■7月ネット句会■
■入賞発表/2013年7月14日■
【金賞】
★たっぷりと野菜を洗う水涼し/井上治代
夏は水が気持ちがよい。野菜を洗うにも手に水を楽しみながら洗う。夏野菜もいろいろとあって、新鮮そのもの。それが涼感を句にもたらしている。(高橋正子)
【銀賞】
★水注しに溢れる水を原爆忌/迫田和代
原爆が投下されたとき、多くの人は「水を!」と言って亡くなった。今、炎天下に水差しには溢れるほどの水がある。溢れる水は、原爆被害者への祈り。(高橋正子)
【銅賞/2句】
★お茶漬けに梅干し一つ雲の峰/下地鉄
雲の峰がもくもく湧き立つ日、お茶漬けに梅干し一つを入れて、さっぱりと食事をすませる。雲の白さと梅干しの赤のコントラストがさっぱりとしている。それに加え、暑ささに重なる日の丸のイメージがぬぐえない。(高橋正子)
★園丁の刈り残したる文字摺り草/佃 康水
園丁の優しさで、文字摺り草が刈り残された。小さなピンク色の花がらせん状に巻きあがる文字摺草は目立つ花ではないが、人を心優しくさせる花である。(高橋正子)
【高橋信之特選/7句】
★桃少し冷えふっくらと白み帯ぶ/高橋正子
生活の中の身近なものをしっかりと見ている。観察の眼がいいのだ。そして、それを言葉に乗せた。やさしさがある。(高橋信之)
★たっぷりと野菜を洗う水涼し/井上治代
水の透明感と動きがあり、夏らしくて良いです。(高橋句美子)
採れたてのみずみずしい夏野菜をたっぷりと水を流しながら洗う清々しさ。洗われた野菜の弾く水滴も涼しげです。 (柳原美知子)
★一面の青田へ開く朝の窓/柳原美知子
朝の窓から見える一面の青田がとても美しく、爽やかな風も感じられ、田園風景に感動いたします。 (藤田裕子)
★園丁の刈り残したる文字摺り草/佃 康水
手入れされた公園の芝生なのでしょう。刈り残された一筋、二筋の文字摺草がかわいく目に浮かびます。園丁の行き届いたお世話がうれしいです。(黒谷光子)
★お茶漬けに梅干し一つ雲の峰/下地鉄
常夏と言われる沖縄の夏は想像出来ませんが、本土とはまた違った暑さでしょうか。もくもくと湧きあがって来る夏の雲。真夏は食欲も減退気味となります。酷暑に対処出来るのは日本人にとって、やはり「お茶漬けに梅干し」が一番ですね。それにしても美しい青い海に囲まれた沖縄も素敵でしょうね。(佃 康水)
★迎火へ声を出さずに歌うたり/川名ますみ
今年もまた、父上の霊をお迎えなさったのでしょう。「声を出さずに歌う」の措辞に深い哀惜の情と、年月を経ての心の静まりを感じさせます。(小西 宏)
心の中で歌った歌は、今は天国に旅立った方との懐かしい思い出の歌なのでしょう。その歌はきっと天国まで届いたと思います。 (井上治代)
★水注しに溢れる水を原爆忌/迫田和代
原爆投下によって大きな火傷を受けた被爆者は「水!水!」と言いつつ亡くなって行きました。作者は被爆者であるからこその深い思いを如実に表わされた実感の御句と思います。原爆を直視出来るようになった事は俳句のお蔭と仰った作者の気持ちが伝わります。(佃 康水)
【高橋正子特選/7句】
★夏山の輝く朝に傘を干す/安藤智久
山で傘を干すという発想が面白い。しかし、本当はありそうなことなのだ。「傘を干す」という表現によって夏山の輝きが一段と映える。(小西 宏)
★空晴れて今日の自由を得し揚羽/高橋信之
夏に見られる揚羽蝶は黄色地に黒の縞模様を持ち大きく美しい。梅雨の間は弱々しく飛び、蝶も梅雨明けと同時に太陽の日をいっぱいに受け大きく気持よく飛び回っている。青空のもと気持の良い景です。 (小口泰與)
★たっぷりと野菜を洗う水涼し/井上治代
水を流しながらみずみずしい夏野菜を洗うひととき。お暮しの中での格別な涼感と心豊かさが感じられます。(藤田洋子)
★星空へ蝉声ほそく鳴き出せり/藤田裕子
梅雨が明け真夏の厳しい日々が続き、蝉の声も聞こえる様になって参りました。生まれたたばかりの蝉は、未だか弱い声で鳴き始めますが、それを「ほそく鳴きだせり」と詠われ、又美しい星空を仰ぎながら初蝉への慈しみの想いと嬉しさの入り混じった御句と思います。(佃 康水)
夜を迎えようやく静まった蝉の声。そこにまた静かに鳴き始める一匹の蝉。星空とあいまって哀感の漂うひと時です。(小西 宏)
★水注しに溢れる水を原爆忌/迫田和代
原爆投下によって大きな火傷を受けた被爆者は「水!水!」と言いつつ亡くなって行きました。作者は被爆者であるからこその深い思いを如実に表わされた実感の御句と思います。原爆を直視出来るようになった事は俳句のお蔭と仰った作者の気持ちが伝わります。(佃 康水)
★園丁の刈り残したる文字摺り草/佃 康水
手入れされた公園の芝生なのでしょう。刈り残された一筋、二筋の文字摺草がかわいく目に浮かびます。園丁の行き届いたお世話がうれしいです。(黒谷光子)
★お茶漬けに梅干し一つ雲の峰/下地鉄
常夏と言われる沖縄の夏は想像出来ませんが、本土とはまた違った暑さでしょうか。もくもくと湧きあがって来る夏の雲。真夏は食欲も減退気味となります。酷暑に対処出来るのは日本人にとって、やはり「お茶漬けに梅干し」が一番ですね。それにしても美しい青い海に囲まれた沖縄も素敵でしょうね。(佃 康水)
【入選/21句】
★青芝に座し湖の青山の青/黒谷光子
青が三つありますが それぞれに違った青と思います。青芝は新芽の柔らかな青ですし 湖は深い青 山の青は新緑の燃え立つ緑っぽい青でしょう。大きな句ですね。(迫田和代)
★咲き残る一輪湖畔の夏椿/黒谷光子
湖にはさざ波がたち、夏椿の白い花が涼しそうで、ほっとするひとときです。 (井上治代)
★投網打つ夏の夕日をからめては/小口泰與
少し涼しくなってきた夕方の投網、何回も何回も投げては引き上げる網、「夕日もからめて」だんだん暗くなってゆく前の明るい投網を見ているのでしょうか。 (祝恵子)
投網が広がり水に落ちる一瞬の美しさ。網に「からんだ」夏の夕陽の輝きが印象的です。(安藤智久)
夕日がきらめく川面にさっと広がる投網。水面に落ちるときの一瞬を上手く捉えた。 (古田敬二)
★湖よりの風にさ揺らぐ夏の萩/黒谷光子
早くも咲きだした萩が「風に狭揺らぐ」優美な景が目に浮かびます。(河野啓一)
★山葵田を駈け上がり来る夏の霧/安藤智久
山葵田はきっと標高何百メートルかの場所に有るのでしょう。私達は夏の霧と言えば遠山や遠海にかかって居る状態しか見ませんが、自分の居場所、足元へ駈け上がって来る夏霧をリアルに詠まれ臨場感溢れる御句です。 (佃 康水)
★八ヶ岳暮れ山すその青田美し/小川和子
暮れ時の八ヶ岳の美しさ。その裾野に広がる青田の美しさ。これぞ日本の夏という風情がうかがい知れます。 (高橋秀之)
★石鎚の峰をはるかに青田風/柳原美知子
四国山脈の最高峰石槌より吹き下ろす風、田植えが終わりほっとひと息青田風が心地よい。 (古賀一弘)
★一試合済ませて来たと日焼けの子/ 祝恵子
きっと真っ黒に日に焼けた子どもが笑顔で報告しているのでしょう。夏の楽しい思い出を積み重ねている元気な子どもが見えてきます。(高橋秀之)
★夕闇の夜空に高き長刀鉾/桑本栄太郎
山鉾の先頭を行く長刀鉾も、今はひかれゆく日を待ち夕闇の中で出番を待っているのでしょう。 (祝恵子)
長刀鉾が暮れてきたばかりの夜空に向かって高く掲げられている様子は、祇園祭の高揚感とあいまって夏を強く感じさせてくれます。(高橋秀之)
★花萱草三輪ほどの香りかな/渋谷洋介
草むらに咲いているのでしょうか、三輪の花萱草。色と香りで、存在を示しているようです。 (祝恵子)
★青時雨弾み吊り橋渡りきる/小川和子
青葉山の中の吊橋を渡っているときに雨に会い、怖々と橋を渡り切った安堵感でしょうか。 (祝恵子)
★夏の海漁火きらら波に映え/ 河野啓一
漁火が波に反射してきらきらと光って見えている夏の海は、まだまだこれから漁が本番という感じでしょうか。そこに躍動感が感じられます。(高橋秀之)
★夏休み心弾みし時空かな/古賀一弘
幼時の回想を交えた哲学的な響きのある詠みが魅力と思います。無限の時空を感じる自由な夏休みです。 (河野啓一)
★昼寝覚ベッドぐらしも日々あらた/矢野文彦
多くベッド暮らしをされている作者の日々新たな感覚。精神活動の若さが伝わってきます。 (河野啓一)
★石段に沿って紫陽花咲く青さ/高橋句美子
石段に沿って咲き満ちている紫陽花の落ち着いたたずまい。社寺を訪れて感じる日本人の心の原風景の一つでありましょう。 (河野啓一)
石段の両脇をうずめる紫陽花の青が透き通って涼しげに感じられます。(小西 宏)
★潮風と夏草香る埋立地/高橋秀之
まだ、ただ土を積まれたばかりの埋立地。潮風と夏草の匂いに、広大な土地と海の光が伝わってきます。(小西 宏)
海に近い埋立地には夏草が生い茂り、海からの風の香りとまじり合っています。暑い夏も潮風にあたると、心地よく清々しい気持ちになれます。 (井上治代)
★初蝉の朝朗々と鳴き出でし/藤田洋子
朝の明かりと共に朗々と鳴き出だす蝉の声。いよいよ夏の日の始まりです。(小西 宏)
今年初めて聴く蝉の声。夏本番になった気持ちになります。「朗々と」という表現が蝉の鳴き声をうまく表していると思いました。 (井上治代)
★山深し老鶯鳴きつつ遠ざかる/古田敬二
山深く分け入って行きますと、鶯の声が聞こえてきました。そして、だんだんと遠のき、かすかになってゆきました。老鶯への哀感が漂っています。 (藤田裕子)
★凌霄や雲疾(と)く流る夕浅間/小口泰與
夕暮れ時、凌霄の咲きのぼる景と、浅間山の上を雲が疾(と)く流れる景が、雄大で力強く感じられます。気象の変化も予感しているようです。 (藤田裕子)
★復元の市電に夏の日の反射/小西 宏
夏の強い日差しが市電に反射して眩いばかりです。その市電は復元されたもので、懐かしさが込み上げてまいります。炎天のもと、復元された市電に遇った喜びも感じられます。 (藤田裕子)
★夏蓬刈られ青き香放ちけり/井上治代
炎熱と湿気の溢れる今の時季は人間にとっては暑くて辛い季節であるが、植物にとっては生長へのエネルギーとなる大切な時である。夏草そのものも香りが強いが、わけても蓬の刈られた時の芳香は強く、作者にとってはその香りは農作業を行っている自身と自然への歓喜の讃歌である。(桑本栄太郎)
夏草の茂りは旺盛です。春に萌えでた蓬草も、今や高々と伸び、刈りとられたのでしょう。草いきれの強い香に生命感を感じます。(小川和子)
■選者詠/高橋信之
★空晴れて今日の自由を得し揚羽
夏に見られる揚羽蝶は黄色地に黒の縞模様を持ち大きく美しい。梅雨の間は弱々しく飛び、蝶も梅雨明けと同時に太陽の日をいっぱいに受け大きく気持よく飛び回っている。青空のもと気持の良い景です。 (小口泰與)
★サルビアに歯科医の門に正午の陽
歯科医院の門前に植えられたサルビア。あらゆるものを射す正午の陽に、サルビアも門も等しく光を放っています。自然な言葉遣いながら、サ行に刻まれるリズム、濁音・撥音・長音の響きが心地好く、音も好きな俳句です。 (川名ますみ)
★寺苑清浄蓮の蕾のふくらみに
寺苑の清浄な空気の中で、開花する前の蓮の蕾の清らかさが、まるで浄土にいるような心地です。聖なる花の蕾のふくらみに、心澄み、心洗われます。 (藤田洋子)
■選者詠/高橋正子
★桃少し冷えふっくらと白み帯ぶ
生活の中の身近なものをしっかりと見ている。観察の眼がいいのだ。そして、それを言葉に乗せた。やさしさがある。(高橋信之)
★開ききり今朝の朝顔疵もなし
朝顔を育てて感じたことですが、疵もなく涼やかに開き切ってくれる花は案外少ないようです。今朝の朝顔の素晴らしさに感激です。 (河野啓一)
★蓮つぼみ尖り炎暑のうすみどり
大きな蓮の葉が池を覆い尽くしその狭間から先が尖り合掌の形につぼみが抜きん出ています。炎暑の中、つぼみのうすみどりはとても清らかで気持を癒してくれます。 (佃 康水)
■互選高点句
●最高点(10点)
★たっぷりと野菜を洗う水涼し/井上治代
●次点(7点)
★投網打つ夏の夕日をからめては/小口泰與
※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)
■入賞発表/2013年7月14日■
【金賞】
★たっぷりと野菜を洗う水涼し/井上治代
夏は水が気持ちがよい。野菜を洗うにも手に水を楽しみながら洗う。夏野菜もいろいろとあって、新鮮そのもの。それが涼感を句にもたらしている。(高橋正子)
【銀賞】
★水注しに溢れる水を原爆忌/迫田和代
原爆が投下されたとき、多くの人は「水を!」と言って亡くなった。今、炎天下に水差しには溢れるほどの水がある。溢れる水は、原爆被害者への祈り。(高橋正子)
【銅賞/2句】
★お茶漬けに梅干し一つ雲の峰/下地鉄
雲の峰がもくもく湧き立つ日、お茶漬けに梅干し一つを入れて、さっぱりと食事をすませる。雲の白さと梅干しの赤のコントラストがさっぱりとしている。それに加え、暑ささに重なる日の丸のイメージがぬぐえない。(高橋正子)
★園丁の刈り残したる文字摺り草/佃 康水
園丁の優しさで、文字摺り草が刈り残された。小さなピンク色の花がらせん状に巻きあがる文字摺草は目立つ花ではないが、人を心優しくさせる花である。(高橋正子)
【高橋信之特選/7句】
★桃少し冷えふっくらと白み帯ぶ/高橋正子
生活の中の身近なものをしっかりと見ている。観察の眼がいいのだ。そして、それを言葉に乗せた。やさしさがある。(高橋信之)
★たっぷりと野菜を洗う水涼し/井上治代
水の透明感と動きがあり、夏らしくて良いです。(高橋句美子)
採れたてのみずみずしい夏野菜をたっぷりと水を流しながら洗う清々しさ。洗われた野菜の弾く水滴も涼しげです。 (柳原美知子)
★一面の青田へ開く朝の窓/柳原美知子
朝の窓から見える一面の青田がとても美しく、爽やかな風も感じられ、田園風景に感動いたします。 (藤田裕子)
★園丁の刈り残したる文字摺り草/佃 康水
手入れされた公園の芝生なのでしょう。刈り残された一筋、二筋の文字摺草がかわいく目に浮かびます。園丁の行き届いたお世話がうれしいです。(黒谷光子)
★お茶漬けに梅干し一つ雲の峰/下地鉄
常夏と言われる沖縄の夏は想像出来ませんが、本土とはまた違った暑さでしょうか。もくもくと湧きあがって来る夏の雲。真夏は食欲も減退気味となります。酷暑に対処出来るのは日本人にとって、やはり「お茶漬けに梅干し」が一番ですね。それにしても美しい青い海に囲まれた沖縄も素敵でしょうね。(佃 康水)
★迎火へ声を出さずに歌うたり/川名ますみ
今年もまた、父上の霊をお迎えなさったのでしょう。「声を出さずに歌う」の措辞に深い哀惜の情と、年月を経ての心の静まりを感じさせます。(小西 宏)
心の中で歌った歌は、今は天国に旅立った方との懐かしい思い出の歌なのでしょう。その歌はきっと天国まで届いたと思います。 (井上治代)
★水注しに溢れる水を原爆忌/迫田和代
原爆投下によって大きな火傷を受けた被爆者は「水!水!」と言いつつ亡くなって行きました。作者は被爆者であるからこその深い思いを如実に表わされた実感の御句と思います。原爆を直視出来るようになった事は俳句のお蔭と仰った作者の気持ちが伝わります。(佃 康水)
【高橋正子特選/7句】
★夏山の輝く朝に傘を干す/安藤智久
山で傘を干すという発想が面白い。しかし、本当はありそうなことなのだ。「傘を干す」という表現によって夏山の輝きが一段と映える。(小西 宏)
★空晴れて今日の自由を得し揚羽/高橋信之
夏に見られる揚羽蝶は黄色地に黒の縞模様を持ち大きく美しい。梅雨の間は弱々しく飛び、蝶も梅雨明けと同時に太陽の日をいっぱいに受け大きく気持よく飛び回っている。青空のもと気持の良い景です。 (小口泰與)
★たっぷりと野菜を洗う水涼し/井上治代
水を流しながらみずみずしい夏野菜を洗うひととき。お暮しの中での格別な涼感と心豊かさが感じられます。(藤田洋子)
★星空へ蝉声ほそく鳴き出せり/藤田裕子
梅雨が明け真夏の厳しい日々が続き、蝉の声も聞こえる様になって参りました。生まれたたばかりの蝉は、未だか弱い声で鳴き始めますが、それを「ほそく鳴きだせり」と詠われ、又美しい星空を仰ぎながら初蝉への慈しみの想いと嬉しさの入り混じった御句と思います。(佃 康水)
夜を迎えようやく静まった蝉の声。そこにまた静かに鳴き始める一匹の蝉。星空とあいまって哀感の漂うひと時です。(小西 宏)
★水注しに溢れる水を原爆忌/迫田和代
原爆投下によって大きな火傷を受けた被爆者は「水!水!」と言いつつ亡くなって行きました。作者は被爆者であるからこその深い思いを如実に表わされた実感の御句と思います。原爆を直視出来るようになった事は俳句のお蔭と仰った作者の気持ちが伝わります。(佃 康水)
★園丁の刈り残したる文字摺り草/佃 康水
手入れされた公園の芝生なのでしょう。刈り残された一筋、二筋の文字摺草がかわいく目に浮かびます。園丁の行き届いたお世話がうれしいです。(黒谷光子)
★お茶漬けに梅干し一つ雲の峰/下地鉄
常夏と言われる沖縄の夏は想像出来ませんが、本土とはまた違った暑さでしょうか。もくもくと湧きあがって来る夏の雲。真夏は食欲も減退気味となります。酷暑に対処出来るのは日本人にとって、やはり「お茶漬けに梅干し」が一番ですね。それにしても美しい青い海に囲まれた沖縄も素敵でしょうね。(佃 康水)
【入選/21句】
★青芝に座し湖の青山の青/黒谷光子
青が三つありますが それぞれに違った青と思います。青芝は新芽の柔らかな青ですし 湖は深い青 山の青は新緑の燃え立つ緑っぽい青でしょう。大きな句ですね。(迫田和代)
★咲き残る一輪湖畔の夏椿/黒谷光子
湖にはさざ波がたち、夏椿の白い花が涼しそうで、ほっとするひとときです。 (井上治代)
★投網打つ夏の夕日をからめては/小口泰與
少し涼しくなってきた夕方の投網、何回も何回も投げては引き上げる網、「夕日もからめて」だんだん暗くなってゆく前の明るい投網を見ているのでしょうか。 (祝恵子)
投網が広がり水に落ちる一瞬の美しさ。網に「からんだ」夏の夕陽の輝きが印象的です。(安藤智久)
夕日がきらめく川面にさっと広がる投網。水面に落ちるときの一瞬を上手く捉えた。 (古田敬二)
★湖よりの風にさ揺らぐ夏の萩/黒谷光子
早くも咲きだした萩が「風に狭揺らぐ」優美な景が目に浮かびます。(河野啓一)
★山葵田を駈け上がり来る夏の霧/安藤智久
山葵田はきっと標高何百メートルかの場所に有るのでしょう。私達は夏の霧と言えば遠山や遠海にかかって居る状態しか見ませんが、自分の居場所、足元へ駈け上がって来る夏霧をリアルに詠まれ臨場感溢れる御句です。 (佃 康水)
★八ヶ岳暮れ山すその青田美し/小川和子
暮れ時の八ヶ岳の美しさ。その裾野に広がる青田の美しさ。これぞ日本の夏という風情がうかがい知れます。 (高橋秀之)
★石鎚の峰をはるかに青田風/柳原美知子
四国山脈の最高峰石槌より吹き下ろす風、田植えが終わりほっとひと息青田風が心地よい。 (古賀一弘)
★一試合済ませて来たと日焼けの子/ 祝恵子
きっと真っ黒に日に焼けた子どもが笑顔で報告しているのでしょう。夏の楽しい思い出を積み重ねている元気な子どもが見えてきます。(高橋秀之)
★夕闇の夜空に高き長刀鉾/桑本栄太郎
山鉾の先頭を行く長刀鉾も、今はひかれゆく日を待ち夕闇の中で出番を待っているのでしょう。 (祝恵子)
長刀鉾が暮れてきたばかりの夜空に向かって高く掲げられている様子は、祇園祭の高揚感とあいまって夏を強く感じさせてくれます。(高橋秀之)
★花萱草三輪ほどの香りかな/渋谷洋介
草むらに咲いているのでしょうか、三輪の花萱草。色と香りで、存在を示しているようです。 (祝恵子)
★青時雨弾み吊り橋渡りきる/小川和子
青葉山の中の吊橋を渡っているときに雨に会い、怖々と橋を渡り切った安堵感でしょうか。 (祝恵子)
★夏の海漁火きらら波に映え/ 河野啓一
漁火が波に反射してきらきらと光って見えている夏の海は、まだまだこれから漁が本番という感じでしょうか。そこに躍動感が感じられます。(高橋秀之)
★夏休み心弾みし時空かな/古賀一弘
幼時の回想を交えた哲学的な響きのある詠みが魅力と思います。無限の時空を感じる自由な夏休みです。 (河野啓一)
★昼寝覚ベッドぐらしも日々あらた/矢野文彦
多くベッド暮らしをされている作者の日々新たな感覚。精神活動の若さが伝わってきます。 (河野啓一)
★石段に沿って紫陽花咲く青さ/高橋句美子
石段に沿って咲き満ちている紫陽花の落ち着いたたずまい。社寺を訪れて感じる日本人の心の原風景の一つでありましょう。 (河野啓一)
石段の両脇をうずめる紫陽花の青が透き通って涼しげに感じられます。(小西 宏)
★潮風と夏草香る埋立地/高橋秀之
まだ、ただ土を積まれたばかりの埋立地。潮風と夏草の匂いに、広大な土地と海の光が伝わってきます。(小西 宏)
海に近い埋立地には夏草が生い茂り、海からの風の香りとまじり合っています。暑い夏も潮風にあたると、心地よく清々しい気持ちになれます。 (井上治代)
★初蝉の朝朗々と鳴き出でし/藤田洋子
朝の明かりと共に朗々と鳴き出だす蝉の声。いよいよ夏の日の始まりです。(小西 宏)
今年初めて聴く蝉の声。夏本番になった気持ちになります。「朗々と」という表現が蝉の鳴き声をうまく表していると思いました。 (井上治代)
★山深し老鶯鳴きつつ遠ざかる/古田敬二
山深く分け入って行きますと、鶯の声が聞こえてきました。そして、だんだんと遠のき、かすかになってゆきました。老鶯への哀感が漂っています。 (藤田裕子)
★凌霄や雲疾(と)く流る夕浅間/小口泰與
夕暮れ時、凌霄の咲きのぼる景と、浅間山の上を雲が疾(と)く流れる景が、雄大で力強く感じられます。気象の変化も予感しているようです。 (藤田裕子)
★復元の市電に夏の日の反射/小西 宏
夏の強い日差しが市電に反射して眩いばかりです。その市電は復元されたもので、懐かしさが込み上げてまいります。炎天のもと、復元された市電に遇った喜びも感じられます。 (藤田裕子)
★夏蓬刈られ青き香放ちけり/井上治代
炎熱と湿気の溢れる今の時季は人間にとっては暑くて辛い季節であるが、植物にとっては生長へのエネルギーとなる大切な時である。夏草そのものも香りが強いが、わけても蓬の刈られた時の芳香は強く、作者にとってはその香りは農作業を行っている自身と自然への歓喜の讃歌である。(桑本栄太郎)
夏草の茂りは旺盛です。春に萌えでた蓬草も、今や高々と伸び、刈りとられたのでしょう。草いきれの強い香に生命感を感じます。(小川和子)
■選者詠/高橋信之
★空晴れて今日の自由を得し揚羽
夏に見られる揚羽蝶は黄色地に黒の縞模様を持ち大きく美しい。梅雨の間は弱々しく飛び、蝶も梅雨明けと同時に太陽の日をいっぱいに受け大きく気持よく飛び回っている。青空のもと気持の良い景です。 (小口泰與)
★サルビアに歯科医の門に正午の陽
歯科医院の門前に植えられたサルビア。あらゆるものを射す正午の陽に、サルビアも門も等しく光を放っています。自然な言葉遣いながら、サ行に刻まれるリズム、濁音・撥音・長音の響きが心地好く、音も好きな俳句です。 (川名ますみ)
★寺苑清浄蓮の蕾のふくらみに
寺苑の清浄な空気の中で、開花する前の蓮の蕾の清らかさが、まるで浄土にいるような心地です。聖なる花の蕾のふくらみに、心澄み、心洗われます。 (藤田洋子)
■選者詠/高橋正子
★桃少し冷えふっくらと白み帯ぶ
生活の中の身近なものをしっかりと見ている。観察の眼がいいのだ。そして、それを言葉に乗せた。やさしさがある。(高橋信之)
★開ききり今朝の朝顔疵もなし
朝顔を育てて感じたことですが、疵もなく涼やかに開き切ってくれる花は案外少ないようです。今朝の朝顔の素晴らしさに感激です。 (河野啓一)
★蓮つぼみ尖り炎暑のうすみどり
大きな蓮の葉が池を覆い尽くしその狭間から先が尖り合掌の形につぼみが抜きん出ています。炎暑の中、つぼみのうすみどりはとても清らかで気持を癒してくれます。 (佃 康水)
■互選高点句
●最高点(10点)
★たっぷりと野菜を洗う水涼し/井上治代
●次点(7点)
★投網打つ夏の夕日をからめては/小口泰與
※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)
7月ネット句会を開催いただきましてありがとうございました。句会では「青時雨」の句と「八ヶ岳」の句を入選にお選びくださり御礼申し上げます。黒谷光子様には「青時雨」の句に選を頂きありがとうございます。祝恵子様、同句に温かいコメントをありがとうございます。木曾、飛騨白川郷界隈をバス旅行してきました。小西宏様、高橋秀之様には「八ヶ岳」の句に選を頂きありがとうございます。秀之様にはうれしいコメントをお寄せくださり御礼申し上げます。スタッフの皆様ありがとうございました。
こちらではちょうどお盆の入りで、その場に浮かぶ言葉を投句いたしましたが、その内の「迎火へ声を出さずに歌うたり」へ、思い掛けず信之先生の特選を賜り、嬉しく存じます。宏さま、治代さまには、心境をお察し下さる、お優しいコメントを頂き、幾度も拝読しました。幸せです。
洋子さま、今月も集計のお世話に預かり、ありがうございます。スタッフの皆さま、いつも寄り掛かるばかりで恐れ入ります。両先生初め皆さまへ、あらためてお礼申し上げます。どうか暑さがお体に障りませんように。おいとい下さいませ。
パソコンが不調で書き込みができませんでしたので、お礼を遅くなりました。
皆様のお句にひとときの涼を感じさせていただきました。
「青田」の句を信之先生の特選に、「青田風」の句を入選にお取りいただき、とても嬉しく感謝申し上げます。
藤田裕子様には同句に温かいコメントを、小西宏様、安藤智久様、藤田洋子様には選をいただき、ありがとうございました。
古賀一弘様には「青田風」の句に嬉しいコメントを、桑本
栄太郎様、古田敬二様、井上治代様には選をいただき、
ありがとうございました。
藤田洋子様、スタッフの皆様にはお世話をいただき、感謝申し上げます。
正子先生
花冠7月ネット句会を開催いただき有り難うございました。その上 原爆の句を 銀賞にして戴き両先生の特別賞をいただけるなんて夢を見るような思いでした。原爆を真正面から見れるようになったのは 花冠のお陰と思ってます。私には大きな出来事です。これまでずっと苦しんできたのですから。幾重にもお礼を言いたいと思います。有り難うございます。
佃様
お優しいコメント嬉しかったです。おっしやる通り よくお判りと感心しております。
藤田様 当番スタッフの皆様
何時も御世話様です。これからもよろしくお願いします。
河野啓一様、こ句に嬉しいコメント有難うございます。
7月ネット句会を開催頂き、大変有難うございます。連日の猛暑の中、又、ご多忙中の所色々お世話頂き大変感謝申し上げます。全国至る場所からの真夏の様子がうかがえ、楽しいネット句会でした。
「夕闇の夜空に高く長刀鉾」の句を入選句にお選び頂き大変有難うございます。まだ少し青空を残す夕空と四条通りの街の明かりに立ち上がる長刀鉾は、下から眺めますと意外に高く感じ、祇園祭りの雰囲気が盛り上がります。
祝恵子様、高橋秀之様には同句に素敵なコメントを頂戴しまして厚く御礼申し上げます。又、小西 宏様、古賀一弘様には「鉾立ての四条通りの炎暑かな」の句に貴重なる選を頂戴しまして大変有難うございます。藤田洋子様にはいつもながらお忙しい所、集計の労を頂き大変有難うございます。
益々暑さが厳しくなる折柄、両先生をはじめ会員の皆様には充分に健康に留意され、ご建吟
そして日々お過ごしされますようお祈りし、お礼の言葉とさせて頂きます。
高橋信之先生、高橋正子先生
7月ネット句会の開催頂ありがとうございました。
30周年記念行事などお忙しい中、お世話になりました。
また、潮風と夏草香る埋立地の句を入選句にお選びくださりありがとうございました。
小西宏さま、井上治代さまには、同句にコメントをいただきましてありがとうございました。
藤田洋子さま、今月も集計のお世話をいただきありがうございました
7月ネット句会の開催頂ありがとうございました。
30周年記念行事などお忙しい中、お世話になりました。
また、潮風と夏草香る埋立地の句を入選句にお選びくださりありがとうございました。
小西宏さま、井上治代さまには、同句にコメントをいただきましてありがとうございました。
藤田洋子さま、今月も集計のお世話をいただきありがうございました
連日の厳しい暑さ、また、ご多忙の中、今月も充実した句会を開催してくださり、心から感謝いたします。やはり皆さんとのネット句会は楽しく学び合えるものがたくさんあります。
正子先生の特選に、「蝉声ほそく」の句をお選びいただきまして、お礼申し上げます。佃康水様、小西宏様、同句に温かいコメントを頂戴しまして有難うございます。とてもうれしく読ませていただきました。お礼申し上げます。
藤田洋子様、今月も集計のお世話をいただき有難うございました。
入選句に「初蝉」の句を選んでいただき大変ありがとうございました。同句に、小西宏様、井上治代様、コメントを寄せていただき嬉しいかぎりです。ありがとうございました。
古田敬二様、「梅雨明け」の句に選句をいただきありがとうございました。
河野啓一様、小川和子様、「初蝉」の句に選句をいただきありがとうございました。
高橋秀之様、同句へ温かいコメントを頂きありがとうございました。
同句に 選句頂きました 小西 宏様、迫田和代様、黒谷光子様、藤田洋子様、古賀一弘様、誠にありがとうございました。
「7月ネット句会」大変お世話になり有難うございました。
両先生には「園丁の刈り残したる文字摺り草」の句を特選にそして銅賞2句にお選びくださり、正子先生には温かい素晴らしい句評を賜り誠に有難うございます。植物公園の展望台が芝生の上に建っていて、その芝生を手入れされて居たのですが文字摺り草が残されているのを見てすごく嬉しくなりました。先生の仰る通りの気持ちでした。
黒谷光子様同句へ選を頂き温かいコメントを賜りありがとうございます。園丁にも文字摺り草も優しさを感じました。
迫田和代様 井上治代様「釣忍」の句に貴重な選を有難うございました。柳原美智子様 「初蜻蛉」の句に貴重な選を有難うございました。
大変お忙しいなか、7月度ネット句会を開催して頂き誠に有難うございました。「夏の海」の句を入選句にお選び頂きお礼申し上げます。
同句に貴重な選を頂きました高橋久句美子さまと素敵なコメントをお寄せ下さいました高橋秀之様に厚くお礼申しあげます。
「アガパンサス」の句に選を頂きました安藤智久さま、運営スタッフの皆さま方に厚く御礼申し上げます。
大変にお忙しい所、7月度ネット句会を開催して頂き有難う御座いました。
その上、両先生には「夏の夕日」と「凌霄」の句を入選句にお取り上げ頂き有難う御座いました。
安藤智久様、古田敬二様
「夏の夕日」の句に素晴らしいコメントをそれぞれ頂き、楽しく拝読させて頂きました。有難う御座います。
藤田裕子様
「凌霄」の句に嬉しいコメントを頂き、楽しく拝読させて頂きました。有難う御座います。
寺苑の清浄な空気の中で、開花する前の蓮の蕾の清らかさが、まるで浄土にいるような心地です。聖なる花の蕾のふくらみに、心澄み、心洗われます。
「復元の市電に夏の日の反射」を【入選/21句】にお選びくださり、たいへんありがとうございました。近所の公園に横浜市電が復元され、展示されています。
藤田裕子さま
あたたかなコメントをお送りくださり、とても嬉しく思っております。ありがとうございました。
大きな蓮の葉が池を覆い尽くしその狭間から先が尖り合掌の形につぼみが抜きん出ています。炎暑の中、つぼみのうすみどりはとても清らかで気持を癒してくれます。
心の中で歌った歌は、今は天国に旅立った方との懐かしい思い出の歌なのでしょう。その歌はきっと天国まで届いたと思います。
★潮風と夏草香る埋立地/高橋秀之
海に近い埋立地には夏草が生い茂り、海からの風の香りとまじり合っています。暑い夏も潮風にあたると、心地よく清々しい気持ちになれます。
★初蝉の朝朗々と鳴き出でし/藤田洋子
今年初めて聴く蝉の声。夏本番になった気持ちになります。「朗々と」という表現が蝉の鳴き声をうまく表していると思いました。
山深く分け入って行きますと、鶯の声が聞こえてきました。そして、だんだんと遠のき、かすかになってゆきました。老鶯への哀感が漂っています。
★凌霄や雲疾(と)く流る夕浅間/小口泰與
夕暮れ時、凌霄の咲きのぼる景と、浅間山の上を雲が疾(と)く流れる景が、雄大で力強く感じられます。気象の変化も予感しているようです。
★復元の市電に夏の日の反射/小西 宏
夏の強い日差しが市電に反射して眩いばかりです。その市電は復元されたもので、懐かしさが込み上げてまいります。炎天のもと、復元された市電に遇った喜びも感じられます。
今年もまた、父上の霊をお迎えなさったのでしょう。「声を出さずに歌う」の措辞に深い哀惜の情と、年月を経ての心の静まりを感じさせます。
★星空へ蝉声ほそく鳴き出せり/藤田裕子
夜を迎えようやく静まった蝉の声。そこにまた静かに鳴き始める一匹の蝉。星空とあいまって哀感の漂うひと時です。
★潮風と夏草香る埋立地/高橋秀之
まだ、ただ土を積まれたばかりの埋立地。潮風と夏草の匂いに、広大な土地と海の光が伝わってきます。
★初蝉の朝朗々と鳴き出でし/藤田洋子朝の明かりと共に朗々と鳴き出だす蝉の声。いよいよ夏の日の始まりです。
★石段に沿って紫陽花咲く青さ/高橋句美子
石段の両脇をうずめる紫陽花の青が透き通って涼しげに感じられます。
幼時の回想を交えた哲学的な響きのある詠みが魅力と思います。無限の時空を感じる自由な夏休みです。
★昼寝覚ベッドぐらしも日々あらた/矢野文彦
多くベッド暮らしをされている作者の日々新たな感覚。精神活動の若さが伝わってきます。
★石段に沿って紫陽花咲く青さ/高橋句美子
石段に沿って咲き満ちている紫陽花の落ち着いたたずまい。社寺を訪れて感じる日本人の心の原風景の一つでありましょう。
★開ききり今朝の朝顔疵もなし
朝顔を育てて感じたことですが、疵もなく涼やかに開き切ってくれる花は案外少ないようです。今朝の朝顔の素晴らしさに感激です。
原爆投下によって大きな火傷を受けた被爆者は「水!水!」と言いつつ亡くなって行きました。作者は被爆者であるからこその深い思いを如実に表わされた実感の御句と思います。原爆を直視出来るようになった事は俳句のお蔭と仰った作者の気持ちが伝わります。
★星空へ蝉声ほそく鳴き出せり/藤田裕子
梅雨が明け真夏の厳しい日々が続き、蝉の声も聞こえる様になって参りました。生まれたたばかりの蝉は、未だか弱い声で鳴き始めますが、それを「ほそく鳴きだせり」と詠われ、又美しい星空を仰ぎながら初蝉への慈しみの想いと嬉しさの入り混じった御句と思います。
★お茶漬けに梅干し一つ雲の峰/下地鉄
常夏と言われる沖縄の夏は想像出来ませんが、本土とはまた違った暑さでしょうか。もくもくと湧きあがって来る夏の雲。真夏は食欲も減退気味となります。酷暑に対処出来るのは日本人にとって、やはり「お茶漬けに梅干し」が一番ですね。それにしても美しい青い海に囲まれた沖縄も素敵でしょうね。
山鉾の先頭を行く長刀鉾も、今はひかれゆく日を待ち夕闇の中で出番を待っているのでしょう。
★花萱草三輪ほどの香りかな/渋谷洋介
草むらに咲いているのでしょうか、三輪の花萱草。色と香りで、存在を示しているようです。
★青時雨弾み吊り橋渡りきる/小川和子
青葉山の中の吊橋を渡っているときに雨に会い、怖々と橋を渡り切った安堵感でしょうか。
長刀鉾が暮れてきたばかりの夜空に向かって高く掲げられている様子は、祇園祭の高揚感とあいまって夏を強く感じさせてくれます。
★夏の海漁火きらら波に映え/ 河野啓一
漁火が波に反射してきらきらと光って見えている夏の海は、まだまだこれから漁が本番という感じでしょうか。そこに躍動感が感じられます。
★一試合済ませて来たと日焼けの子/ 祝恵子
きっと真っ黒に日に焼けた子どもが笑顔で報告しているのでしょう。夏の楽しい思い出を積み重ねている元気な子どもが見えてきます。