*『原子力ムラの陰謀』著者:今西憲之
「第6章 動燃「工作」体質の起源」を複数回に分け紹介します。5回目の紹介
原子力ムラの暗部を刻銘に記録に遺し、その男は逝った-
1995年12月8日、「夢の原子炉」と言われた
高速増殖炉「もんじゅ」でナトリウム漏れ事故が発生。
事故をめぐる”隠蔽”が次々と発覚する中、
一人の「国策会社」幹部が突如、命を落とした。
死の謎を解く鍵は、遺された膨大な資料のみ。
そこには原子力ムラが行ってきた”裏工作”の歴史が、
あまりにも生々しく記録されていた。
(P3「まえがき」から)
「『もんじゅ事故』で謎の死を遂げた西村成生さんが残した内部資料があるらしい」
2012年冬、はじめにその話を聞いた時は、ここまで深くその資料と付き合うことになるとは想像もしていなかった。
「西村ファイル」と名づけた資料の山を読み進めるうち、取材班は何度も我が目を疑った。国の特殊法人であるはずの動力炉・核燃料開発事業団(動燃=当時) が地域住民や職員の思想・行動を徹底的に調べ上げ、「洗脳」「工作」といった言葉が頻繁に飛び交う。そして、あまりに不自然な西村氏の死-。「原子力ム ラ」の異常な体質が、次々と浮かび上がってきたのである。
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**『原子力ムラの陰謀』著書 「第6章 動燃「工作」体質の起源」の紹介
前回の話:動燃「工作」体質の起源 ※4回目の紹介
◎動燃内の反共秘密組織「良識派」とは
リストに何度も出てきた「良識派」とは、かつて動燃労組内で勢力を伸張しつつあった共産党に対抗して作られてた社内組織だ。ここまで「K機関」「志萌会」「カミュ」といった動燃内の秘密組織を見てきたが、「良識派」の誕生はそれよりもずっと古い。
82年4月5日、労務課の社内会議で検討資料として作成された<良識派のあり方について(案)>には、<期待すべき活動>として、組織の性格がはっきりと書かれている。
<現状の良識派の活動の主体は「敵の存在」を意識した上での、労組役員の組閣対策、役選対策、労組活動の支援、及び地元選挙対策となっている>
「敵」とは、ずばり共産党のことだろう。「良識派」の活動は、組合対策のほか、第3章で取り上げた選挙対策も含まれている。
組織の特徴としては<インフォーマル(非公式)組織とする>と明言。メンバー入りに要求される条件として<入社3~10年><健全な思想の道主><職場に於いて相応の実力と人望をもち、リーダーシップの発揮できる者><機密を守れる人物>とある。「西村ファイル」を分析するなかで何度も感じてきた「スパイ小説」の世界が、またここにもあった。「K機関」や「あかつき丸」をめぐって浮かび上がった「スパイ趣味」は、こうした体質に端を発していたのではないか。
別の資料では、茨城県の大洗工学センター、福井県の「ふげん」、岡山県の人形峠事業所、岐阜県の中部事業所の「良識派」の実態を調査していた。「良識派」は東海事業所だけでなく、動燃全体で組織されていたのである。
何でも記録する動燃のことだ、「西村ファイル」の中を探すと案の定、「良識派」メンバーの名簿もしっかりと作られていた。
※続き「第6章 動燃「工作」体質の起源 」の紹介は、11/26(水)22:00の投稿予定です。