**『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 から何度かに分けて紹介します。5回目の紹介
現役キャリア官僚のリアル告発ノベル!
「政財官の融合体・・・ 日本の裏支配者の正体を教えよう」
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(カスタマーレビュー)から
救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」(毎日新聞 10月22日)
読み終わって私は、このままでは本書の予言どおり原発事故は再び起こる可能性が高い、と思った。
そして、表紙とびらに引用されたカール・マルクスの次の言葉が本書の内容を言い尽くしていると気づく。
「歴史は繰りかえす、一度目は悲劇として、しかし二度目は喜劇として」。
この国の統治のあり方を根本的に変えなければ「二度目は喜劇」を防くことができない、と私は考える。
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【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(47) ※5回目の紹介
-『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 「終章 爆弾低気圧」 (47)を分けて紹介-
前回の話:【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(47) ※4回目の紹介
新崎原発の施設課長が除雪業者への連絡に腐心していた午前9時、官房長官の緊急記者会見が再度行われた。NHKは正月番組を中断して放送する。
官房長官から、
「先ほど午前8時、原子力災害対策特別措置法に基づく原子力災害対策本部を、官邸に設置いたしました。原子炉の冷却につきましては、バッテリー電源から非常用電源への切り替えに向けた作業を行っているところであります」
との説明がなされた。
「現在原子炉の冷却は継続できているのでしょうか?」
本社から出張ってきたのかもしれない。普段は見かけない年嵩の記者が質問を投げかける。
「現時点では、一時的に、冷却が中断しております・・・」
官房長官の苦渋に満ちた表情を前に、正月返上で官邸に詰めていた記者たちのあいだに、どよめきが起こる。記者会見室から外に走り出す者や、その場で携帯をかけ始める者も現れた。
以下、緊迫したやりとりが続く。
「冷却はいつ再開できる見込みでしょうか?」
「それについての情報は、まだありません」
「非常用ディーゼル発電機は、なぜ作動していないのでしょうか?」
「現在調査中であります」
「発電所内にある外部電源車は使えないのでしょうか?」
「現在鋭意作業中であります」
・・・・民放の正月番組にも、「新崎原発、冷却一時中断 冷却再開の見通し不明」とのテロップが一斉に流れた。生放送のお笑い番組は中断され、官邸の緊急記者会見に切り替わった。
「メルトダウンが始まっているということでよろしいでしょうか?」
「いつ格納容器の外に放射能漏れが起きると予想されますか?」
「SPEEDIでの予想はいつ公表されますか?」
「原子力緊急事態宣言ということで理解してよろしいでしょうか?」
矢継ぎ早に記者が質問を浴びせかける・・・。
寝ぼけ眼で新春のテレビを見ていた新崎県民のあいだに、官邸の記者会見のテレビ中継によって、衝撃が走った。
原子炉の冷却ができていないということは、核燃料棒のメルトダウンが進行していることを意味する-そのことは、フクシマの三度のメルトダウンを経験した日本国民なら、多かれ少なかれ、誰でも理解できることであった。新崎原発周辺の住民はなおさらである。
「おい、餅焼いている場合じゃねぇぞ。メルトダウンだ!」
とテレビを見ていた夫が叫ぶ。新崎原発のおかげで、それ以前の世代のような冬の出稼ぎから解放されて、正月を自宅で迎えられるようにはなっていた。
続き>>【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(47) ※6回目の紹介