シャンテ サラのたわ言・戯れ言・ウンチクつれづれ記

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中途半端な SF 小説「リプレイ」

2012年07月27日 | アート/書籍/食事
写真は新潮文庫表紙。
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SF もので、時間旅行を扱った部類に属します。 昔から この手のものは数多いが、記憶を保ちながら主人公の意思とは無関係に何度も人生を遡るというアイデアは初めて読みました。

主人公が過去の時代に行って、知っている結果情報を元手に賭けに勝って大儲けする __ これは映画「バック・トゥー・ザフューチャー」(A) にもありました … もっとも Aで大儲けしたのは恋敵だったのですが。 Aのメインテーマは、主人公が元の時代に戻ろうともがく話しです。

映画「ターミネーター」(B) もタイムトラベルものですが、これは未来から送られてくる敵対するターミネーターたちによって起る現代社会での闘争がメインテーマです。 タイムトラベルはきっかけでしかありません。

AもBもそれが成功した理由でしょう。『リプレイ』は何度もよみがえりがあり、それが全体の興味を薄いものにしてしまっています。 1回のよみがえりだけで、その内容を掘り下げていった方が SF 小説として成功した内容になったのではないか、と推測します。

掘り下げた人物は、巡り合った同じ立場の女性だけで、それも何度ものよみがえりで何度も巡り合うものですから、どうしても印象が段々と希薄なものになってしまうのは避けられません。 アイデアはいいのですが、”繰り返しが多いのと掘り下げが足らない”、これがこの SF の泣き所です。

作者は自分の学生時代や若い頃を思い出しながら、あのアイデアも、このアイデアもと、多くのことや やり直しの人生をこの主人公に託したかったのかも知れません。
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『リプレイ』では、9回ものよみがえりが起こり、賭け/恋のやり直し/同じ運命の人探し/自分に起ったことの公開とそれに伴う当局の扱い などが描かれています。

魅力的な部分も多いのですが、これくらいの展開は誰にでも簡単に書けそうと思えるくらい安直な内容が多いのも確かです __ 哲学っぽい内容もあるのですが 分かり難い。 従って 読み飛ばしてしまう部分が結構な量になってしまうのは残念でした。

ただ 結末で、この “リプレイ現象” が遠く離れた全くの他人に起こり、「さあ 今度はうまくやるぞ」といわせているのが映画的で面白い。 そして 何度も “死んだ” ある時点を過ぎて 初めて未知の時間を生き続けている主人公が、元の妻と会話をして それからの人生をやり直そうと 希望が持てる話しになっています。
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最初によみがえった人生で25年前の学生時代に戻るのですが、60年代当時の米国の恋人同士は “あんなことを普通にやっていた” のだろうかと、不思議な気分になります。 それがどういうことかは、皆さん 読んでのお楽しみです。
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ウィキペディアから __『リプレイ』はケン・グリムウッドにより1987年にアメリカで出版された SF 小説。 記憶を持ったまま人生をやり直す男の話。 1988年度の世界幻想文学大賞を受賞 (※追加1へ)。
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※追加1_「記憶を持ったまま人生をやり直す」という発想は、ゲーテの『ファウスト』に影響を受けているものとおもわれる。 実際、「リプレイ」においても「グレッチェン」という名前の娘が登場するが、これはファウストの恋人の名前 (愛称がグレートヒェン) であり、作品内での人物の位置づけもある程度の類似性がある。 ただ、「若返りと人生のやり直し」という基本設定は、時間を扱う SF 作品ではごく一般的なものである。

あらすじ__経済的に成功していないラジオ局ディレクターのジェフ・ウィンストンは、43歳 (1988年) で心臓発作による突然死を迎える。 しかし、次に目を覚ますと18歳 (1963年) の時点に遡っており、新しく人生をやり直すことになる。

彼は「未来の記憶」を存分に利用し、やり直しの人生 (リプレイ) を謳歌するが、結局は同じ年の同じ時刻に死を迎え、人生のやり直しを強制再開させられる。 この繰り返すリプレイの中で自暴自棄と諦観に囚われるが、同じ立場の女性と巡り合い、改めて人生に向かい合うようになる。 しかし、やがてリプレイ期間が次第に短くなり、究極の絶対死 (リプレイの終了) が訪れることを知る。 果てしない人生を持ちながらも、やがては絶対死を迎えることを知った主人公らは…。

以上

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