シャンテ サラのたわ言・戯れ言・ウンチクつれづれ記

"独断と偏見" で世相・経済からコミックまで 読んで楽しい 面白い内容を目指します。 

金融危機のお講義2

2009年01月20日 | 金融危機いつまで
写真は、 D. スミックとその著書『世界は曲がっている』(The World is Curved 08年9月出版 英語版US$26.95/2,245円 日本版3,174円)。
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ようやく この金融危機全体を数字で捕えた分析が出てきましたね。 これまでのアナリストやエコノミストが出していた数字は、いわば象の足がこのくらいとか、鼻があのくらいとか、しっぽがそのくらいといった枝葉末節の数字ばかりで、一体全体 象の全てはどのくらいなのか皆目分かりませんでした。 
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「世界を語る~バブル崩壊 金融どう再生」(D. スミック/日経新聞 1月17日) _ サブプラは $1.5Trillion、クレジットカードが $2.5T、新興国向け与信は $4~5T、外国為替デリバティブと CDS が各 $50T 以上を合わせれば、バブルは全世界で $200T 以上になる。 10% 以上が吹き飛んだとしても $20T (2,000兆円) だ (※全文は追加1へ)。
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金融危機全体像をまずしっかり捕えて、その対策をどうすべきか論じないと、間違った政策になってしまい、更に追加 また追加の対策が求められる危険性があります。 今迄報道された数字は、近眼の人が虫眼鏡で象の足がこのくらいだから、こうすべきだといっていたようなものです。

世界の GDP (国内総生産) は、07年の数値が $54T ($1=100 として約 5,400兆円)。 それに対して、上記で積み上げた額だけでそれを遥かに越えています。 $200T なんて、それだけで "世界の GDP の4倍" ですよ。

これは、実体経済から遊離した化け物のようなものです。 それが現実だと信じていた人達は、やっぱりバブルの中で踊っていたんですね。 日本のバブルも1980年代後半に発生、91年にはピークを付け 弾けてしまいましたが、その後は「失われた10年」とかいって20年近く経つのに、未だに再浮上する兆しがなく、経済規模は 500兆円 近辺で その間ほぼフラットです。 宴の後始末は予想以上に時間がかかりますね。

日本の金融当局の対策が小出し小出しで長引かせたといわれましたが、米欧当局は日本のように悠長にはやらないでしょう。 ですから10年も20年もかからないと想像します。 逆にそうでないと、世界中が「失われた10年」になってしまう訳ですからね。

日本の医者 (金融当局) は飲み薬を少しずつ患者 (日本経済) に与えて、患者の回復をじっと待っているのに対し、米欧の医者はそんな "飲み薬少々" ではなく、抜本的な外科手術をするか、アシストする器具を患者に装着させて早くリハビリしろと迫るようなものでしょう __ 比喩が適当かどうか判断しかねますが。

サブプラが $1.5T (150兆円) なら、$1.5T を用意し、CDS が $50T (5,000兆円) なら、$50T を用意して手当すればいいだけのことです。 ただ、全額必要な筈はなく、それは米欧金融当局がレシピ (処方) を描くでしょう。
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全ての記事内容にコメントは出来ませんが、「シャーデンフロイデ」を「ざまあみろ」と訳しているのはうまい表現ですね。「Schadenfreude = malicious joy =悪意のある喜び」というドイツ語のいい方は、今 欧州大陸でこれ迄の英米流のヘッジファンドの金儲け・荒稼ぎを揶揄した表現として流布しているそうですよ。

けれど気になるのは、吹き飛んだのは 10% だけなんでしょうか? “10% 以上” と表現されていますが … どちらでも、世界の端っこにいる私にはあまり関係はないのですが __ いやいや やはり関係あります。 保有する金融資産がガタベリです。 なんとかしてくれ ~ 神様 ホトケ様 そうそう、オバマ様 ~

以上


※追加1 全文 _「世界を語る~バブル崩壊、金融どう再生」 (デビッド・スミック/日経新聞朝刊 1月17日) _ 世界は完全に変わった。 だが、どこが? 答えを探る参考になる本が全米でベストセラーになっている。 著者は金融コンサルタント、デビッド・スミック氏。 世界の市場関係者と当局者に張り巡らした情報網から得た回答はこうだ。

質問 トーマス・フリードマン著『フラット化する世界』を思わせる本を書きましたね。
 
「フリードマン氏の本は再読した。 彼の本は財とサービスのグローバル・サプライチェーン (世界的な供給網) 革命について記している。 続いて金融分野のグローバリゼーションが書かれるべきだと思った。 タイトルが浮かんだ。『世界は曲がっている』(The World is Curved)。 地平線のかなたの危険を見ることはできないからだ」
 
「サブプライムローン (信用力の低い個人向け住宅融資) が行き詰まり、金融市場が透明性を欠いていることがはっきりした。 証券化市場はレバレッジ (外部負債) を膨らませ過ぎた。 金融取引を支えるのは信頼。 今や市場参加者はその信頼を失っている」

質問 08年には米経済が急速に悪化しました。
 
「行き詰まったのはサブプライムローンばかりではない。 消費主導の米国モデルが壁に当たった。世界全体にとって米国はここ何十年か『最大の買い手』だった。 その米国が困難に陥り、輸出主導型の新興国も揺らいでいる」

質問 米国とは別に新興国は成長するというデカップリング (分離 KW 後述のキーワード解説を参照) は通用しない?
 
「貿易黒字を膨らませ、外貨準備を増やす。そのうえで国債投資などの形で米国に資金を還流し、米国の消費を支える。 中国に代表される、そんな新興国のモデルは通用しなくなった。 中国については、社会と政治へのバブル破裂の影響を懸念している」

質問 具体的には。
 
「中国は経済が落ち込むたびに、社会が大混乱に陥る。 1950年代の大躍進、60年代の文化大革命とその後の混乱があり、89年には天安門事件が起きた。 今また輸出主導の経済発展が行き詰まった。 中国積みの船は空っぽで、在庫の山が積み上がっている。 政府は景気刺激に必死だが、90年代の日本をみても功を奏すとは思えない」
 
「中国経済は年8~8.5% の成長を前提にしている。 しかし09年の成長率は五%程度に鈍化しかねない。 中国経済は弾みに支えられており、いざという際の社会的な安全装置を欠いている。 消費者が慎重になったらどうするか? まさか警察が各家庭を回り、『新しいトースターを買ったのか』とか『電子レンジはどこだ』と事情聴取するわけにはいかないだろう」

質問 欧州はどうでしょう。 ユーロはドルに代わる基軸通貨になり得ますか。
 
「ユーロは非常に過大評価されている。 欧州の金融機関の新興国向けの与信が、今年は世界経済の関心の的になる。 とりわけ中東欧諸国のデフォルト (債務不履行 KW) が時限爆弾だ。 中南米向けにはスペインの銀行の与信が積み上がっている」
 
「しかもいくつかの国では、銀行の与信が国内総生産 (GDP) を上回っている。 オーストリアの金融機関を例にとれば、中東欧など新興国向けの与信は 2,900億ドル (約26兆円)。 一方で GDP は 3,700億ドル だ。 隣のハンガリーの経済が行き詰まり、国際通貨基金 (IMF) から支援を受けたことを思い出してほしい。 欧州の銀行にとって新興国向けビジネスは、米金融機関のサブプライム問題より厳しいといえるだろう」

質問 欧州の当局は事態打開に動いているのでは。
 
「米国より対応が6カ月遅い。 世界経済が一段と弱まれば、欧州は本物の恐慌に向かうだろう。 ドイツは産油国向けの輸出が経済を支えてきたので、原油価格下落に伴う輸出減は大きな打撃になる」

「社会不安の火種もある。 ギリシャの暴動は一例にすぎず、他の欧州諸国に広がってもおかしくない。 フランスの若年層はイスラム教徒が多いが、彼らは将来に希望があるだろうか。サブプライム問題の発生以降、欧州はドイツ語で表現すれば『シャーデンフロイデ (ざまあみろ)』という感情を抱いたようだ。 でも、危機は世界共通だ」

質問 バブル崩壊の影響はそれほど深刻と。
 
「いくつものバブルが相次いで破裂しつつある。 あえていえば、サブプライムはたった 1.5兆ドル だ。 クレジットカードが 2.5兆ドル、新興国向け与信は 4兆~5兆ドル。 外国為替デリバティブ (金融派生商品) と、破綻リスクを保証するクレジット・デフォルト・スワップ (CDS) は各 50兆ドル 以上などを合わせればバブルは全世界で 200兆ドル 以上になる。 10% が吹き飛んだとしても 20兆ドル だ」

質問 各国は財政、金融政策を総動員しているのでは。
 
「お金は余っているが、尻込みし、米国の貯蓄型投資信託である MMF (マネー・マーケット・ファンド KW) などに滞留している。 最大の問題は信認の喪失だ。 ポールソン米財務長官の対応は火事が起きた後。 バックミラーをみながら運転しているようなものだ」

質問 今、何が必要ですか。
 
「第2次大戦後の国際通貨体制の枠組みを決めたブレトンウッズ会議 (KW) のような取り組みだ。 市場の信認回復には、流動性 (資金の量) やレバレッジに関する新たな原則が欠かせない。 証券化商品も中身の透明性を高める必要がある。 繰り返すが、キーワードは信認と透明性だ。 当局と民間から有識者が集まり、金融再生に知恵を絞るときだ」

質問 「市場は信頼できない。 政府が規制すべきだ」との議論も力を増しています。
 
「魔法のように複雑な金融取引を適切に理解する能力など、当局にはない。 当局が規制しようにもウォール街は先を行く。 一方で金融取引を規制でがんじがらめにすれば、経済の発展も阻害される。 だからこそ、官民がひざ詰めで話し合う必要がある」

質問 オバマ政権の経済閣僚に期待できますか。
 
「ガイトナー次期財務長官も、サマーズ次期国家経済会議 (NEC) 委員長もよく知っている。 サマーズ氏は気が利かないと評されることがあるが、実はこだわらない性格だ。 ある大雨の日、ずぶぬれのスーツで晩さん会に顔を出し『まるでプールに入っていたみたい』と言われたこともある。 オバマ次期大統領に、効果的なグローバル戦略を提示すると期待している」
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ぜひ読むべきだよ。 米 JP モルガン・チェースの元エコノミストが本書を送ってきてくれた。 著者のスミック氏にはプラザ合意後の通貨外交を取材したことがあったが、単なるエコノミストではない。
 
なぜ監督当局は市場の発展に追い付けなかったのか。 答えは率直だ。「米証券取引委員会 (SEC) の上級幹部クラスの年俸はざっと 20万ドル。 大手投資銀行の秘書並みだ。 投資銀行は若手幹部だって数百万ドルの年俸を得ていたんだよ」
 
米国はじめ各国は財政、金融政策を総動員するが、世界の金融市場が抱える問題はお金の不足ではない。 グローバルな信用拡大を後押ししてきた証券化というエンジンが機能不全に陥ったことで「ここしばらくは低成長が続く」とも強調した。 心配していたのは保護主義の台頭や金融への過剰規制の動きである。
 
ずぶぬれのスーツのエピソードを読んだサマーズ夫人が笑い転げ、「今度はぬれないように」とレインコートを買いに行った? こんなメールをサマーズ氏自身からもらったという。 オバマ次期米政権の経済閣僚ともホットラインで話す彼の分析から、しばらく目が離せない (米州総局編集委員 滝田洋一)
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米メリーランド州生まれ。 ウィートン・カレッジで経済学や哲学を学ぶ。 1980年代に各国の政治家を集めた議会通貨サミットを演出、議員補佐官なども務めた。 マニュエル・ジョンソン元米連邦準備理事会 (FRB) 副議長と、金融情報会社ジョンソン・スミック・インターナショナル (本社ワシントン) を営む。 季刊『インターナショナル・エコノミー』誌の発行人でもある。 共和、民主両党に太いパイプを持つ。 55歳。

キーワード
■デカップリング (分離)_先進国と新興国の景気は連動しないという主張。 ブラジル、ロシア、インド、中国のBRICs 諸国などが高い経済成長を続け、世界経済の中に占める新興国の割合が高まっているため、米国の景気が悪化しても世界経済への影響は小さく、新興国経済が世界を引っ張っていくとされていた。 サブプライム問題が表面化した07年後半に盛んに語られた。 米景気の悪化は世界経済全体の悪化につながることを「リカップリング」と呼ぶ。

■デフォルト (債務不履行)_借入金の返済ができなくなった状態。 公社債の利払いの遅れや元本が償還不能になることを指す。 債務不履行が発生した債権者が判断し、債務者などに通告することをデフォルト宣言という。 この場合、債権者は返済期限を待たずに融資分を回収することができる。

■MMF (マネー・マーケット・ファンド)_米国で広く普及している短期の貯蓄型投資信託。 日本の銀行定期預金のように安全な金融商品とみなされ、08年11月時点の残高は 3.7兆ドル 強。 昨年9月のリーマン・ブラザーズ破綻の影響で大手運用会社リザーブ・マネジメントの MMF が元本割れし、同月中に 1,450億ドル の資金が流出した。 米政府は MMF の元本保証に最大 500億ドル を投入することを発表した。

■ブレトンウッズ会議_第2次世界大戦後の世界経済復興のために1944年7月に米ニューハンプシャー州のブレトンウッズのマウント・ワシントン・ホテルで開かれた連合国による国際会議。 44カ国の代表が集まり、世界銀行や国際通貨基金 (IMF) の設立などが決まり、ドルを中心とした固定為替相場制度も固まった。 これらは「ブレトンウッズ体制」と呼ばれ、71年8月に米国がドルと金の交換停止を発表した「ニクソン・ショック」まで戦後経済を支えた。

もっと知りたい人は__
まずスミック氏の『The World is Curved』(the Penguin Group)。 日本の政策当局者にも同書は送付されている。 トーマス・フリードマン『フラット化する世界 (上下)』(日本経済新聞出版社) はグローバリゼーションを考える基本書である。 金融危機に関してはアラン・グリーンスパン『波乱の時代 特別版~サブプライム問題を語る』(同)、アラン・ブラインダー『中央銀行の「静かなる革命」』(同) も参考になる。

以上

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