定年 再就職とシネマの日々(旧かんちゃんSr.のオヤジな日々)

あと3年で70の大台です。再雇用の職場も定年、パート仕事をしています。映画と写真を愛しているオヤジです。

心の乖離...実は(コンパートメントNO.6)

2023年03月09日 15時10分00秒 | 日記

好意も嫌悪も表裏一体であることがわかる。

モスクワに留学中の考古学専攻のフィンランド人女子学生、ロシア最北端のムルマンスク行きの旅行を計画する。一緒に行く恋人(女性大学教授)がドタキャンとなり一人旅。

寝台列車の同室になったのは、ロシア人炭鉱労働者。初対面の挨拶から卑猥な言葉を投げかけられ、長旅の前途が暗澹たるものに。
無学vs学徒の会話は終始噛み合わないが、男が真っ直ぐな人間だということはわかる。

車掌と乗客の会話から、寝台があるコンパートメントは2等車であるゆえ、会話をせざるを得ない狭小な空間なのだ。
2人の持ち物から時代は1980年代か。女子学生が持つビデオカメラが盗難に遭った時点から、両者の感情の交わりが始まり。

他人の男女同室の寝台車など、今では有り得ない設定だが、半日くらい駅に停り、乗客が自由に散策に出掛けるなど、極寒地帯の悠長な旅である。

色恋がらみのストーリーではないが、切なくも清々しいラストでした。

仕事帰り、久しぶりの新宿シネマカリテ。コロナ禍以降、これも久しぶりの満席で最前列にて鑑賞。



ハマリ役

2023年03月07日 22時42分10秒 | 日記

てっきりS.スピルバーグ監督の成功譚と予測し映画館に行ったが、
ことのほか重いストーリーだった。

物語のスタートは1952年、両親とまだ6歳くらいのスピルバーグが、映画館に行くところから。
アッパーミドルのユダヤ系の家庭、父は当時将来の行末も判らないコンピュータ技師、母はピアニストである。
スピルバーグの感性は芸術家たる
母から受け継いだもの。

母を演じるのは、ミシェル・ウイリアムズ。悲しみを湛えた『マンチェスター・バイ・ザ・シー』の演技が忘れられない。
天真爛漫で自由奔放な母を演じ、
まさにハマリ役であった。
母の奔放さが後に、家庭に影を落とすことになるのだが。

ストーリー外では、ミシェル・ウイリアムズの1950年代ファッションに食いついてしまった。服飾の仕事をしている僕の倅・娘は必見かな。

目がまわった

2023年03月05日 00時22分00秒 | 日記

Everything Everywhere All at Once
この長いタイトル、言葉短縮を好む日本人であるから、必ずや短縮形が出現すると思えば、出ました「エブエブ」。その安易さがいただけません。

常に新基軸を打ち出すA24の作品。ハリウッド アジア系女優の至宝 ミシェル・ヨーを観たいがために、公開初日に立川立飛へ。

冒頭から登場人物のマシンガントーク。英語に広東語や北京語が混ざる様子は理解したが、字幕のフラッシュぶりにくらくらして、
どうにもストーリーをフォロー出来なかった。

動画を倍速をかけて見る、ユースの世代なら、すんなりと理解できるのであろうね。

帰宅して「ゆっくりミシェル」を堪能したくて、2011年公開『The Lady アウンサンスーチー引き裂かれた愛』の配信動画を観て、口直しをしたほどだ。

金曜日の夕方にもかかわらず、立川立飛のシネコンの部屋はガラガラに近く、鑑賞態勢だけはゆったりできた。




オリヴィア・コールマンの本領

2023年03月02日 23時00分00秒 | 日記

オリヴィア・コールマンの風貌は大勢の中ではもちろん西洋人なのに、単独で映るとどことなく東洋人ぽいところがある。そこに僕は惹かれる。
この作品では、伝統ある映画館・エンパイア劇場の統括マネージャーの役。出勤すると支配人の部屋に行き、電気ストーブの前に彼の上履きを置いて温めるのだ。
折り目正しく、同僚からの信頼も厚い英国女性だが、実は精神を病んでいる。その感情が闇の方向に向かうギリギリを、実に微細に演じ切る女優だ。
映画館スタッフの新入りは、建築を学ぶ夢を抱く黒人青年。時代背景は1980年代初め、折しも白人至上主義の風潮が社会全体を覆っている。
思うようにならない障壁を前にする青年と、母親くらい歳の差があるマネージャーとの恋の行方が、縦軸になっている。
コリン・ファースは、従来の役とはイメージが異なる支配人を演じることには驚いた。

まだ3月だが、今年上半期に心に刻まれる映画に出逢った。