはまず、20日、湖南省瀏陽の胡耀邦故居を視察した報告を行い、習近平氏の反腐敗運動に呼応し、故居が「廉政教育基地」として再整備されている実態を伝えた。すでに故居敷地内には、習氏を含む歴代指導者が反腐敗の決意を述べた言葉を刻んだ巨石が並べられているという。「実践は真理を検証する唯一の基準」と彫られた、小平筆と思われる石碑に名前がないことから、依然、胡耀邦の完全復権には至っていないことを指摘した。
また、胡耀邦と習仲勲がともに農民の子として生まれ育ち、理不尽な政治的迫害を受ける中で自らは政敵を打ち倒す政治闘争から距離を置き、むしろ、冤罪者を救う事業に力を注いだこと。異なる意見を尊重し、民主的な気風を持っていたこと。これらを二人の共通点として指摘し、「中国共産党が持っている良き伝統」とした。だが、現政権にそれが引き継がれているかどうかという参加者からの質問については、「習近平は父親を非常に尊敬しており、父親が受けた迫害や個人崇拝の弊害は熟知しているはずだ」としながらも、「現在行われている言論統制などはむしろ後退している印象を持つ」と否定的な見方を示した。そのうえで、「現在は集権化を進めている過程であり、これからその権力をどのように使おうとしているのか。二期目の政策を観察する必要がある」と述べた。
日中の未来を考える会と日中独創メディアでは今回の会を有意義だったと総括し、今後も協力して同種イベントを開いていく方針だ。(完)
※日中独創メディアではホームページを作成し、各種情報を発信していく予定だが、まだ準備中につき、本ブログにて代用させて頂く。
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