行雲流水の如く 日本語教師の独り言

30数年前、北京で中国語を学んだのが縁なのか、今度は自分が中国の若者に日本語を教える立場に。

中国メディア実習生の募集広告にびっくり!

2018-02-26 23:39:14 | 日記
ちょうど1年前、このブログで「中国のネットでとんでもなく流行っている『吐糟(tuzao 突っ込み)』と題する文章を書いた。
(2017-03-01日記)ttp://blog.goo.ne.jp/kato-takanori2015/e/133fd6299ebf074f8997a72d7e123a15

ネットで休息に広まっている流行語「吐糟(槽)」を紹介したものだ。「吐」は吐くことで、「糟」は日本と同じ酒かすの意味のほか、よくない物事に対して用いる。直訳すれば、「腹にたまったものを吐き出す」ということで、ある事件、事柄、人物の言動などあらゆる社会現象に対し、不満や中傷、批判、揶揄、風刺などを書き込むことを意味する。語源は、日本の漫才で使われる「突っ込み」から来ている。

4年生の卒業を前に、企業での実習が始まる。企業実習は、大学の必修科目であると同時に、そのまま就職のチャンスをつかむ貴重な機会である。実習先は大都市に集中するので、学生たちは下宿探しから始めなければならない。ひと足早く住まいを探し、もう住み始めている学生もいる。家賃が高いので、狭い部屋でも文句は言えない。

先日、実習生募集の広告を見ていて、興味深い表現を見つけた。お堅い新聞社がなんと「吐糟」の表現を使っていたので、大いに驚いた。



広東省を拠点とする新メディアの運営スタッフ募集で、条件は上から、

①広東語が堪能または話せる。
②SNS中毒者、ネット狂、ネットの話題通。
③自分の観点を持ち、「高級吐糟技能証書」を持っているもの。
④文章を書くのが好きで、日常的に書いているものを優先。
⑤3か月以上、1週間に4日以上出勤できること。
⑥大学4年、メディア、文学部専攻を優先。

と書かれている。「高級吐糟技能証書」といってもそんな証明書があるわけではない。気の利いた、鋭い、説得力のあるコメントを書き込める能力を言っていることは、学生たちにはすぐわかる。いつの間にか「吐糟」が公式メディアに公認され、「高級」「技能」と修飾語がつくほどにまで市民権を得ている。テンポの速さが現代用語にも表れているのは、文字の国にいて実に興味深い。

最後に、「当然重要なのは」として赤文字で「脳洞 naodong」とある。これもネット用語で、脳の洞、つまり想像力や創造力を求めている。人工知能(AI)が注目され、人間の脳の研究が急速に進む中、「脳」を用いた造語もますます増えるに違いない。造語をつかさどる脳の部位まで活性化していると想像するだけで、ワクワクしてくるではないか。

なお、比較的くだけたネットメディアの実習広告には、最後にこんな画像も添付されている。



学生たちの気を引くために、メディアも必死なのだろう。

中国の春節は静かになったというけれど・・・

2018-02-26 11:15:29 | 日記
中国の春節休暇が終わった。みんなが年々、春節が静かになっていくというけれど、同僚の先生から送られてきた写真は圧巻だった。彼の名は凌学敏(リン・シュエミン)。ミャンマーで育ち、台湾に移住し、日本で写真を学んだ。国際コンテストの受賞経験もある逸材だ。夫人が地元・汕頭の女性であることもあって、現地の風俗、習慣に詳しく、長年にわたって伝統文化を撮り続けている。

私も彼のおかげで、外からはうかがえない地元の表情に触れることができる。農村の宴席に呼ばれ、ブランデーをさんざん振る舞われたあげく、意識を失った武勇伝まである。

彼が、地元の春節を伝える写真を送ってくれた。驚く発見がいくつかあった。

中国ではすっかり廃れていると思っていた春節7日目の「七草がゆ」が、汕頭地区には残っていた。以前、授業で日本の七草がゆについて紹介した際も、学生たちはみな初耳だと言っていた。





中国式は、特定の七草ではなく、市場にある野菜をまとめて集めてくるという。十数種類になることもある。南方では春を迎えて野菜が多く出回る。その旬を楽しむのだ。健康もさることながら、みんなで食べれば気分もよくなる。そしてみんなにとって万事がうまくいきますように、との願いが込められる。家族で食を共にすることの尊さをみなが味わう。苦難をともに乗り越え、喜びを分かち合う。その味覚には数多くの記憶が刻まれるに違いない。

もう一つが、春節7日目から8日目にかけ、汕頭金平区の月浦社区で行われる「賀丁頭」だ。大学のすぐそばでこんな伝統儀式が行われているとは夢にも思わなかった。24歳男子の成長を祝う一種の通過儀礼で、大きなブタを祖先に捧げ、みなで分かち合う。明代から伝わる伝統だという。中国の成人は18歳だが、いよいよ一家の主となる男子を祝うのが「賀丁頭」なのだろう。男子が家督を継ぐ伝統が色濃く残っている。





大きなブタをさばき、耳にはイヤリングで装飾をし、口にはみかんを入れる。かつては24歳を迎える男子が自分で育てたブタを使っていたが、今はみな仕事で忙しいので、専門の養豚業者が用意する。祖先への報告が終わると、ブタを神輿にして、親族友人らが町中を駆け回る。







汕頭に隣接する掲陽市の塩城区磐東街道陽美村では春節5日目、かがり火を手に練り歩く「火把祭」が行われる。300年の歴史があり、2009年には国の無形文化財に登録されている。火に神意をみる文化である。





ここでも男子が神輿を担いで練り歩く儀式がある。潮汕地区の深い信仰を感じさせる。







日本に感謝しているという友人から届いた、素晴らしい春節のメッセージをありがたく思う。