
写真は、1741年製ガルネリを持つ堀米ゆず子さん。 中央は「税関は私の楽器を押収してしまった」と現地の報道?
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報道を読めば ドイツ関税当局と楽器所有者のいい分はそれぞれもっともなもの。 当局は骨董品と見なし、所有証明書を保持していなかったために法に則り 関税をかけたのでしょう。
本人もこれまで何回もトラブルなく通過したからと、証明書を持っていなかったのでしょう。 これを読むと、そのままでは平行線を引いたまま何も解決しないだろうと推測できます。
こういう時は法的手段に訴える前に、関係者が当局に働きかけて善処を促すという方法が取られます。 関係者とは、日本の現地大使館とか外交関係者とか、ドイツ側の権威ある役人筋 音楽関係者などでしょう。
また 本人が問題のない、素性に汚点がないことも条件のうちでしょう。 犯罪歴や脱税歴、問題ある発言癖など後ろ指をさされるような人物だと 関係者が動かないものです __「ああいう人だとなぁ …」といった類いのものです。 堀米ゆず子は身綺麗な立場だったと思います。 だから楽器が関係者の尽力などで無償で戻ってきたんでしょうね。
これを教訓に 高価な楽器を所持して国々をまたいで活躍する音楽関係者は、所有証明書を保持することを肝に命じることが必要と痛感したことでしょう。 確かに 関税当局の係員などが、数多い世界中の有名音楽関係者を全て知っているわけではありませんからね。 むしろ知らないと思って間違いないでしょう。
私は、ヴァイオリニスト 堀米ゆず子を知っていますが、普通の日本人は知らないでしょう。 ましてや一般のドイツ人が知っているとは思えません。 これからは楽器と共に所有証明書を肌身離さず持ち歩くことでしょう。 報道されたことで盗難の危険も増したのでは? ホールの楽屋だって危ないです。 先日も日本の、とあるホールでヴァイオリンが行方不明になったばかりですから。
今後の彼女の一層の活躍を期待したいものですね。
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
「皆さま - 堀米ゆず子さんのコメント」(9月25日 Artists Management Hirasa Office) _ ※追加0へ
「世界的奏者のヴァイオリン返還へ 独空港の税関で押収」(9月21日 朝日新聞/ベルリン) _ ※追加1へ
「体の一部もぎとられた= 1億円 ヴァイオリン押収された堀米さん」(8月24日 Yoree Koh/ウォール・ストリート・ジャーナル) _ ※追加2へ
「堀米ゆず子さん、空港で脱税容疑かけられヴァイオリン押収される」(8月22日 FNNニュース) _ ※追加3へ
ウィキペディアから__ 堀米 ゆず子 (1957~) は、ベルギーのヴァイオリニスト。 ブリュッセル王立音楽院客員教授。__※追加4へ
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
以上
※追加0_ このたびは私の楽器のことで大変お世話になりました。 心から感謝申し上げます。
8月16日の時点ではまるで何が起こったのか理解できないような放心状態でした。 しかしそれも翌日にはすぐ解決することだろうと思い、フランクフルトに泊まり、翌日友人に紹介された税理弁護士を尋ねました。
その時すでに証明書等は既に提出していたにもかかわらず、1900万 の保証金を払わなければ楽器は戻らないといわれました。 そんなバカな事はないだろうと手ぶらでブリュッセルに戻りました。 翌日には その弁護士からのメールで「書類を良く検討してみたところ状況は悪化。 罰金 1900万 も付く」といいます。 悪夢の連鎖のはじまりです。
それから4週間、つてを頼っては弁護士に話に行き、朝書類を渡します。 その時は誰もが楽観的に「大丈夫、仕事道具だから」といってくださいます。 1日かかって書類を検討し終わると決まって夕方には「かなり複雑でむずかしい」、次の日には「やはりドイツの人と同じ結論」になってしまいました。
1週間後にフランクフルトに出向き 最初と同じ税理弁護士にもう一人罰金担当の弁護士に会見。 そこで「楽器というのがいかに私たち音楽家にとって大事なものか」を説明すること2時間あまり … 「我々にとってはコンテナも楽器も同じこと」と、まっすぐこちらの目を見ていい切る弁護士達をなんとか説得しました。
しかしながら 音楽家の生活というのは普通外国に引っ越しをする人とは違います。 その引っ越し荷物 … なるものの申請も日本からコンテナが行った形跡もなく、なかなか向こうが希望する書類ができません。
弁護士からは相変わらず週末金曜日になると決まって (3800万 の用意はできたか? 銀行保証は?) と爆弾メールが送られてきました。
その間ベルリンの日本大使館、フランクフルト領事館、そしてブリュッセルの日本大使館と対欧州政府代表部の方々がみな「なんとかできないか」と動いてくださいました。 たくさんの友人たちが助けてくれました。 でもなんともなりません … 税法によれば彼らのいっていることは正しくなってしまうのです。
税関は世界中からの電話やメール、それに鳴りやまぬ電話についには (弁護士以外は誰とも合わない) という態度も見せ始めました。
一時はもう楽器はあきらめてドイツ側に渡そうとも思いました。 3800万 などという途方もない金額を払えるものでもなく、またそういう「縁」なのだと思いました。
理不尽に取られて 1銭 も払うな、という方々も大勢いらっしゃいました。 私もそう思ったのでなるべく期限を延ばして説得しようとしたのです。
しかし先週の金曜日、「もし月曜までにすべての書類を提出しなければ 月曜から税額に利子が発生する、月々 1% ということは各月 20万 近いお金を支払うわけです。 いつまで? 判定が決まるまで1年かかるかもしれない …。 その上もし楽器をあきらめた場合、競売にかける。 その査定は鑑定によって決める。 それより低く売れた場合、あるいは売れなかった場合は 今住んでいるベルギーのアパートも差し押さえる権利がある:」
といわれ、とにかく楽器を戻そうと腹を決めました。 山形銀行から三菱東京 UFG を通しデユッセルドルフ支店から出してもらう銀行保証に踏み切る覚悟を決め、資産状況も報告することにしたのです。
ブリュッセルはノーカーデーの秋晴れ、天高く青空の広がる外の景色とは裏腹に私の心はまさに(どん底)でした。 9月16日の事です。
この苦境を察した日本音楽材団の塩見和子さんが「ストラデイヴァリウスちょうど戻ってくるのがあるから貸してあげる」といってくださいました。 地獄に仏とはこの事です。 本当にありがたかったです。
昔のマネージャーが運よく元財務大臣の家に遊びに行っていたこと。 またアルゲリッヒさんの友達で私もロッケンハウスで顔見知り、元カーネギーホール総支配人のオーネゾルグさんが財務大臣に直接手紙を書いてくださいました。
日本では門多丈さまが change.org という社会運動の一環として署名を始めてくださいました。 5400名もの方々が賛同してくださいました。 中には書類不備とはけしからん、というお言葉もありました。 あまりに(散歩するように普通に)行き来していたのも悪かったと反省しました。
私は炊きつけた、といわれるばかりなので、メデイアに何をいうこともできず。 しかしながら 私個人の問題ではないと認識した世界中の方々の声が毎日税関に届きました。
最終的には 日本からの圧力とベルギー側からの書類をそろえたことで、ドイツ外務省が動き 財務省が決定。 税関は楽器を9月20日の午後無償で返還すると決定しました!
私は残念な事に この決定の2時間前にパリから日本に向けて飛行機に乗ってしまっていました。 先の見えない戦いより何より音楽に集中するため、塩見さんが貸してくださる楽器に一刻も早く慣れる必要があったからです。
成田で欧州代表部の丸山大使から「朗報です。 楽器が返ってきます」という留守電を聞くまで知らなかったのです! 信じられません! しかしそれも(どういう条件なのだろうか?)とまだはっきりしていませんでした。 楽器は戻す。 それから関税について検討する、ということだろうと思ったのです。
その足で日本音楽財団に向かい 1717年制作のストラデイヴァリウス、サセルノに出会いました。 実家にもどり、コンピューターを開けると弁護士からのメール、この金曜日は花ふぶきの爆弾 …
「無償でもどります」
やったあ!!!
まだ楽器は手元にはありません。 サセルノという繊細で甘い音のする素晴らしいストラデイバリウストので会いもまた偶然の宝物です。
全く知らなかった世界、全く知らなかった言葉を通じてだいぶ勉強しました。 外国で生きて行く上で(ただ言葉が話せる)ことと(理解する)ことの違い、その恐ろしさを身にしみました。
音楽家、特にヴァイオリニストというのが非常に特殊な職業である、ということも改めて認識しました。
いつも音楽がありました。 疲れ果ててピアノでブラームスのインテルメッツオを弾きました。 あまりの美しさに涙がこぼれました。
時を経てやっとモーツアルトの美しさに身をゆだねることができました。 ベートーベンのカルテットに励まされました。 このように音楽を感じたこともなかったかもしれません。
そして今また「ヴァイオリンを弾く」幸せをかみしめています。 皆さまにまたお会いできます事を、音楽を分かち合えます事を望んでやみません。 今回のお力添え、心から感謝いたします。
2012年9月25日 東京にて 堀米ゆず子
…………………………………………………
※追加1_ 独フランクフルト国際空港の税関で押収されていた、ベルギー在住の世界的ヴァイオリニスト 堀米ゆず子さんの愛器「ガルネリ」が返還されることがわかった。 税関から堀米さん本人に20日 連絡が入った。
堀米さんは先月16日 東京からベルギーに帰国する際に乗り換えたフランクフルトで密輸の疑いをかけられ、楽器を押収された。 時価1億円とされ、価値の 19% にあたる輸入税19万ユーロ (約 1900万円) の支払いを求められたが、無償で返還されることになった。
堀米さんは、正当な購入や所有を証明する書類、自らの財産目録などを提出し、弁護士を通じて交渉を重ねていた。「状況が悪化するばかりだったので、今はホッとしたというより信じられない気持ち」と堀米さん。 来週から、仙台での音楽祭や東京での NHK 交響楽団公演などに、予定通り出演する。
……………………………………………………※追加2_ ベルギー在住のヴァイオリニスト、堀米ゆず子さんにとって東京から欧州への移動は日常だったが、今回はマーラーの交響曲並みの劇的な旅になった。
堀米さんが保有する1741年製のガルネリ (時価約 1億円) がドイツの税関当局に押収された。伝えられるところによると 同当局は、返還に際して 19万ユーロ (1900万円) の輸入関税を求め、さらに罰金を科す可能性もあるとしている。
堀米さんのマネジメント事務所によると 当局は堀米さんが16日に経由地のフランクフルト空港を出発する際、正式な所有者であることを示す書類がないとの理由でヴァイオリンを押収した。
1週間後 堀米さんのヴァイオリンはまだドイツ当局が握っている。 税関当局のコメントは得られていない。
ヴァイオリンは1986年に日本で購入した。 18世紀のイタリアの巨匠ジュゼッペ・ガルネリ・デル・ジェスが製作したものだ。
東京出身の堀米さんは、80年にブリュッセルで行われたエリザベート王妃国際音楽コンクールでの優勝で注目を集めた。 コンサートヴァイオリニストとしての32年の経歴のなかで、ロンドン交響楽団、ニューヨーク・フィルハーモニックなどと共演している。
堀米さんによると 通常旅行する際は必要書類を携帯しているが、今回は家に置いてきてしまった。 翌日 急いでブリュッセルの家に書類を取りに帰り、ドイツの税関に提出したが、ヴァイオリンは戻ってきていない。 所属事務所によると 申告をすべきだったというのが税関側の考えだという。
堀米さんはその後 弁護士を探している。 生活に欠かせないものだということが証明できれば、税金や罰金を払わずに済むことも考えられる。
22日は、「体と魂の一部をもぎ取られたようで悲しい」との文書を発表した。 ドイツ政府にできるだけ早い返還を訴え、「全世界の器楽奏者が不安なく旅行できるよう対処をお願いしたい」としている。
……………………………………………………
※追加3_ 世界的なヴァイオリニスト・堀米ゆず子さんが、ドイツの空港で脱税の容疑をかけられ、音楽家の命ともいうべき、1億円 ともいわれるヴァイオリンを押収された。
堀米ゆず子さんは、「突然 1,900万円 っていう金額を出してきて、もう本当にびっくり」と話した。 問題は先週 日本から自宅のあるベルギーに戻る途中に立ち寄ったドイツの空港で起きた。
ドイツにいる堀米さん本人に、話を聞くことができた。
「(税関を) 何百回通ったかわかりませんが、今までこういうことは全くなかったですね。 (無申告の場合に通過する) 申告なしっていうところを通った。 それで呼び止められまして。 ヴァイオリンを押収するっていう権利は、全くびっくりしちゃって」と話した。
堀米さんによると これまで何度も同じヴァイオリンを持ったまま、この空港の税関を通っているが、止められたことはなかったという。
堀米さんは、「ヴァイオリンのパスポートっていうのがありまして。 20年来これを使っていて、このモノはコレで間違いないと証明するものなんですけど。 それをたまたま自宅に置き忘れてきたんですね。 商売道具ですから世界中の音楽家は、みんな手荷物として持ってますし、骨董品なんて考えたことがありません」と話した。
本来ならば仕事道具とみなされ、課税されない可能性もあるヴァイオリンが、骨董品と評価され、トラブルになったという。 地元紙によると 空港の税関当局は、堀米さんのヴァイオリンには 1億円 相当の価値があると指摘し、関税として日本円でおよそ 1,900万円。 さらに罰金を加え およそ 3,800万円 の支払いを求めているという。
かけがえのない存在である堀米さんのヴァイオリンは、世界3大名器の1つ「ガルネリ」。
都内にあるヴァイオリン専門店に、堀米さんが持っているものと同じタイプのヴァイオリンが置いてあるという。 ガルネリは、金庫の中で厳重に保管されていた。
「日本ヴァイオリン」の中澤宗幸さんは、「こちらが、ガルネリ・デル・ジェスという2大巨匠のヴァイオリンです」と話した。 堀米さんも持つ、今から 300年前にイタリアで作られたという名器ガルネリ。
中澤さんは、「ガルネリは、当時 200本くらい作られた。 (価格は現在) 10億円 といわれる」、「ヴァイオリニストは、ヴァイオリンが自分の分身と考えていますので、トイレに入ってても、一緒に持って行く...。 決して人に預けるということはしない。 たとえ1日でも2日でも、コンサートの前に離れたとすると、(演奏家にとって) 影響は大きいと思う」と話した。
堀米さんは、「楽器の状態がどうなっているか心配ですし、温度とか空調とか、とても敏感な古い楽器ですから」と話した。 ヴァイオリンの返還を求める堀米さんは、訴訟を含め、弁護士と相談しているという。
……………………………………………………※追加4_ 東京都生まれのヴァイオリン奏者である。 ベルギーの首都であるブリュッセルに在住。 使用楽器は、1741年クレモナにて製造された「ヨゼフ・グァルネリ・デル・ジェス」
5歳よりヴァイオリンを始める。 久保田良作、江藤俊哉に師事。 子供のための音楽教室、桐朋女子高等学校音楽科を経て、桐朋学園大学音楽学部を卒業。
1980年 日本人として初めてエリザベート王妃国際コンクールで優勝。 以後ベルギーを本拠として国際的な活動を行っている。 1981年 芸術選奨新人賞受賞。
以上
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報道を読めば ドイツ関税当局と楽器所有者のいい分はそれぞれもっともなもの。 当局は骨董品と見なし、所有証明書を保持していなかったために法に則り 関税をかけたのでしょう。
本人もこれまで何回もトラブルなく通過したからと、証明書を持っていなかったのでしょう。 これを読むと、そのままでは平行線を引いたまま何も解決しないだろうと推測できます。
こういう時は法的手段に訴える前に、関係者が当局に働きかけて善処を促すという方法が取られます。 関係者とは、日本の現地大使館とか外交関係者とか、ドイツ側の権威ある役人筋 音楽関係者などでしょう。
また 本人が問題のない、素性に汚点がないことも条件のうちでしょう。 犯罪歴や脱税歴、問題ある発言癖など後ろ指をさされるような人物だと 関係者が動かないものです __「ああいう人だとなぁ …」といった類いのものです。 堀米ゆず子は身綺麗な立場だったと思います。 だから楽器が関係者の尽力などで無償で戻ってきたんでしょうね。
これを教訓に 高価な楽器を所持して国々をまたいで活躍する音楽関係者は、所有証明書を保持することを肝に命じることが必要と痛感したことでしょう。 確かに 関税当局の係員などが、数多い世界中の有名音楽関係者を全て知っているわけではありませんからね。 むしろ知らないと思って間違いないでしょう。
私は、ヴァイオリニスト 堀米ゆず子を知っていますが、普通の日本人は知らないでしょう。 ましてや一般のドイツ人が知っているとは思えません。 これからは楽器と共に所有証明書を肌身離さず持ち歩くことでしょう。 報道されたことで盗難の危険も増したのでは? ホールの楽屋だって危ないです。 先日も日本の、とあるホールでヴァイオリンが行方不明になったばかりですから。
今後の彼女の一層の活躍を期待したいものですね。
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「皆さま - 堀米ゆず子さんのコメント」(9月25日 Artists Management Hirasa Office) _ ※追加0へ
「世界的奏者のヴァイオリン返還へ 独空港の税関で押収」(9月21日 朝日新聞/ベルリン) _ ※追加1へ
「体の一部もぎとられた= 1億円 ヴァイオリン押収された堀米さん」(8月24日 Yoree Koh/ウォール・ストリート・ジャーナル) _ ※追加2へ
「堀米ゆず子さん、空港で脱税容疑かけられヴァイオリン押収される」(8月22日 FNNニュース) _ ※追加3へ
ウィキペディアから__ 堀米 ゆず子 (1957~) は、ベルギーのヴァイオリニスト。 ブリュッセル王立音楽院客員教授。__※追加4へ
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以上
※追加0_ このたびは私の楽器のことで大変お世話になりました。 心から感謝申し上げます。
8月16日の時点ではまるで何が起こったのか理解できないような放心状態でした。 しかしそれも翌日にはすぐ解決することだろうと思い、フランクフルトに泊まり、翌日友人に紹介された税理弁護士を尋ねました。
その時すでに証明書等は既に提出していたにもかかわらず、1900万 の保証金を払わなければ楽器は戻らないといわれました。 そんなバカな事はないだろうと手ぶらでブリュッセルに戻りました。 翌日には その弁護士からのメールで「書類を良く検討してみたところ状況は悪化。 罰金 1900万 も付く」といいます。 悪夢の連鎖のはじまりです。
それから4週間、つてを頼っては弁護士に話に行き、朝書類を渡します。 その時は誰もが楽観的に「大丈夫、仕事道具だから」といってくださいます。 1日かかって書類を検討し終わると決まって夕方には「かなり複雑でむずかしい」、次の日には「やはりドイツの人と同じ結論」になってしまいました。
1週間後にフランクフルトに出向き 最初と同じ税理弁護士にもう一人罰金担当の弁護士に会見。 そこで「楽器というのがいかに私たち音楽家にとって大事なものか」を説明すること2時間あまり … 「我々にとってはコンテナも楽器も同じこと」と、まっすぐこちらの目を見ていい切る弁護士達をなんとか説得しました。
しかしながら 音楽家の生活というのは普通外国に引っ越しをする人とは違います。 その引っ越し荷物 … なるものの申請も日本からコンテナが行った形跡もなく、なかなか向こうが希望する書類ができません。
弁護士からは相変わらず週末金曜日になると決まって (3800万 の用意はできたか? 銀行保証は?) と爆弾メールが送られてきました。
その間ベルリンの日本大使館、フランクフルト領事館、そしてブリュッセルの日本大使館と対欧州政府代表部の方々がみな「なんとかできないか」と動いてくださいました。 たくさんの友人たちが助けてくれました。 でもなんともなりません … 税法によれば彼らのいっていることは正しくなってしまうのです。
税関は世界中からの電話やメール、それに鳴りやまぬ電話についには (弁護士以外は誰とも合わない) という態度も見せ始めました。
一時はもう楽器はあきらめてドイツ側に渡そうとも思いました。 3800万 などという途方もない金額を払えるものでもなく、またそういう「縁」なのだと思いました。
理不尽に取られて 1銭 も払うな、という方々も大勢いらっしゃいました。 私もそう思ったのでなるべく期限を延ばして説得しようとしたのです。
しかし先週の金曜日、「もし月曜までにすべての書類を提出しなければ 月曜から税額に利子が発生する、月々 1% ということは各月 20万 近いお金を支払うわけです。 いつまで? 判定が決まるまで1年かかるかもしれない …。 その上もし楽器をあきらめた場合、競売にかける。 その査定は鑑定によって決める。 それより低く売れた場合、あるいは売れなかった場合は 今住んでいるベルギーのアパートも差し押さえる権利がある:」
といわれ、とにかく楽器を戻そうと腹を決めました。 山形銀行から三菱東京 UFG を通しデユッセルドルフ支店から出してもらう銀行保証に踏み切る覚悟を決め、資産状況も報告することにしたのです。
ブリュッセルはノーカーデーの秋晴れ、天高く青空の広がる外の景色とは裏腹に私の心はまさに(どん底)でした。 9月16日の事です。
この苦境を察した日本音楽材団の塩見和子さんが「ストラデイヴァリウスちょうど戻ってくるのがあるから貸してあげる」といってくださいました。 地獄に仏とはこの事です。 本当にありがたかったです。
昔のマネージャーが運よく元財務大臣の家に遊びに行っていたこと。 またアルゲリッヒさんの友達で私もロッケンハウスで顔見知り、元カーネギーホール総支配人のオーネゾルグさんが財務大臣に直接手紙を書いてくださいました。
日本では門多丈さまが change.org という社会運動の一環として署名を始めてくださいました。 5400名もの方々が賛同してくださいました。 中には書類不備とはけしからん、というお言葉もありました。 あまりに(散歩するように普通に)行き来していたのも悪かったと反省しました。
私は炊きつけた、といわれるばかりなので、メデイアに何をいうこともできず。 しかしながら 私個人の問題ではないと認識した世界中の方々の声が毎日税関に届きました。
最終的には 日本からの圧力とベルギー側からの書類をそろえたことで、ドイツ外務省が動き 財務省が決定。 税関は楽器を9月20日の午後無償で返還すると決定しました!
私は残念な事に この決定の2時間前にパリから日本に向けて飛行機に乗ってしまっていました。 先の見えない戦いより何より音楽に集中するため、塩見さんが貸してくださる楽器に一刻も早く慣れる必要があったからです。
成田で欧州代表部の丸山大使から「朗報です。 楽器が返ってきます」という留守電を聞くまで知らなかったのです! 信じられません! しかしそれも(どういう条件なのだろうか?)とまだはっきりしていませんでした。 楽器は戻す。 それから関税について検討する、ということだろうと思ったのです。
その足で日本音楽財団に向かい 1717年制作のストラデイヴァリウス、サセルノに出会いました。 実家にもどり、コンピューターを開けると弁護士からのメール、この金曜日は花ふぶきの爆弾 …
「無償でもどります」
やったあ!!!
まだ楽器は手元にはありません。 サセルノという繊細で甘い音のする素晴らしいストラデイバリウストので会いもまた偶然の宝物です。
全く知らなかった世界、全く知らなかった言葉を通じてだいぶ勉強しました。 外国で生きて行く上で(ただ言葉が話せる)ことと(理解する)ことの違い、その恐ろしさを身にしみました。
音楽家、特にヴァイオリニストというのが非常に特殊な職業である、ということも改めて認識しました。
いつも音楽がありました。 疲れ果ててピアノでブラームスのインテルメッツオを弾きました。 あまりの美しさに涙がこぼれました。
時を経てやっとモーツアルトの美しさに身をゆだねることができました。 ベートーベンのカルテットに励まされました。 このように音楽を感じたこともなかったかもしれません。
そして今また「ヴァイオリンを弾く」幸せをかみしめています。 皆さまにまたお会いできます事を、音楽を分かち合えます事を望んでやみません。 今回のお力添え、心から感謝いたします。
2012年9月25日 東京にて 堀米ゆず子
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※追加1_ 独フランクフルト国際空港の税関で押収されていた、ベルギー在住の世界的ヴァイオリニスト 堀米ゆず子さんの愛器「ガルネリ」が返還されることがわかった。 税関から堀米さん本人に20日 連絡が入った。
堀米さんは先月16日 東京からベルギーに帰国する際に乗り換えたフランクフルトで密輸の疑いをかけられ、楽器を押収された。 時価1億円とされ、価値の 19% にあたる輸入税19万ユーロ (約 1900万円) の支払いを求められたが、無償で返還されることになった。
堀米さんは、正当な購入や所有を証明する書類、自らの財産目録などを提出し、弁護士を通じて交渉を重ねていた。「状況が悪化するばかりだったので、今はホッとしたというより信じられない気持ち」と堀米さん。 来週から、仙台での音楽祭や東京での NHK 交響楽団公演などに、予定通り出演する。
……………………………………………………※追加2_ ベルギー在住のヴァイオリニスト、堀米ゆず子さんにとって東京から欧州への移動は日常だったが、今回はマーラーの交響曲並みの劇的な旅になった。
堀米さんが保有する1741年製のガルネリ (時価約 1億円) がドイツの税関当局に押収された。伝えられるところによると 同当局は、返還に際して 19万ユーロ (1900万円) の輸入関税を求め、さらに罰金を科す可能性もあるとしている。
堀米さんのマネジメント事務所によると 当局は堀米さんが16日に経由地のフランクフルト空港を出発する際、正式な所有者であることを示す書類がないとの理由でヴァイオリンを押収した。
1週間後 堀米さんのヴァイオリンはまだドイツ当局が握っている。 税関当局のコメントは得られていない。
ヴァイオリンは1986年に日本で購入した。 18世紀のイタリアの巨匠ジュゼッペ・ガルネリ・デル・ジェスが製作したものだ。
東京出身の堀米さんは、80年にブリュッセルで行われたエリザベート王妃国際音楽コンクールでの優勝で注目を集めた。 コンサートヴァイオリニストとしての32年の経歴のなかで、ロンドン交響楽団、ニューヨーク・フィルハーモニックなどと共演している。
堀米さんによると 通常旅行する際は必要書類を携帯しているが、今回は家に置いてきてしまった。 翌日 急いでブリュッセルの家に書類を取りに帰り、ドイツの税関に提出したが、ヴァイオリンは戻ってきていない。 所属事務所によると 申告をすべきだったというのが税関側の考えだという。
堀米さんはその後 弁護士を探している。 生活に欠かせないものだということが証明できれば、税金や罰金を払わずに済むことも考えられる。
22日は、「体と魂の一部をもぎ取られたようで悲しい」との文書を発表した。 ドイツ政府にできるだけ早い返還を訴え、「全世界の器楽奏者が不安なく旅行できるよう対処をお願いしたい」としている。
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※追加3_ 世界的なヴァイオリニスト・堀米ゆず子さんが、ドイツの空港で脱税の容疑をかけられ、音楽家の命ともいうべき、1億円 ともいわれるヴァイオリンを押収された。
堀米ゆず子さんは、「突然 1,900万円 っていう金額を出してきて、もう本当にびっくり」と話した。 問題は先週 日本から自宅のあるベルギーに戻る途中に立ち寄ったドイツの空港で起きた。
ドイツにいる堀米さん本人に、話を聞くことができた。
「(税関を) 何百回通ったかわかりませんが、今までこういうことは全くなかったですね。 (無申告の場合に通過する) 申告なしっていうところを通った。 それで呼び止められまして。 ヴァイオリンを押収するっていう権利は、全くびっくりしちゃって」と話した。
堀米さんによると これまで何度も同じヴァイオリンを持ったまま、この空港の税関を通っているが、止められたことはなかったという。
堀米さんは、「ヴァイオリンのパスポートっていうのがありまして。 20年来これを使っていて、このモノはコレで間違いないと証明するものなんですけど。 それをたまたま自宅に置き忘れてきたんですね。 商売道具ですから世界中の音楽家は、みんな手荷物として持ってますし、骨董品なんて考えたことがありません」と話した。
本来ならば仕事道具とみなされ、課税されない可能性もあるヴァイオリンが、骨董品と評価され、トラブルになったという。 地元紙によると 空港の税関当局は、堀米さんのヴァイオリンには 1億円 相当の価値があると指摘し、関税として日本円でおよそ 1,900万円。 さらに罰金を加え およそ 3,800万円 の支払いを求めているという。
かけがえのない存在である堀米さんのヴァイオリンは、世界3大名器の1つ「ガルネリ」。
都内にあるヴァイオリン専門店に、堀米さんが持っているものと同じタイプのヴァイオリンが置いてあるという。 ガルネリは、金庫の中で厳重に保管されていた。
「日本ヴァイオリン」の中澤宗幸さんは、「こちらが、ガルネリ・デル・ジェスという2大巨匠のヴァイオリンです」と話した。 堀米さんも持つ、今から 300年前にイタリアで作られたという名器ガルネリ。
中澤さんは、「ガルネリは、当時 200本くらい作られた。 (価格は現在) 10億円 といわれる」、「ヴァイオリニストは、ヴァイオリンが自分の分身と考えていますので、トイレに入ってても、一緒に持って行く...。 決して人に預けるということはしない。 たとえ1日でも2日でも、コンサートの前に離れたとすると、(演奏家にとって) 影響は大きいと思う」と話した。
堀米さんは、「楽器の状態がどうなっているか心配ですし、温度とか空調とか、とても敏感な古い楽器ですから」と話した。 ヴァイオリンの返還を求める堀米さんは、訴訟を含め、弁護士と相談しているという。
……………………………………………………※追加4_ 東京都生まれのヴァイオリン奏者である。 ベルギーの首都であるブリュッセルに在住。 使用楽器は、1741年クレモナにて製造された「ヨゼフ・グァルネリ・デル・ジェス」
5歳よりヴァイオリンを始める。 久保田良作、江藤俊哉に師事。 子供のための音楽教室、桐朋女子高等学校音楽科を経て、桐朋学園大学音楽学部を卒業。
1980年 日本人として初めてエリザベート王妃国際コンクールで優勝。 以後ベルギーを本拠として国際的な活動を行っている。 1981年 芸術選奨新人賞受賞。
以上