**『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 から何度かに分けて紹介します。9回目の紹介
現役キャリア官僚のリアル告発ノベル!
「政財官の融合体・・・ 日本の裏支配者の正体を教えよう」
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(カスタマーレビュー)から
救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」(毎日新聞 10月22日)
読み終わって私は、このままでは本書の予言どおり原発事故は再び起こる可能性が高い、と思った。
そして、表紙とびらに引用されたカール・マルクスの次の言葉が本書の内容を言い尽くしていると気づく。
「歴史は繰りかえす、一度目は悲劇として、しかし二度目は喜劇として」。
この国の統治のあり方を根本的に変えなければ「二度目は喜劇」を防くことができない、と私は考える。
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【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(48) ※9回目の紹介
-『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 「終章 爆弾低気圧」 (48)を分けて紹介-
前回の話:【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(48) ※8回目の紹介
官邸では、午前8時の段階で、原子力災害対策本部が、原子力災害対策特別措置法に基づき、設置されていた。しかし、本部長である総理自らが早々に関東電力に乗り込んだこともあり、参集した各省庁の官僚たちは脱力感に覆われていた。
五月雨式に政府・関東電力事故対策統合本部から指令が来るが、明らかに、事故対策統合本部と原子力災害対策本部との連携はとれていなかった。
フクシマの事故の教訓に、電力会社と官邸との意識疎通をよくすることがあった。原子炉のことは電力会社のオペレーション・ルームでないと一次情報は取れない。その一方で、官邸からでなければ、自衛隊、米軍、消防、警察、民間輸送会社等への支持や要請は円滑に進まない。
フクシマの教訓を踏まえ、事故後すぐに政権幹部が関東電力に乗り込んだのは、原子炉の状況を把握するという面ではよかった。が、原子力発電所の周辺オペレーションが手薄となってしまった。
周辺オペレーションがうまくいかないと、原子炉の対策も結局はうまくいかない・・・。
正月というタイミングも悪かった。平常時であれば、省庁から民間企業に電話を一本かければ、国家の非常時ということで、ありとあらゆる物資や解決策のアイデアを提供してくれる。しかし、正月だと、民間企業への連絡は円滑にはとれない。片っ端から代表電話に電話をかけても、正月休み明けの営業時間の案内を、留守電話サービスの音声が繰り返すだけだった。
平常時には、ディーゼル・エンジンを温めるバーナーがどこにあるか、などということは数時間で回答が来る。しかし、それが正月だと無理だ。事故対策統合本部や官邸の災害対策本部に詰めている電力会社社員や役員の個人的なつながりで、正月休みの民間企業の人に連絡を入れるしかなかった。
原子力災害という国家の非常事態であっても、普通の民間企業では、電力会社や省庁のように「緊急参集」という動員をかけて、平日と同様、元日から組織を機能させるということは難しい。そういう仕組みも用意されていなかった。
新崎原発の周辺道路は封鎖されたままだった。
メルトダウンに怯えた住民は、そのうち、渋滞に嵌った車を捨てて歩き始めた。
放置された車が、県道、国道、高速道路に溢れた。
- 新崎原発は、完全に陸の孤島となった。
続き>>【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(49) ※10回目の紹介