行雲流水の如く 日本語教師の独り言

30数年前、北京で中国語を学んだのが縁なのか、今度は自分が中国の若者に日本語を教える立場に。

「日系企業撤退」のニュースに大沸騰!?

2016-09-26 21:03:51 | 日記
昨日から多数の問い合わせに遭い驚いている。

「日本企業の代表団が来て、中国政府に撤退させるよう掛け合っているというのは本当か?」

発端は日経新聞9月23日(ネットでは9月22日)の記事だ。25日になって中国語翻訳バージョンが出回った。



日本の財界主要メンバー230人が9月20~27日まで訪中し、商務省を訪れた際、中国から撤退する場合の手続きをスムーズにするよう要望したというものだ。記事は「同行筋によると、中国では撤退する際に行政の認可が必要。行政府の中で手続きが複数の部署にまたがるなどして撤退に長時間かかり、進捗状況を確認するのも難しい。雇用に悪影響が出ることを懸念して行政側が難色を示すケースが多いことが背景にある。中国経済の減速に伴い撤退を検討する日本企業も増えているが、現状のままでは実務に影響が出て、今後の新規投資にも慎重にならざるを得ないため、中国当局に改善を求めた。」とあり、特段、目を引く内容はないように思える。

(余計な話だが、私は記事中にある「同行筋」といった表現が大嫌いだ。ひどいものになると「中国筋」まである。中国人は14億人いるのだ!匿名にするほどの内容ではないのだから、きちんとソースを明記するのが常道である。不確かな表現は不要な誤解や憶測を生み、悪影響は甚だしい)

中国は倒産から清算手続きに至る法的手続きが整備されていないため、しばしば夜逃げするか、雇用を気遣う地元政府に引き留められ「引くに引けない」状況に追い込まれる外資が後を絶たない。中国の労働コストによる製造業の撤退は、日本どころか中国企業でも見られる現象だ。取り立てて騒ぐ必要はない記事内容なのだが、どうしてか。ネットで出回った翻訳版が元凶だ。

以下、中国語版(http://www.360doc.com/content/16/0925/16/33004824_593534245.shtml)を忠実に再翻訳してみる。騒ぎがあまりにも大きくなりすぎたため、最初の文書は削除されている。興味深い内容であり、かつ深謀を感じさせる記事なので記録する必要があると判断した。

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「不安な日系企業の撤退」

外資が中国を離れるのは、今やすでにニュースではない。特に広東省の原料加工型企業は、経済の不調で倒産している事例が多い。ただ9月25日、ネットでさかんに流れたニュースには、やはり不安になる。そのニュースは、日本の大企業経営者が経済訪中団を結成し、22日商務省を訪れて、中国が日本企業の撤退計画に協力し、すみやかに撤退し、中国を離れられるよう求めたというものだ。

ネットを調べて分かったのは、日本の経済訪中団が来たことは事実で、中国の公式メディアは、張高麗副首相が21日、日本経済界の代表団と会見し、懇談したと伝えているが、会見の具体的内容について、公式メディアは一切実質的な報道をしていない。

日本から来た230人の経済訪中団は史上最大規模とされ、中国で4、5日だけ活動し、こっそり去っていったのは常識にかなっていない。

日本の中国経済に対する影響は、他国をはるかにしのいでいる。華国鋒、鄧小平による改革開放当初、西側諸国の反応は鈍く、中国には一般的に関心がなかった。日本企業は率先して対中投資をし、無利子、低利の借款をし、中国経済のテイクオフを強く促進した。。これは日本人が中国に対し友好的であると考える重要な理由になっている。実際、日本企業もまた十分な見返りを受け、中国市場で長期間にわたって優位に立ってきた。特に電器分野は顕著である。

その後、西側諸国の企業が続々と中国にやってきて、中国の日本企業に対する依頼度は徐々に減ってきた。

1989年、西側諸国が集団で中国に経済制裁を行ったが、その後、日本は真っ先に制裁を解除した。一部の自由主義者からは批判されたが、このことから日本の功利主義戦略を見て取ることができる。

そして今、日系企業は本当に撤退するのだろうか?日系企業の撤退は、富士康(フォックスコン)などの企業が生産ラインをベトナムやインドに移すのとは全く意義が異なることを知らなくてはならない。富士康の撤退による中国への打撃は、すでに多くの中国人が気にかけていないが、今回の日本は一企業の撤退ではなく、大規模で、集団の撤退なのだ。

このような重大なニュースに対し、中国のメディアは全く報じていないが、あるいは報じにくいのかも知れない。

事実を確認する方法や確信がない状況下で、われわれが日本企業撤退のニュースについて得られる情報は断片的である。撤退の具体的な内容さえはっきりしない。伝えられるところによると、日本経済訪中団は、中国政府に専門の窓口を設け、日本企業撤退の手続きを簡素化するよう求め、かつ明確に、現在、地方政府が行政許認可の権限を用い、残った利益の送金を引き延ばさせる現象がしばしばみられことも訴えている。日本企業がこれに抗議しているが、企業レベルでの交渉では効果がないため、ハイレベルの官僚が団を組織し、抗議に来るしかないともいうのである。

ここで重要な問題が出てくる。【利益の送金なのか、撤退し閉鎖するのか?】もし日本企業が利益を国内に送ろうとして中国政府や銀行に阻止され、日本が今回、送金の自由を求めているだけなら大した問題ではない。中国はただ法と信用に基づき対応すればよいだけだ。当初、日本から資金を投入する際、中国サイドは取り決めの部分については利益を中国に残し、その他は契約によって自主的に認め合えばよいことになっていた。もし中国側がその後、日系企業の利益に目がくらみ、一方的に妨害を設け、利益の流出を阻止しようとしているのであれば、信義則違反ということになる。またもし日本企業が今回、全体で団を組んで撤退するというのであれば、非常に重大な事件となる。経済が下方に向かう中国経済にとって泣きっ面にハチとなる。”中国通”とみなされている日本であれば、日本企業の行為は西側諸国の追随を招くことになる。

外資が中国を離れる原因は基本的に一致している。中国企業のコピー能力がとても強く、中国企業の内部コストが低く、中国政府部門の権力がとても強く、税金が高いということだ。だが今回の日本企業撤退は、もう一つ、政治的苦境の要因もあるに違いない。

日本とアメリカは、この50年来、中国にとって最も友好的な国家だった。だがこの二か国に限って、多くの中国人からしばしば悪魔化されてきた。アメリカについていえば、一連の体系的ではない曲解だ。日本については非常に系統的で、侵略の歴史から経済搾取、さらには釣魚島領土紛争に集中されている。

弾薬の地である釣魚島は、ロシアが中国から奪った領土の一万分の一か十万分の一で、いわゆる関連する地下の石油資源もまたむやみに持ち出され、関係を混乱させている。だが両国の政治家は釣魚島を口実に、国内の民族主義的感情を扇動している。日本の政治家は民族主義を通じて選挙の票を得ようとし、中国ではある勢力が民族主義によって合法性を取り繕い、国内の矛盾に対する視線をそらそうとたくらんでいる。その結果、日中関係はたえず悪化しているのだ。

現在、もし日系企業が大量に撤退すれば、中国経済は必ず被害を受け、民族主義に走る「憤青」(憤る青年)は失業しても、おそらく自分に罪があることに気づかないだろう。それどころか、ある憤青たちは中国は日本から離れてもいいが、日本は中国から離れられないと騒ぎ立てているが、その知的能力は、100年以上前の欽差大臣、林××(ママ)と同じレベルで、愚昧極まりなく、外国人は中国の大黄(※漢方薬)と茶がなければ大便が出ないと考えているのと同じだ(※かつての故事にならった、中国人の外国に対する無知を風刺した表現)。

いったい誰が誰に対する依頼度が高いのか?日本の海外に対する主な投資比率をみてみる。日本の公式統計によれば、日本はここ数年、中国への投資比率が低下し、現在、中国への投資は7%しかなく、東南アジアが15%、アメリカが35%、EUが26%だ。これはプライベート・ファンドの候安揚経理が提供してくれたデータだ。彼の博識と見識、そして厳格な分析に従えば、このデータは信用できる。日本語がわかれば日本政府のサイトで調べればよい。

中国の日本のハイテク産業に対する依存は長期的なものだ。明らかなように、日中友好は中国こそ重要なのだ。

今のところわれわれが見ることのできるこのニュースに関する報道は、一枚の日本の新聞の切り抜きでしかない。この切り抜きが伝えている日本サイドの意味は二つある。一つは、中国の投資環境改善に対する要求、もう一つは、日本企業が中国を撤退する際、行政の障害をなくしてほしいというものだ。

日系企業は何としても撤退すると要求しているわけではない。彼らは中国政府と駆け引きをしているのだ。どうであれ、中国の公式メディアはすみやかに事実に即した報道をし、中国は誠意を示して日本企業を引き留めなくてはならない。



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この文章の妙は、本来の意図が後半部分に隠されているのではないという点である。ニュース市場のツボを心得た、かつ政治状況に熟知した、かなりの書き手であることが看取される。振り回された人たち、私を含め、には迷惑なことだが。知れば知るほど、かかわればかかわるほど、深い国、深い人々であると感じる。

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