シャンテ サラのたわ言・戯れ言・ウンチクつれづれ記

"独断と偏見" で世相・経済からコミックまで 読んで楽しい 面白い内容を目指します。 

十年前あった騒動 … 偽ベートーベン

2024年04月02日 | 音楽界よもやま話

左から チケットピア (http://md.pia.jp/pia/interview/sp/samuragochi.jsp) 。 歩く姿は夕刊フジ (https://www.zakzak.co.jp/entertainment/ent-news/news/20140213/enn1402131146014-n1.htm) から。 CD ジャケ。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

十年ひと昔といいますが、思い起こすと『偽ベートーベン騒ぎ』がありました。

 

なぜ ああいう騒動が発生したのか、考えを巡らすと 色んな背景や要因が想像できます __ 難聴という悲劇的状況下にありながら 多くの名曲作品を書き残したベートーヴェンに似通った作曲家が現れたこと、しかも長大な交響曲を作曲したこと、外見も長髪でベートーヴェン似で (?) 手にも障害があるらしく包帯を巻き、足も不自由らしく杖をついた いかにも “肉体の障害満載にもめげない” 素晴らしい作曲家 …

 

歌謡曲にもありますよね __ 私の人生 暗かった … という歌詞をも連想してしまいます。

 

大衆は、こうした “逆境にある人が障害を克服して偉大な芸術作品を創作した” というストーリーが大好きです。 そこに この偽ベートーベン氏が “スッポリはまった” というわけです。 本人も 意識的に “それらしい外見を装っていた” のでしょう。

★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

ウィキペディアから __ 佐村河内 守は、聴覚障害がありながら『鬼武者』のゲーム音楽や「交響曲第1番《HIROSHIMA》」などを作曲した音楽家として脚光を浴びたが、2014年 曲がゴーストライターの代作によるものと発覚。 ライターを務めた作曲家の新垣隆は、「佐村河内は18年間全ろうであると嘘をつき続けていた」と『週刊文春』に掲載された独占手記で主張した。

★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

でも やっぱり そんな偽装は長続きしないものです。 逆に “よくも18年も世間を欺いていた” と誉めてあげたくなります。

 

 

左から 週間文春、2014年2月20日号巻頭特集 (https://prane.naganoblog.jp/e1442785.html) 。 新潮45eBooklet『全聾の天才作曲家』 (https://www.amazon.co.jp/「全聾の天才作曲家」佐村河内守は本物か―新潮45eBooklet-野口-剛夫-ebook/dp/B00HD73JSI) 。 スマホアプリ「本当は耳が聞こえてるんじゃないの?」(https://www.j-cast.com/photo/2014/03/20199820.html?num=1) から。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

代表作とされる「交響曲第1番《HIROSHIMA》」ですが、野口剛夫氏 (音楽評論家) はこう書いています__「この交響曲[第1番]の最後で、(中略)マーラーの交響曲 (第3番の終楽章?) の焼き直しのような響きになってしまう …」(2月12日 JB Press ※1/『新潮45』2013年11月号)

 

一方 三枝成彰氏 (作曲家) が「この作品を聴いたのだが、大きな衝撃を受けた。 まずは曲の素晴らしさに驚き …」(※1) とあるのは、三枝氏がマーラーの曲を知らなかったと受けとめるべきでしょうか? いや 三枝氏ほどの作曲家が …

 

また 完成当時は「HIROSHIMA」の副題はなく、この副題は2011年の CD 発売の際につけられたのは、CD 発売元の意向が強かったと読めます。 つまり この題名にした方が売れると見込んだのでしょう。

 

あまり それを非難めいてはいえませんが __ シューベルトが亡くなった後 楽譜出版社が残った未発表曲を集めて『白鳥の歌』と発表したり、エルガーの『愛の挨拶 Liebesgruss』を出版社が『愛の挨拶 Salut d’amour』とフランス語にさせたりしています。

 

 

左から シューベルト、小沢・ボストン響『ツァラトゥストラかく語りき Also sprach Zarathustra』、マーラー、エルガー『愛の挨拶 Salut d’amour』表紙。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

評論家の中川右介氏は、「ドビュッシーだったり、ショスタコーヴィチだったり、マーラーもあるか――色々でしたね。 とても今の曲とは思えない」と『クラシックジャーナル』045号 (2011年12月) にて発言し、また『現代用語の基礎知識』2014年版には「佐村河内守」という項目で、「NHK が放送してからは、”時の人” となり、CD とコンサートでは、あざといまでの販売プロモーションが展開されている」とも書いています。

 

18万枚売れたそうですから、クラシック界では異例のヒット作です。

 

印税がどの位になったかは不明ですが、勝手に正価の 10% として @2,980 x 10% x 180,000 ≒ 5,400万 になりますが、中止になった交響曲第一番の全国ツアー主催者からは損害賠償の訴訟を起こされ、大阪地裁は佐村河内に 5,670万円を支払うように命じています。 また JASRAC は2017年に佐村河内に 784万円の楽曲利用料を支払っています。 一方 佐村河内からゴーストライターの新垣隆に18年間で 720万の報酬を払っています。

 

ちなみに 全国ツアーで指揮者を務めた金聖響が、主催者から借金をしたのを皮切りに、佐村河内と “HIROSHIMA” の名を利用して寸借詐欺まがいの行為を繰り返し、楽団員、関係者、ファン、有名人多数を含む 200人以上からの借金の総額は2億円 を超え、と週刊文春2014年12月18日号が報じています。

 

また NHK が放送した番組とは、NHK スペシャル『魂の旋律 ~音を失った作曲家~』(2013年3月) です。 外部の古賀淳也氏が NHK に持ち込んだ企画でした。

 

NHK が放送したことで世間にお墨付きを与えてしまい、人気が出たのです。 私は TV を見ないので知りませんでしたし、CD 広告を見ても胡散臭さを感じ、手を出しませんでした。 面白い既存の名曲がいっぱいあり、佐村河内の交響曲には興味なかったです。 今に至るも全く聴いていません。 それよりもマーラーの交響曲を聴いた方が面白いです。

………………………………………………

聴覚障害については、「身障者手帳2級取得者が言葉を聞き取れるほど回復したケースは、私の知っている限りでは、初めてです。 学会で発表しないといけないレベルの話です」(2014年2月12日 J-CAST ニュース) と専門の耳鼻科医もいってます。

 

また「3年前に聴力回復」と告白したそうですが、「今まで障がい者認定2級を受けて戻った例はないんです」と医師でタレントの西川史子が指摘していました (2014年2月16日 スポニチアネックス)。

 

最近も 「ヘッドホン・イヤホン難聴が問題になっている」という記事で、「一度消失した細胞は再生しません」(3月28日 FRIDAY DIGITAL) とあるのを読み、ああやっぱりそうなんだ、佐村河内は難聴・全聾から回復してきたというのはウソだったんだと確信した次第です。

 

一番しっくりくる説明は「せいぜい難聴程度の症状をオーバーにいって、そういう商売しているんでしょう … ま、芸能界にはあることだから」(伊東乾/ウィキペディア) ですね。

………………………………………………

CD が18万枚売れたということは、18万人が興味を持って購入したという意味になりますが、一体 どれだけの人が佐村河内の音楽の独自性を評価・理解していたのか疑問です。 多くは佐村河内とベートーヴェンの障害と重ね合わせて想像し、その音楽を聴いているだけだったのではないでしょうか。

 

R. シュトラウスの交響詩『ツァラトゥストラかく語りき Also sprach Zarathustra』も、LP・CD を買った多くの人は有名な出だしのところだけ聴いて、後は聴かない人が多いともいわれますから (?)、ある意味 それと似たようなものです。

 

今日は話しが雑駁なものになってしまいました。

 

今日はここまでです。


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。