**『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 から何度かに分けて紹介します。8回目の紹介
現役キャリア官僚のリアル告発ノベル!
「政財官の融合体・・・ 日本の裏支配者の正体を教えよう」
-----------------------
(カスタマーレビュー)から
救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」(毎日新聞 10月22日)
読み終わって私は、このままでは本書の予言どおり原発事故は再び起こる可能性が高い、と思った。
そして、表紙とびらに引用されたカール・マルクスの次の言葉が本書の内容を言い尽くしていると気づく。
「歴史は繰りかえす、一度目は悲劇として、しかし二度目は喜劇として」。
この国の統治のあり方を根本的に変えなければ「二度目は喜劇」を防くことができない、と私は考える。
---------------------------
【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(48) ※8回目の紹介
-『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 「終章 爆弾低気圧」 (48)を分けて紹介-
前回の話:【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(47) ※7回目の紹介
(48)
午前10時過ぎには、関東電力の本社のオペレーション・ルームに、総理、官房長官、官房副長官が乗り込んでいた。オペレーション・ルームは新崎原発の中央制御室と、画像と音声でつながっている。
資源エネルギー庁の日村直史次長もその場に馳せ参じていた。民自党時代の原発事故のオペレーションについては、組織対応ができていない、と野党時代に噛み付いていた保守党であったが、いざ事故が起こると、関東電力や原子力規制委員会に対応を任せ、官邸で報告を待つ勇気はとてもなかった。自然と、誰からともなく、政府・関東電力事故対策統合本部と呼ばれる組織が誕生した。
「なんで除雪車こないの?」
と画面に向かって関東電力の社長が尋ねる。
「わかりません!」
顔面を紅潮させて、所長代理が答える。原子力発電所の周辺の道路の状況がどうなっているのかなど、発電所では知る由もなかった。
「ディーゼル・エンジン温めなきゃいかん」
と、本社の原子力事業本部長が叫ぶ。
「とにかくすごい寒さで、エンジンがキンキンに冷えているんですよ」
と所長代理。
「お湯でもなんでもかけられないの。人肌で抱きついて暖めてみるとかさ、小便かけるとかさ」
本部長が、まるで、落語のような問いを投げかける。
「替えのディーゼル・エンジン運ばせよう」と社長、しかし「どこにあるんですかっ?」と周辺から声が上がる・・・。
非常用電源者は車庫棟にあるが、据え置き型のディーゼル・エンジンの替えが世の中のどこにあるのかなど、誰も想像がつかない。
「海と空から自衛隊にディーゼル・エンジンを温めるバーナーか何かを運ばせよう」
と官房長官が叫ぶ。
それを受けて、随行した官房長官秘書官が防衛省に連絡を取る。しかし、ディーゼル・エンジンを暖めるバーナーがどこにあるかなどということも誰も想像できない・・・。
「むしろ、別の原発の電源車を、ヘリで運んだらどうですか?」
こう、官房副長官が官房長官に言った。
すぐに官房長官秘書官が、再度、防衛省に連絡を取った。フクシマの事故の際に、自衛隊や米軍による電源車の空輸を検討するも、重量オーバーにより空輸を断念した経緯があることを、その場にいた誰も覚えてはいなかった。
そして、新たな規制基準で、外部電源車を各原発に配備させることとした以上、ヘリで空輸するための対策を別途講じているはずがない。それが日本の官僚組織であり、地域独占を許された電力会社の常識であった。
つまり、電源車を減りで運ぶことができないという状況は、フクシマ以前と何も変わりなかったのである。
・・・政権幹部や電力幹部から、いろいろな指示が飛ぶ。が、その指示を実行に移す実働部隊は、正月に押っ取り刀で駆けつけた電力会社の社員たちであった。
経験したことのない仕事ばかりである。マニュアル通りの仕事しかしたことがない電力会社の社員たちには、指示を実現するための連絡先もわからず、やったこともないオペレーションに戸惑うばかりだった。
続き>>【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(48) ※9回目の紹介