*『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 から何度かに分けて紹介します。14回目の紹介
現役キャリア官僚のリアル告発ノベル!
「政財官の融合体・・・ 日本の裏支配者の正体を教えよう」
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(カスタマーレビュー)から
救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」(毎日新聞 10月22日)
読み終わって私は、このままでは本書の予言どおり原発事故は再び起こる可能性が高い、と思った。
そして、表紙とびらに引用されたカール・マルクスの次の言葉が本書の内容を言い尽くしていると気づく。
「歴史は繰りかえす、一度目は悲劇として、しかし二度目は喜劇として」。
この国の統治のあり方を根本的に変えなければ「二度目は喜劇」を防くことができない、と私は考える。
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【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(49) ※14回目の紹介
-『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 「終章 爆弾低気圧」 (49)を分けて紹介-
前回の話:【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(49) ※13回目の紹介
「燃料プールはどうなってんの?」
今度は社長が尋ねる。さすがに額に青筋が浮かび上がっている。
運転停止中とはいえ、1号から5号機の使用済み燃料は、プールに浸けられている。すなわちフクシマの4号機と同じ状態だ。そして、通電して冷却していないと、プールの水が沸騰・蒸発して、使用済み燃料がむき出しになってしまう。
フクシマの事故後、有識者が、再稼動まではいったん乾式のキャスクに入れて貯蔵するほうが安全だと指摘していたが、放置していたことについて社長は臍を噛んだ。
「ちょっと、そこまで手が回っていません。ただ、沸騰までは時間があると思います」
所長代理はどこまでも、あっけらかんとしている。
「計器だけに頼らずさ、ちゃんと目視しろよ。外の雪をバケツかなんかで運んで、プールに突っ込んでみろよ」
とは原子力事業本部長だ。原発の燃料棒が放つエネルギーの強大さを、この男が知らずして、日本人の誰が知っているというのか・・・。
「おい、車庫棟の入り口のシャッターを抉じ開けるよう、警察に頼めないのか?」
こう官房長官が叫ぶ。
現場では、テロ対策のために、サブマシンガンやライフル銃のほか、防弾仕様の警備車を備えた警察官が24時間態勢で警備している。つまり、銃器を用いてシャッターを撃ち抜け、という趣旨だった。
「わかりましたっ、頼んでみます!」
所長代理は今、敬礼までしている。やけくそなのだ。
実際には、朝、非常用電源車が格納されている高台の車庫棟の様子を確認しに行った先遣隊が、まだ戻っていない。道は雪に覆われ、氷結し、容易には近づけないことは明らかだった。
しかし、素人の提案とはいえ、官房長官の提案である。絶対に効果がないとその場で断言できること以外は断ることも難しく、その分余計にマンパワーを取られる結果となっていった。
ベントにより六号機の格納容器の爆発の危険は去ったが、外部電源がなく、注水はできていないので、溶け出した核燃料が格納容器を破壊し、建屋の基礎部分に進行して、メルトスルーを起こしていることは明らかだった。
7号機は、既に午後3時の時点で、格納容器の最高使用圧力を超えていた。あとは、どこまで格納容器が持ちこたえられるか、という物理学の限界の問題だった。最新型の欧州加圧型原子炉のように格納容器それ自体が大型化されていれば、まだまだ時間は稼げただろう。後悔しても後の祭りだった。
午後7時には、7号機の格納容器の圧力が最高使用圧力の3倍の値を示した。
格納容器には、ハッチやフランジがあり、マイクロメートル単位で完全に密閉されているわけではない。7号機は、最高使用圧力の3倍の圧を示すと、どこからか圧が抜け、圧の値が下がり、また数時間後には最高使用圧力の3倍を示すというジェットコースターのような上下動を示した。
圧が上下するということは、フィルターで放射性物質が低減されることなく、格納容器の隙間から、事実上、建屋のなかにベントが行われているということであり、格納容器内で発生している水蒸気、水素、一酸化炭素が、建屋内に充満していることが見込まれた。
-7号機の建屋は、フクシマのように、水素爆発が起こる可能性があった。建屋内の放射線量も著しい上昇を示し、作業員が留まることは困難になった。
格納容器が破壊されれば、大量の放射性物質が放出され、作業員が退避せざるを得なくなる。そうなると、次は6号機に連鎖し、最終的には1号機から5号機の核燃料プールで保存されている核燃料まで剥き出しになり、大気中に放射性物質が放出されることになる。
こうした事態が起これば、二位伊崎県から半径250キロ以上の範囲で、日本国民が住めなくなることが予測された。そうなると、決死隊が、砂と水の混合物で遮蔽しなければならなくなる。いわゆる石棺である・・・。
続き>>【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(50) ※15回目の紹介