海外の目も厳しく
2014年9月4日
安倍改造内閣が発足しました。高い支持率、高い株価という順風を背に受け、勢いづいていた安倍政権はいよいよ難所にさしかかりましたね。不協和音の封じ込め、人気を落とさない工夫に、かなり気を使ったところをみると、首相自身が政権の先行きに危機感を持っているのでしょう。
今朝の読売新聞を見て、「おやっ」と思いました。3面に「幻の小渕幹事長」という見出しの大きな記事が載っていました。「小渕幹事長で調整」の特報が1面トップを飾り、結局、誤報に終わったことへの釈明、経過説明です。「史上最年少、女性初の幹事長」は消えたにせよ、政権は人気取りを狙ったのでしょう。そのページの下に、その他を含め、「複数の記事が読者に誤った印象を与えた。多角的な取材と慎重な判断により、今後とも正確な報道に努める」との、お詫び記事が載っていました。珍しいことです。恐らく、朝日新聞の従軍慰安婦問題の検証報道、原発事故めぐる吉田所長の証言記事で、読売は朝日を厳しく断罪しているので、間違いがあれば、早めに謝っておこうということなのでしょう。
本当に小渕幹事長説があったのか、観測気球程度だったのか、分りません。あったとしても、読売が書いたときは、すでに消えていた説だったのでしょう。気になったのは、実現していれば「サプライズ人事」となったという表現です。自民党幹事長も軽く見られたものですね。実現していれば、「サプライズ」どころか、失笑、失望をかった人事になったでしょう。石波氏の首をわざわざ切って、その後任が政治家として経験不足、未熟な人物だったら、どう思われたか明らかでしょう。結局、こんどは一転、総裁経験者の谷垣氏が格下の幹事長についたのですからね。かなめの幹事長人事がこう迷走しては、首相周辺の浅慮ぶりのほうが「サプライズ」です。
迷走するだろうと思うのは、消費増税問題もそうです。増税派の谷垣幹事長の誕生で、読売は「消費税10%、体制固め。谷垣幹事長が必要性を強調」と書きました。そうなのでしょうか。朝日は「景気に陰り、難しい判断。首相のブレーンの内閣官房参与がリスクを冒すな、といっている」です。恐らくこのほうが正しいと思います。首相は会見で「デフレから脱却して、経済を成長させる必要がある。このことは、麻生財務相、谷垣氏も同じ考えだ」といい、さらにわざわざ「先般、谷垣氏とこの問題についても話をした」と、付け加えました。予定通り12月までに「来年10月、10%へ」を決める腹を固めているなら、こんなことをいいますかね。
その谷垣氏は「税率10%は法律で決まっている。そのときの経済状況は考慮する」といいました。消費税法では「10%」も景気条項(経済状況の好転)もともに明記されています。そう素直に言えばいいのです。「法律通り対処していく」といえば騒ぎになりません。なぜ「経済状況の考慮」を切り離したような発言をしたのでしょうか。軸足が後者にかかっているように(増税延期)に思わせたかったのかもしれません。
政権が難所にさしかかっているというのは、次の期限を明示しないで、消費増税を延期できないからです。2年先なのか、3年先なのですか。3年先だと、日本は財政再建を二の次にしているといわれます。先送りしたら、その間の社会保障財源はどうするのでしょうか、国債ですか、社会保障費の思い切った削減ですか。どういう選択をしても、難問が次々にでてきます。7-9月のGDP統計が発表される11月中旬以降には決断しなければ、なりません。そのあたりからいろいろな観測気球が政権の周辺からあがります。増税をしたらした、増税を先送りしたらしたで、その事後措置をめぐり、議論は沸騰し、迷走するのでしょう。
株価はどうでしょうか。改造内閣の発足を受けて、株価は上がりました。政権発足時には1万円だった株価は1万5700円になりました。年金資金の株式運用が増える、円安が進むという期待からでしょうか。もっとも株価はこのところ、アベノミクス効果が出尽くしたとみられ、横ばい状態です。日銀の異次元緩和も、次のサプライズはもうない、そろそろ出口(緩和の停止、縮小)を考えておけ、という状況になってきました。円安による輸出拡大も、製造業の海外移転で効果がなくなってきています。「アベノミクスの陰り」がささやかれているのです。
株価は経済、景気の指標です。アベノミクスは経済、景気を先によくするより、その結果である指標を先行させてよくすることに没頭してきたようです。異次元緩和は、実体経済がよくなる前にマネー市場に資金がどっと流入し、株などの資産価格をあげました。そうなるだろうと読んだ海外の投資家もいち早く、日本投資に走りました。株価は内閣支持率に連動するそうです。政権も日銀総裁も胸をはりました。これから先はどうでしょうか。もうあまり期待できないとなると、追加緩和の要求がでてきます。これ以上、緩和をやると、その時だけは効果があっても、緩和から撤退する際、株価、資産価格の下落を招き、デフレに陥りかねません。
最近の海外論調をみると、「アベノミクスに懐疑の目」、「的を外すアベノミクス」(いずれも日経の転載)といった感じです。日本をはやすだけはやして、転機がくると、手のひらを返したように、突き放すのですね。そこで異次元緩和の追加ですか。弊害は大きい、それでもやむにやまれず、目先の株価維持策をとるべきか、政権は迷走するでしょう。
先進国共通の問題、とくに日欧における成長率の低下が顕著です。それは世界経済の構造変化から起きており、金融緩和という点滴では、一過性の効果しかない、というのが経済論調の大勢を占めるようになっているような気がします。
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