*『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 から何度かに分けて紹介します。15回目の紹介
現役キャリア官僚のリアル告発ノベル!
「政財官の融合体・・・ 日本の裏支配者の正体を教えよう」
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(カスタマーレビュー)から
救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」(毎日新聞 10月22日)
読み終わって私は、このままでは本書の予言どおり原発事故は再び起こる可能性が高い、と思った。
そして、表紙とびらに引用されたカール・マルクスの次の言葉が本書の内容を言い尽くしていると気づく。
「歴史は繰りかえす、一度目は悲劇として、しかし二度目は喜劇として」。
この国の統治のあり方を根本的に変えなければ「二度目は喜劇」を防くことができない、と私は考える。
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【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(50) ※15回目の紹介
-『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 「終章 爆弾低気圧」 (50)を分けて紹介-
前回の話:【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(49) ※14回目の紹介
(50)
気が付いたら、政府・関東電力事故対策統合本部に、在日アメリカ大使館から、大使以下が通訳とともに駆けつけ座っていた。官房長官が許可したようだ。
米軍の助けが必要になるかもしれない。民自党のようにアメリカに対するアレルギーがない保守党政権では、むしろ日米同盟の象徴として、大使の常駐を許可したのである。
大使から、ホワイトハウスの国家安全保障会議の決定として、米エネルギー省国家核安全保障局の特殊専門部隊である被害管理対応チームの投入が、その場で伝えられた。
在日アメリカ人の保護という理由で、米軍の輸送機を新崎空港に派遣することについても要望してきた。さらに、石棺などの災害防止に関して、あらゆる日本国政府の要請を検討する用意があることも表明された。
翌1月2日の外国為替市場は、日本時間午前5時にニュージーランドからスタートした。事前に予想されたように、直ちに1ドル150円と大幅な円安となった。6時にはオーストラリア、10時には香港、シンガポールの為替市場が開いたが、さらに円は低下し、1ドル170円台の値を付けた。為替市場ではストップ安の仕組みがないことが恨めしいほどの下落ぶりである。
債権市場でも、日本国債の利回りが急上昇、ストップ安となった。日本国債の暴落がさらなる円安に拍車をかけた。ロンドンやニューヨークで市場が開けば、円の暴落そして日本国債のさらなる暴落が確実視された・・・。
原発災害で日本国政府の支出拡大が予想され、国債の償還可能性に疑問がついたこともある。しかしそれ以上に、フクシマのメルトダウンを経験した日本が、その教訓から学ばずに、またも原発のメルトダウンを引き起こしていることについて、マーケットから日本国政府、そして日本国そのものへの不信任が突きつけられたのだ。
1月2日、海外の市場が荒れ狂っている頃、北京では中国政府の報道官が日本の新崎原発の事故に深い憂慮を示すとともに、在日中国人保護および日本国民への人道支援のため、中国軍を派遣する用意があると発表した。
中国の艦隊は、尖閣沖に迫っていた。
韓国艦隊も対馬沖に現れていた。在日韓国人の保護という名目だった。
オホーツク海にはロシア艦隊が出現していた。
自衛隊の最高指揮官である総理も、在日米軍司令官も、ホワイトハウスも、日本国の周辺事態に対処する余裕は残されていなかった。
2日になっても、日本海側に発達した爆弾低気圧と、それのもたらす寒波と大雪は止むことがなかった。外部電源車の海からの輸送を自衛隊に要請したが、荒れ狂う日本海が頑強にそれを拒んでいた。
政府・関東電力事故対策統合本部に昨日から徹夜で詰めている総理にとって、それは天罰のようにも思えた。そしてそれは、フクシマの警告に耳を貸さなかった日本人に対する天罰でもあった。
天からの罰である以上、それはただ終わるまで甘んじて受け容れるしかなかった。
総理の関心は、この天罰がどこまで続くのか、ということだった。
続き>>【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(50) ※16回目の紹介