今日の山内庸資先生の授業は、ゲストにフリーの編集者・竹内厚さんをお迎えして、
お二人の先生による対談形式のスペシャルな授業です。
竹内さんは、季刊誌や小冊子を作ったり、雑誌の記事執筆やウェブのお仕事なども手掛けておられます。
過去にはサタケシュンスケ先生にもインタビューをして、記事を書かれたことがあるそうです。
始めに、関西の出版社・編集者事情から、仕事の内容や流れなど、具体例を挙げながら分かりやすくお話していただきました。
(以下、敬称を省略させていただきます)
山内:今日はイラストをテーマにお話しを進めましょう。
竹内:編集の観点から見て、イラストは好きです。効かせることができるので、使いたいですね。
雑誌などは、写真+テキストの組み合わせが基本で、メリハリをつけるのに限界があります。
そこへ違ったニュアンスを入れたいとき、イラストを持ってくるのは効果的なんです。
山内:イラストレーターを探す方法は? どうやって見つけているんですか?
竹内:もともと、雑誌のコラムでアーティストの取材をしている関係もあって、ギャラリーや展覧会に行くことが多く
直に作品を見て、それをきっかけにお願いすることが多いですね。
山内:SNSではなく?
竹内:これは僕の場合ですが、SNSは切り取り方や伝え方で良いように見せられるので、少し信用性に欠けます。
取っ掛かりにはなりますが、決め手にすることはないです。他の方はどうかな…
デザイナーさんが検索することもあります。イラストレーター事情は、時代によりますね。
山内:僕がイラストレータになった10年前は、SNSを活用する人はまだ少なかったですね。
竹内:SNSはツールだから、合う・合わないがあるし、見つけてもらうことはあっても待っている状態だから…
自分からデザイナーとの接点を持つ、自分から行く方が良いですね。
作品を見せると言っても、電話してポートフォリオを持っていくだけじゃないですよ。自分に合うやり方は色々あります。
山内:その、自分が何に向いているのか、生徒の皆さんが一番悩むところです。
自分を客観的に見れる視点は、どうやって獲得するんでしょう?
竹内:うーん、難しいですね。
山内さんの、絵のテイストを決めているのはもちろん強みだけど、それが窮屈じゃないですか?
仕事以外で描く絵は違う、とか…?
山内:僕は、小さな積み重ねを楽しく感じる性格なんです。
仕事じゃない部分では、映画や音楽イベント、トークショーなど、絵以外のインプットをしています。
竹内:画家からイラストレーターになって、このスタイルにしようと決めたタイミングは、何かきっかけがあったんですか?
山内:好きな画家の展覧会をアメリカに見に行ったんです。
行ってみて一番良かったのは、街の公園の成り立ちや、公共の看板に作家のイラストがあるのを見て。
そこから、イラストレーターやデザインを考えるようになって、建築の講習会にも行きました。
日常風景の一部として、サインに使われてもおかしくないような絵を目指し、10年経って図書館のサインに使われるようになりました。
竹内:明快ですね!
目立ちたい人、ひっそりと愛されたい人、1点モノで売りたい人…自分がどういう風になりたいか、
客観視と言うよりは、自分の欲望からゴールを決めて逆算すると、どんな風にすれば良いか自ずと見えてくるのでしょうね。
それに、自分の見る目と人の見る目は違っているものですから、決められないのは当然かもしれません。
仕事で重なっていくものが求められるものなので、外側から分かっていくものであって、無理して自分で絞らなくて良いと思います。
編集の立場からすると、お互いに格闘して、世界を広げて行きたいところです。いろいろ見せてほしいですね。
山内:今のイラストレーター事情をどう感じますか?
竹内:圧倒的に作品が売れています! 1点モノの作品を売るイラストレーターも多いし、実際売れていますよ。
イラストレーターはクライアントワークメインだったのが、SNS効果も手伝って、売る機会も増えましたね。
個展の場合も、昔はポートフォリオ的な展覧会だったのが、今は作品を売る展覧会になっています。
イラストに限らず、今、アートフェアが盛り上がっていて、熱気がすごいんです。アートを買うのが日常化していますね。
作品の展開も、Tシャツを始めコラボの靴だったり、着物から車まで、媒体も多いです。
ご紹介したのはお話しの一部ですが、他にも貴重なお話をたっぷりと聞くことができました。
ここからは、生徒さんからの質問コーナーです。たくさんあったので、お二人で答えてくださったQ &Aの中から抜粋しています。
Q:編集とデザインの仕事の違いは?
A:重なっているところもありますが、デザイナーは、レイアウトして、整えていく仕事で、
編集者は構成を考えたり、ページ割をしたりして、整えたり、散らかしたりする仕事ですね。
Q:絵に色んな意見を言われたり、流行りの絵を見て引っ張られたり、情報過多でどう整理したらいいの?
A:部屋に閉じこもるより、外に出て見た方が良いです。
どう使うか、どう生きてくるかわからないけど、情報は浴びても大丈夫です。
自分の絵を見せて人の話を聞くことも大切です。仕事の場合、クライアントの言うことを聞きすぎるから迷うんです。
そのまま聞く必要はないですよ。言われたことが積み重なって、反映されて少しずつ変わっていきますから。
何に感化されるかのバリエーションが、作家らしさに繋がります。
最後に、皆さんの作品を見てもらいましょう。売り込みの練習も兼ねています。
お二人の先生の暖かい雰囲気のおかげで、生徒の皆さんもリラックスしてプレゼンできていました。
しなやかな竹内さんと、頼もしい山内先生にご意見もいただき、それぞれに得るものがあった今日の授業でした。