カタカナ語が多用され、知らない人や老人を困らせる。政府も多く使うようだ。今日の朝日新聞にも取り上げあられた。
これは、昔から話題になる。21年前、東洋通信機にも籍があった。同社のネットに投稿した記事を引用する。
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カタカナ語は日本語?
鈴 木 誠 史
日本語には発音記号に近い「カタカナ、ひらがな」がある。新しい概念や言葉を外国から導入したときなどは、カナで表すことができる。これは、同様の漢字を使う中国語と比較すると、有利なような気がする。ただ、カタカナで表される新しい語が氾濫しているが、始めて聞くと何をいっているかわからないことが多い。
6月11日の新聞は、国語審議会が外来語の交通整理に乗り出すことになったと報じている。
その例として、日本語に言い換える語として、
アカウンタビリティ → 説明責任 インセンティブ → 誘因、刺激、報奨金 ユーザー → 利用者、使用者 コンセンサス → 合意、総意 |
などをあげている。ボランティア、リサイクル、ガイド、ストレスなどは定着しているからそのまま使うが、ハードウェア、バリアフリー、アイデンティティなどは分かりやすい注釈をつけるなおどの指針を示している。
官庁は特にカタカナ語が好きな気がする。官庁の会議で、やたらと「インフラストラクチュア」が出てきたときは驚いた。この言葉はよく使われるが、このごろは「インフラ」と略されることが多いから、ますますわからなくなる。
新しい概念、語で日本語がないときなど、カタカナでつかうと新味があり、高尚に聞こえる感があるからかも知れない。しかし、明治時代は日本語での表現が多かった。成書を見ればこれらは紹介されているが、「哲学」などは傑作だろう。今は死語になったが蒸気機関車や「陸蒸気(おかじょうき)」などもぴったりだろう。
中国はカナがないから、新しい事物も中国語で表現する。コンピュータが「電脳」、レーザーが「激光」、リモートセンシングが「遙感」であり、文字を見ただけで内容を伺わせる。我が国でももう少しこんな言葉があってもよい。
7月5日付の日経新聞の広告記事に中で、“・・ITSなどで、コンサルティング、システム構築から、運営、保守サービスなどをスルーしたフルサポートサービスを提供していきます。”があった。カタカナ文の典型とも言えよう。ただ、上記のように定着してしまったカタカナ語も多い。
豊田有恒の小説に、カタカナ語、外来語が法律で禁止された時の会話を題材にしたものがある。第2次大戦中のような状態である。ただ時代が異なるため、回りくどかったり、不思議な日本語を使ってくたびれ果てたあげく、法律に反してカタカナ、英語混じりに戻したら生き生きする話である。
また、 “たけし、たもり、さんま”がゴルフをするTVの番組がある。この中で、英語の使用禁止のホールが設定される。ところが、会話が弾まず、たいがい“さんま”が禁を犯してしゃべる羽目になる。
7月5日号の就職情報誌「B-ing」の広告を見て驚いた。「インターネット関連業界の採用情報」で40の社名があげてある。カタカナの行列である。カタカナだけの社名がが24社もある。しかも、「日本や東京」などを含むカタカナ会社が9社、アルファベットとカタカナの会社が4社、である。漢字の社名は凸版印刷、楽天、未来編集の3社(約7%)だけであった。こうなると、広告の効果は漢字の社名の方が大きい。
また、同じ広告で「コア人材を求める企業の就職情報」では、全67社の内、漢字だけの社名は「富士通、花王、、」など17社、漢字を含むのが6社、ひらがなの社名は「ぴあ」だけであった。カタカナの会社は 63 %である。
日常の会話でも、社名、商品名もカタカナ語でない日本語らしさを望みたい場合も多い。しかし、カタカナ語も日本語であって、そのままでは外国語ではないことも銘記して置く必要がある。米国で、2世風のタレントが日本語を紹介するTV番組を見た。そのとき、観客に貴方も日本語がわかると言って問いかけたのが、「ホテル」、「ラジオ」などの外来語であった。発音は全く違うが、だいたい見当がつき、”hotel”, “radio” とかえってきた。しかし、一般には日本風発音のカタカナ語、英語は通じるものではない。
カタカナを、目新しさや改革を誇示するために多用するのが、拒否反応よんだり、目立たなくなったりして逆効果になることも承知しておく必要がある。“過ぎたるは及ばざるがごとし”の言もある。国語審議会の動きも、もっともであると言えよう。
(5-July-2000)