日米同盟の静かなる危機 ケント カルダー著の「日米同盟の静かなる危機」を読んだのは2009年1月だった。読後感とまでは言えぬが、確か表紙にあったのが以下である。
<「同盟の自己資本」という当事国の経済的結びつきを重視するという新たな考え方。
同盟の寿命は長くはない。軍事を基本としても政治・経済・文化面でのお互いの接点を常につなぎ続ける努力が必要でありその政策ネットワーク作りが両国に求められる。
とりわけ冷戦構造の終了後アジアにおける中国韓国の台頭による彼らの活動が日本を越え米国、とりわけワシントンでのネットワーク作りが成果を上げ、日本を凌駕している。>
この本が出版されたのが2008年であるから今の民主党の迷走外交など起こる前であるが、海の向こうでは日本の行方を懸念しながら見守るアメリカ人は、既に日米関係が日本独自の努力不足に加え他国の一層の努力が相対的に日本の地位を落してきているという認識をしているのであろう。確かに同盟国とはいえ日米は対等では有るはずが無く、寧ろ日本が大国アメリカの注意をこちらに向ける努力をして始めて成り立つものゆえ、日本側にその努力が欠ければ、著者のいう「同盟の自己資本」は減耗してゆくしかない。
例えが悪いがトヨタをアメリカに準えれば、日本はトヨタ出入りの中小企業であり生殺与奪を握られていると言えよう。この現実に不満が有るのならそれなりの事を日本は自ら単独で行うべきであるが、それは国家にとっての途轍もない負担であり、言うことはできても実行はまず不可能と考えるべきである。すなわち、人口も、領土も、そして何よりも天然資源などはまるでなく、およそ自立、独立するには相応しい立場にはないことは容易に理解できよう。あとは、日本にとっての相応しいパートナーを維持すると言うことでしかない。
かつてはそれが日英同盟であり、1922年にアメリカの手(シナもその陰にいた)によりこの同盟を解消されてからは日本は世界で孤立し、間違った相手を選択し敗戦へと向かってしまった。
今、日米同盟を離反させようとしているのはシナ並びに国内に存在する中国に媚する勢力である。私は戦争に負けた相手をパートナーとしなければならない不幸を嘆こうとも日本にとっての選択肢はアメリカしかない。同盟を解消すれば無同盟という空白期が発生するが真の防衛力を持たない日本にとってはこの期間こそが安全保障上大変に危険である。周りから、むしられ放題になりかねず、属国・植民地よりも始末が悪かろう。
そんな中でも、鳩山政権は無謀にも前後の見境もなく、と言うべきと考えるが日米対等に挑戦し始めた。それが日本国がアメリカと約束した普天間基地移転問題であるが、日本はこれまで外国と一度約束したことを覆すと言うことはなく、国際信義上も極めて恥ずかしいことだと言わざるを得ない。
そして、その迷走ぶりが引き起こしている日米関係の悪化は、以下の二つに象徴される。
・小沢幹事長の米国訪問は米国の示唆により持ち上がったように聞いたが、いざとなると、ホワイトハウスは幹事長の訪問を言を左右にして受け入れなかった。与党の幹事長がこのような扱いを受けると言うことは前代未聞である。そして、現在では、鳩山首相の訪問との絡みが出てきたこともあろうが、幹事長の訪問自体が中止になってしまった。
・鳩山首相は核サミットに参加するべく来週早々に訪米するが、日本側の普天間を中心とした首脳会談の要請に対して、アメリカはこれを受け得入れず、会食時にオバマ大統領の隣に座ると言うことでお茶を濁されている。これは事実上の会談回避である。
米国側にすれば当り前であろう、実行可能な提案が日本側からは提出されていないのであるから、そんな決裂しかねない危ない話を事前交渉のないままに首脳同士で直に行えるはずがない。
日米関係に置いて日本が此処まで冷遇されるのは珍しいが、それも鳩山・小沢がまいた種だから、当人たちが被害をこうむるのは仕方がない。しかし、これで失われる国益は計りしれない。それこそ、同盟の自己資本の大きな損耗である。民主党政権はどう国民に対して責任を取るのか、首相一人が責任を取って辞めて済む話ではなかろう。衆議院を解散し、国民に信を問うべきだ。何故なら、どのような結果が出るにしろ、国内で合意できる案はなくなって来ている。唯一残されたのは、普天間継続使用だけであろう。だとすれば、これは国家運営上の大失態である。
と、書いていたら鳩山がタイムのインタービューに答えて、「米国の言いなりになりたくない」といったようだ。又、言わなくてもいいことをこの微妙な時期に、軽い発言でこなしてくれたわけだが、まるでチャベスやアフマディネジャドのようだ。アメリカが鳩山を彼ら並みに扱うのではと言うのが気がかりだ。それとも米国は言われ慣れているし、韓国ノムヒョンの例もあるから驚かないのか?
民主党が崩壊するのは一向に構わぬが日米関係のこれ以上の亀裂は何とか避けたいものだし、出来れば早期修復に取り掛かれればと考えるのは私一人ではあるまい。