絵話塾だより

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2023年3月11日(土)文章たっぷりコース第4期・8回目の授業内容/高科正信先生

2023-03-12 20:13:50 | 文章たっぷりコース

この日は、これまでに学んだ「私とは誰か(何か)」「秘密」「家出」というテーマの続きです。

まず最初に、E.L.カニグズバーグの『クローディアの秘密』(岩波少年文庫)を紹介していただきました。
カニグズバーグはアメリカで1967年に同作で作家デビューし、1968年にはアメリカで最も優れた児童文学に与えられる「ニューベリー賞」を受賞しています。同時に候補となったのは、やはりカニグズバーグが書いた『魔女ジェニファとわたし』(岩波少年文庫)だったそうなので、どれだけすごい作家か分かるでしょう。

高科先生は若い頃、子どもの本の作家を目指すなら、カニグズバーグとフィリパ・ピアス(『トムは真夜中の庭で』等)、アーシュラ・K・ル=グイン(『ゲド戦記』シリーズ等)は必ず読みなさいと、先輩の作家の方々(今江祥智 氏や上野瞭 氏 )にアドバイスを受けたそうです。

『クローディアの秘密』 https://www.iwanami.co.jp/book/b269525.htm
『魔女ジェニファとわたし』 https://www.iwanami.co.jp/book/b269559.html

 

成績オール5の賢いクローディアには、家族の中での不公平な扱いや、毎日同じことを繰り返していることに飽き飽きしているなど、家出をする理由がちゃんとありました。
彼女は、お小遣いを使わずに貯めている(小金持ちの)弟と一緒に、きちんと計画を立ててニューヨークのメトロポリタン美術館に家出をします。

このお話の中で、クローディアの冒険=秘密を持つこと、であり、秘密の内容は人に知られたくないけれど、秘密を持っていることは知っていてほしい。秘密を持つことで、新しい自分を発見し、家に帰ったのです。

次は、べバリィ・クリアリーの『ラモーナとおかあさん』の紹介です。

 

ラモーナとおかあさん https://hon.gakken.jp/book/1020157600

7歳半のラモーナは、お姉さんのように大人の役に立つことも、お守りを任された小さい子どものように好き勝手することもできない微妙なお年頃。けれども7歳半は7歳半の自立心や自尊心があるのです。
気まずくなって家出の準備をしていたら、パパは「いつ家出するんだ?」と言い、ママはパッキングのアドバイスをする。そうすることで、亀裂が入ってしまった魂の修復を図ったのです。

クローディアもラモーナも、家出をし(ようとする)、秘密を持つことで、新しい自分を発見し、「ぼくがぼくであること」を実感するのです。

  

もう2作。鉛筆で描かれた絵が美しい『手のひらのねこ』(舟崎靖子 著・小泉孝司 絵/偕成社)は、1983年(『ラモーナ』と同年)に出版されました。
小学校に入ったばかりの女の子が、お母さんに内緒で想像上の猫を飼うお話です。

 

続いては、渋紙を切って型染めをした手の込んだ手法で描かれた しなのちづこ の『ぺろぺろ』(偕成社)。子どもがお菓子屋さんの当て物でズルをするという負の秘密を持ち、それに関する心の動きを描いたお話です。

深刻なものでなくても、私だけが知っている、誰も知らない、もしくは私と誰かだけが知っている、それがマイナスをもたらす場合もありますが、人間はそういう秘密を持つものなのです。

田島征三の『しばてん』(偕成社 https://www.kaiseisha.co.jp/books/9784032040500)のように、その秘密を時間が経って文章に起こす、といった作品もあります。

休憩を挟んで後半は、教科書『文章のみがき方』(辰濃和男 著/岩波新書)の「Ⅱ さあ、書こう」から、「8. わかりやすく書く」「9. 単純・簡潔に書く」「10. 具体性を大切にして書く」のところを、交代で音読していきました。

8. については、井上ひさしの言葉
「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでゆかいに」を頭に置いて書くのが良いでしょう、とのことでした。
例に上がっていた行政用の文章は4行で1文になっていて、とても分かりにくいので、できるだけ短く簡潔に書くのが良いでしょう。

9. では、「日本一短い手紙」を例に挙げて、読む人に一番伝えたいことを伝えるために、必要な言葉を取捨選択する修練を積みましょう、とのことでした。
的確に表すための語彙を増やすのにユニークな事典などを参考にするのも良いでしょう。
一文は短かめに(2〜3行程度)おさえ、主語と述語はできるだけ近くに置くよう心がけます。
ただ、標語やキャッチコピーは心に強く響くので、言葉を単純化する時はそれが及ぼす影響も吟味しなければなりません。

10. は、具体的に書くと、描かれたシーンが読み手が想像しやすいからです。
描写には情景描写と心情描写の2種類がありますが、具体的な固有名詞を使ったりすると、心に掻き立てられるものが違い(エモい?)、説得力が増します。
例えばターシャ・テューダーの書く文章は、身近でよく知っている景色や人物を描いているので、現実感が滲み出て、いきいきと絵が浮かぶのです。

今回の課題は「私の得意料理」について。
単なるレシピでも、他に伝えたいもの・ことがあればそれも、とにかく自分が「書きたいこと」を書いてください。
枚数・スタイルは自由ですが、とにかく読み手に「伝わるように」「分かりやすく」「具体的に」を心がけてください。

提出は、3月25日(土)です。よろしくお願いします。

 


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